2025
09.09

多様化する街、高田馬場。外国人住民と「共に生きる」街、どうつくる? Adobeがここでワークショップを開いた理由

国際ニュースまとめ

日本語学校が立ち並び、 日本で最も多く留学生を受け入れている早稲田大学が隣接する「高田馬場」(東京都新宿区)は今、多様性に溢れる街へと進化していっている。

外国人店主が営む飲食店も多く、JRの駅北側にはミャンマー料理店が密集していることから、「リトル・ヤンゴン」と呼ばれ、さらには中国人店主の店も急増。それに伴い、周辺に住む外国人も増えている。

ニューカマーの外国人住民と、どのようにして「共に暮らす」街を作っていくことができるのか。

言葉の壁を乗り越えて、街づくりをしていくための取り組みが8月、Adobeの主催で行われた。

テーマは、飲食店などの商店のチラシやメニューなどの「多言語化」。商店主や早稲田大学生らが集まり、多言語のチラシ作りに取り組んだ。

Adobe主催のイベントに集った、商店街の商店主や大学生らAdobe主催のイベントに集った、商店街の商店主や大学生ら

言葉の壁→「多言語表記」で店側から歩み寄り

新宿区によると、高田馬場がある同区では、約130の国・地域出身の4万人を超える外国人が暮らしており、その割合は区民の約13%に相当するという。

高田馬場・早稲田エリアには7つの商店街があり、それらの商店街に並ぶ飲食店などは、地域の日本人と外国人住民が交わる「接点」でもある。

そんな中、早稲田商店会の副会長・佐藤靖子さんは「飲食店の商店主が日本語以外で対応するのは難しい時もあり『言葉の壁』があった」と話す。

商店街などが主催する地域のお祭りやイベントに、留学生や外国人住民に参加してほしくても、「情報発信の方法が分からない」という声もあったという。

外国人住民の中には、長期で居住している人もいれば、早稲田大学には短期留学生もいる。さらには近年は、外国人観光客も増えている。

そのように日本語レベルもバラバラな中、商店のメニューなどでの多言語対応の必要性は感じていたという。

そこで今回、「クリエイティブの力で多文化共生を実現するまちへ」をテーマにワークショップを開いたのがAdobeだ。

同社は、デザインツールAdobeを通して地域活性化に役立つノウハウを伝える「まちの広作室」を世界各地で開催している。日本国内での開催は、今回が9回目となった。

ワークショップで参加者にデザインについて伝える、イラストレーターでキャラクターデザイナーの北沢直樹さんワークショップで参加者にデザインについて伝える、イラストレーターでキャラクターデザイナーの北沢直樹さん

生成AIを搭載したAdobe Expressには多言語翻訳機能があり、作成したデザインの文章をワンクリックで翻訳することができる。翻訳できる言語は46言語にものぼる。

今回はデザインの基礎を学んだ上で、チラシなどを多言語で作る方法を習った。

「なかなか多言語化まで手が回らない」という個人経営の多忙な商店も少なくない中、Adobeを使って導入コストを抑えながら、その一歩を踏み出すサポートをした形だ。

ワークショップには、商店街関係者と早稲田大学生の24人が参加した。

練習用にまず作成したイベント情報の多言語版。中国語や韓国語にワンクリックで翻訳。練習用にまず作成したイベント情報の多言語版。中国語や韓国語にワンクリックで翻訳。

ワークショップに参加した早瀬豊さんは、高田馬場駅近くでバー「COLIAS」を営む。今回は、お店のイベントのフライヤーを英語で作成した。「最近は観光客など、外国人の来店客も増えているため、英語のフライヤー作成に挑戦した」と話す。

他にも、ゴルファーリゾート運営関係者は、「最近は韓国人のゴルファーが日本に来ることが増えている」として、ゴルファーリゾートのチラシを作成。翻訳機能を使って韓国語版も作成した。

ビジネスの中でAI翻訳したチラシなどを使う際は、ネイティブ話者などのチェックが必要だが、自分で多言語対応の資料を作れることは大きな一歩になる。

早稲田大学生はサークルのメンバー募集チラシを作成。「英語版もつくって留学生を呼び込みたい」と意気込んだ。

地域の外国人も参加。「皆で幸せになるような社会にできれば」

ワークショップには、同地域周辺で中国語教室の運営などに携わる台湾出身の呉惠珍さんも、日本人の知人と共に参加。子ども向け中国語教室の生徒を募集するフライヤーをつくった。

日本語で作ったフライヤーは英語や中国語にも訳し、実際に生徒募集に役立てたいと話した。

ワークショップでスタッフにチラシ制作を学ぶ呉惠珍さんワークショップでスタッフにチラシ制作を学ぶ呉惠珍さん

最近は、日本人の生徒だけでなく、日本在住のドイツ人の子どもなども教室に参加していて、生徒の層も多様化している。日本で育つ、中国や台湾にルーツをもつ子どもたちが、中国語を学ぶ場にもなっているという。

日本人との結婚をきっかけに25年前に来日した呉さんは、様々なバックグラウンドを持つ人が共に暮らす東京の街にも、深い思い入れがある。

「色々な人が生きている中で、みんなで幸せになるような社会にできればと思っています。言葉の壁もある中で、日本に住む私も何か恩返しができればと思い、自分にできることとして中国語教室の運営に携わっています」(呉さん)

呉さんが作成した中国語教室のチラシ呉さんが作成した中国語教室のチラシ

ポジティブな多言語化は「歓迎されている」というメッセージに

ワークショップでは、デザインの他に、一般社団法人「ダイバーシティ研究所」代表理事の田村太郎さんが「外国人共生に求められる情報発信」について講演。

多言語発信においては「翻訳でただ言葉を置き換えるだけではなく、言葉の向こう側にある背景や文化や制度の違いも考慮しないといけない」 と話した。

田村さんは1995年の阪神・淡路大震災発生直後から、被災した外国人の支援に奔走。多言語で貼り紙を作り、支援情報などを伝えた経験を元に、多言語発信の重要性について話した。

さらに、商店などで「ポジティブな多言語化」を進めていく意義を以下のように説明した。

「街中では『防犯カメラ監視中』『ここに自転車置くな』などのネガティブな情報ばかり多言語化されているのを目にします。外国人からしたら、『この社会は外国人を歓迎していないんだな』と感じてしまいますよね。子どもたちも、外国人は厄介な存在なのかと感じてしまう。

一方で、レストランなどお店の情報が多言語になっていたら、外国人のお客さんも『歓迎されているんだな』と感じ、お店側も多言語表記をすることで外国人客を歓迎していますよというメッセージになります」

また、世界各地で移民と地元住民の「棲み分け」や外国人の「排斥」が散見される中、共に生きる社会を作っていくためには、「お互いが違いを受け入れ、共に変化することが大切だ」と話した。 

(取材・文=冨田すみれ子)

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Source: HuffPost