2025
10.16

「警察官から人種差別」と訴えた母子の裁判、被告の東京都に66万円の支払いを命じる判決 東京高裁

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東京高裁東京高裁

警視庁の警察官に、同意なしに氏名や住所といった個人情報をトラブルの相手に提供され、帰宅したいと伝えたにもかかわらず警察署で長時間にわたって事情聴取されるなど違法な対応を受けたなどとして、南アジア出身の女性と子どもが東京都に損害賠償を求めた裁判の控訴審で、東京高裁(萩本修裁判長)は10月16日、被告の都に対し、原告側に計66万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

どんな裁判なのか

訴状などによると、2021年6月、都内の公園にいた女性と当時3歳の子どもが、見知らぬ男性から「自分の子が(女性の子どもに)蹴られた」などと抗議を受け、トラブルになった。女性側は、子ども同士に身体的な接触はなかったと主張している。男性が110番通報し、警視庁の警察官数人が現場に駆けつけた。

原告側は、男性から「外人は帰れ」「外人は生きている価値がない」などと詰め寄られた際、警察官たちが男性の差別発言を制止しなかったと主張。公園を通りかかり、女性と警察官の間で英語通訳をした目撃者の男性は、一審の証人尋問で「警察官が女性の娘さんに対し、『どうせお前が蹴ったんだろう』『本当に日本語しゃべれないのか』などと言っていました」と証言した

女性と子どもは警察官から公園で聞き取りを受けた後、警察署への同行を求められ、署で再び聴取された。公園と警察署内での事情聴取は計約4時間半に及んだ。原告側はこの間、帰宅したいと要望しても聞き入れられなかったと主張している。

さらに署内では、母子が一時引き離され、子どもひとりに複数の警察官が事情聴取したと訴えている。

加えて原告側は、同意なしに写真を撮影されたり、拒否したにも関わらず女性の氏名や住所、電話番号をトラブル相手の男性に警察官が提供したりしたとも主張した。

子どもは聴取中に大泣きし、その日以降不眠の症状を訴え、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疑いとの診断を受けた。

また、トラブル相手の男性によって女性の氏名などがTwitter(現在のX)に投稿され、「殺人未遂犯」という記載とともに子どもの写真も投稿された。

原告側は、警察官たちの一連の行為が人種差別を支持・助長するものであり、「異常なまでの圧迫的な扱いはレイシャルプロファイリング(※)に当たる」と指摘。「公権力の行使に際して人種差別を行ってはならないという職務上の注意義務に違反し、違法だ」として、損害賠償を求めていた。

(※)レイシャルプロファイリング・・・警察などの法執行機関が、「人種」や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすること

一審の本人尋問後、メディアの取材に応じる原告女性(2023年12月撮影)。控訴審の意見陳述では、裁判官に対して「日本で、私たち全ての外国人が、安心して生活できるようにしていただきたいのです」と訴えていた。一審の本人尋問後、メディアの取材に応じる原告女性(2023年12月撮影)。控訴審の意見陳述では、裁判官に対して「日本で、私たち全ての外国人が、安心して生活できるようにしていただきたいのです」と訴えていた。

東京都「同意あった」。請求棄却を求める

こうした原告側の訴えに対し、被告の東京都は、警察官の一連の対応に違法行為は認められないとして請求棄却を求めていた。

公園で対応した警察官は、一審の証人尋問で「日本語しゃべれねえのか」という発言はしていないと否認した一方、「日本語話せる?とは確認した」と述べた

また、約4時間半にわたって女性と子どもに事情聴取したことは認めるものの、同意を得た上で継続していたと反論した。

さらに、民事裁判を理由に女性の連絡先を求められ、トラブル相手の男性に提供したことは認めるものの「強要した事実はない」と主張。写真撮影についても女性の承諾があったと反論していた。

一審判決、原告の訴えを退ける

一審の東京地裁(片野正樹裁判長)は2024年の判決で、英語通訳をした通行人の男性の供述には一定の信用性があるとしたものの、警察官が子どもに対して「いきなり『おまえ』などと呼びつけたり、高圧的な態度で事情聴取に及んだというのは、いささか唐突」で「不自然」だとした。

また、帰宅を求めたにもかかわらず警察署で事情聴取を受けたという原告の主張については、「原告らが明確に拒絶しているにもかかわらず、強制的に警察署に連行したとまでは認められない」と判断した。

写真撮影については「原告が積極的に異議を留めていたことを認めるに足りる的確な証拠はない」、個人情報の提供に関しても「原告が承諾していなかったとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない」として、いずれも原告の主張を退けた。

その上で、「人種あるいは民族的出自に関する差別意識ないし偏見を背景として、原告らを特段の根拠もなく被疑者として扱ったり、犯罪者として刑事手続を進めようとするなどの不当な意図ないし動機を含むものであったものとまでは認め難い」と判断し、国家賠償法上の違法があったとは認められないと結論づけていた。

(取材・執筆=國﨑万智)

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Source: HuffPost