2025
11.04

李相日監督『国宝』ヒットの要因は「不安に覆われた世の中で、美しいものを求めていたのかも」 黒澤明賞に吉沢亮さんもサプライズ登場

国際ニュースまとめ

左からクロエ・ジャオ監督 吉沢亮さん 李相日監督左からクロエ・ジャオ監督 吉沢亮さん 李相日監督

映画『国宝』の李相日監督と、『ハムネット(原題)』が2026年春に日本公開を迎えるクロエ・ジャオ監督が、第38回東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞。

11月3日に行われた授賞式では『国宝』で主演を務めた吉沢亮さんがサプライズ登場し、両監督に花束を贈呈する一幕もあった。

総合芸術の在り方を教えてくれた黒澤明監督作品

故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、映画人に贈られる黒澤明賞。今年は、李相日監督とクロエ・ジャオ監督が受賞に輝いた。

李監督は、歌舞伎を題材にした2025年の最新作『国宝』が、興行収入160億円を超え、実写映画歴代1位も間近という記録的なヒットとなっている。第98回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にも決定し、さらに注目が集まっている。

ジャオ監督は、3作目の長編映画『ノマドランド』が、アジア人女性として初めてのアカデミー賞監督賞を受賞。李監督同様、今日の映画界をけん引する存在だ。

クロエ・ジャオ監督と李相日監督クロエ・ジャオ監督と李相日監督

両監督は授賞式の前に記者会見に臨んだ。

李監督は黒澤明さんからの影響について「ユーモアや物語の展開、構成、絵作りにいたるまで、総合芸術とはこういうものを指すのかと体感させてくれた、海外の作品にも全く見劣りしない存在。自分が受けた影響は一言では表せません」と語った。

不安に覆われた世の中で、人々が美しいものを求めていたのかもしれない

『国宝』は、カンヌ国際映画祭をはじめとした海外映画祭で上映されたのち、日本国内での大ヒットを経て、今後さらなるワールドワイドな展開が待ち構えている。日本の伝統文化である歌舞伎という題材でありながらも、李監督は、予想以上に海外にも伝わっている手ごたえを感じていると話した。

李相日監督李相日監督

「カンヌなど数カ所で僕も一緒に鑑賞してみたところ、当初懸念を抱いていたよりは、かなりの部分で伝わっている実感がありました。芸術にかける生き方や、より根源的な覚悟や美しさが届いているという感触があります。クロエさんの新作『ハムネット』にも舞台のシーンが映っていますが、舞台や芸術が人に与える影響や、芸術を抱え込む人間の闇も含めて、海外の方にも伝わってほしいです」(李監督)

『国宝』がメガヒットとなった要因について尋ねられると「僕が知りたいくらい」と笑ったが、ジャオ監督が自身の創作に関して「2時間だけでも、映画を見る人が何かを感じてもらえる安全な場を提供したい」と話したことを受け、「不安定さや不安に覆われた世の中で、多くの人が美しいものを求めていたのかもしれない」と回答。

「ただ、目に美しいということだけではなく、内面的な配慮も含めて、血のにじむ努力や汗を流して、何かに突き進む人間そのものの美しさのようなものを、どこかで欲していたのではないか」と分析した。

撮りたいテーマに出会うために、どう遠回りするか

また、ジャオ監督の大ファンでもあるという李監督は、ジャオ監督が過去作で、プロの俳優ではない、ロケ地に住む人々を起用してきたことに対し「どうしたらあんな大胆なキャスティングができるのか訊きたい」と質問。

これに対し、ジャオ監督は、自身のメンターでもある映画監督のヴェルナー・ヘルツォークから「プロの俳優とアマチュアの俳優という区分けがあるわけではなく、その瞬間に真に生きられるかどうかだけが問題だ」と教えられたと語る。

クロエ・ジャオ監督クロエ・ジャオ監督

「私が重視しているのは、俳優としての技巧や、キャラクターをどう理解しているかではなくて、その瞬間の存在。オーディションをするより、YouTubeなどでその人が話している様子や人間性から判断してキャスティングしているんです」と意外な制作事情を明かした。

次回作について、現在関心のあるテーマやトピックを問われると、李監督は「テーマは探しても見つからないし、ぼんやり待っていても降りてこないので、その瞬間に出会うためにどう遠回りするかしかないと思っています」と持論を述べた。
さらに「『国宝』がこんなにヒットすると思っていなかったので、まだ次回作への完全なスタートが切れていません」と苦笑いしながらも「遠回りをしながら、ようやくどんな感情を描くべきなのか、どんな人間を捕まえるべきなのか、シルエットが少しずつ見えてきている段階。まだ具体的なストーリーにはたどり着いていないけど」と近況に触れた。

ジャオ監督は「私が物語を選ぶというよりは、物語が私を選んでくれる」とコメント。今後は舞台の製作にも関わりたい意向を示したほか、時代設定が未来の作品にも関心があると伝えた。

李監督の映画に対する覚悟や執念を現場で感じた

この後、受賞式では『国宝』で喜久雄役を演じた吉沢亮さんがサプライズで登場し、李監督とジャオ監督に花束を贈呈した。

吉沢亮さん吉沢亮さん

吉沢さんは「『国宝』で初めてご一緒して、映画に対する覚悟、執念のようなものを現場で感じていました。僕自身よりも、僕のことを信じてくれていると思う日々で、その思いに応えるのが非常に苦しくもあり、それ以上に幸せを感じる3カ月の撮影でした」と李監督に謝辞を送った。

また「クロエ・ジャオ監督の『ザ・ライダー』という作品を鑑賞したとき、アメリカ西部の荒々しくも美しい荒野に生きる人のあまりにもリアルな息遣い、生き様に衝撃を受けました」と明かすと、ジャオ監督は一瞬驚いた後に満面の笑みを浮かべた。

吉沢さんも「最新作の『ハムネット』も、今後生み出す物語も、映画に関わる一人の人間として、心から楽しみにしています」と熱烈なファンぶりを強調していた。

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Source: HuffPost