09.03
「猛暑による被害、年々深刻に」「収穫が全滅」韓国の農家が気候危機に声を上げた。気候変動の責任問い、韓国電力公社などを提訴
「猛暑による稲作への被害が年々深刻に」「りんごの収穫が全滅することも」ーー。
気候変動による深刻な影響を受けた韓国の農家たちが声を上げ始めている。
韓国各地の農業従事者6人が8月、韓国国内の温室効果ガスの累積排出最大企業である韓国電力公社とその発電子会社5社を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。
農家たちは、「気候危機の責任を認め、損害賠償を」と呼びかけている。
韓国産のりんごや韓国米は「いつまで食べられますか?」とプラカードを掲げる、原告の農業従事者「農業を続けられるか不安」「収穫が全滅することも」
原告の農業従事者は8月12日、訴訟を支援する韓国のNGO「ソリューションズ・フォー・アワー・クライメート(SFOC)」と共に、ソウル市鍾路区の光化門広場にて記者会見を開き、気候変動による農業被害について訴えた。
この訴訟は、農業分野における気候被害と関連し、直接的な法的責任を問う韓国で初めての民事訴訟事例となる。
会見では、忠清南道・唐津で稲作を営むファン・ソンヨルさんは、「病虫害や頻繁な雨、猛暑による被害が年々深刻になっており、収穫量の減少や品質の劣化によって生計が脅かされている」と話し、訴訟に関しては「農業従事者に対し、手に負えない被害を一方的に押し付けている現状の構造を変えるための訴訟だ」と強調した。
忠清南道・唐津で稲作を営む、原告の一人のファン・ソンヨルさん(左)また、慶尚南道・咸陽でりんご農業を営む原告、マ・ヨンウンさんは、「(以前は)4月末から5月の初めに咲いていたりんごの花が、4月初めに咲き始め、突然の雪や寒波で花が凍ってしまい、収穫が全滅することも増えている」と指摘。
その上で「父の跡を継いで農業に戻ったが、今は農業を続けられるか不安を感じながら暮らしている」と吐露した。
慶尚南道・咸陽でりんご農業を営む、原告のマ・ヨンウンさん済州島・西帰浦でみかん農業を営むユン・スンジャさんは、「気温の上昇により、済州産みかんの競争力および品質が低下している」とコメント。
京畿道・利川市と慶尚北道・盈徳郡で、桃を栽培するソン・ギボンさんとキム・スオクさんは、気候変動の影響で「ナシヒメシンクイ(果樹害虫)」の大量発生に見舞われ、やむを得ず樹木を伐採した。さらに、開花・結実の不良といった深刻な影響も受けているという。
SFOCはハフポスト日本版の取材に対し、「原告となった方々は気候変動の影響を直接、農業で経験したことで気候変動に関心を持ち、法的訴訟の必要性を感じ提訴に至りました」と説明する。農業従事者の集まりで課題について話し合い、各地で同じ問題を感じていた農家が訴訟に参加することを決意した形だ。
過去30年間で平均気温が1.6℃上昇。訴訟は「構造そのものを正すための第一歩」
原告とSFOCによる記者会見SFOCによると、韓国では1912~1940年の平均と比較して、1991~2020年の過去30年間で平均気温が1.6℃上昇し、降水量も135.4mm増加した。
猛暑、干ばつ、集中豪雨、冷害などの異常気象が頻発し、その結果、栽培可能な作物の範囲が急激に変化しているという。
韓電とその発電子会社は、2011~2022年の期間に韓国国内で排出された温室効果ガスの年間平均量のうち約27%を占めており、これは世界全体の累積排出量の約0.4%に相当する。
また、総発電量の95%以上が火力発電に依存しており、うち石炭火力比率が71.5%にのぼる。国際社会がカーボンニュートラルの達成に向けて再生可能エネルギーの割合を拡大している一方で、韓国国内における新エネルギーと再生可能エネルギーの発電比率はわずか9.5%にとどまっている。
SFOCはその点について、以下のように指摘している。
「韓電とその発電子会社は、国の電力供給という公営企業としての責務を果たしてきたが、それが過度な温室効果ガス排出の免責理由にはならない。発電ミックス、再生可能エネルギーへの投資拡大、電力規則の改善、石炭火力発電所の早期閉鎖といった決定は、政府の方針とは別に企業の経営判断として実行可能である」
SFOCの金・イェニ弁護士は、「農業従事者は気候危機の最大の被害者の一人だが、その責任は温室効果ガスを大量に排出してきた発電公営企業にもある」とし、今回の訴訟は「国内外の環境規範に違反した企業に対し、韓国の司法が責任を判断する重要な試金石になる」としている。
原告側は記者会見の際に公表した声明で、「今回の訴訟は、一部の農家だけの問題ではなく、気候危機を引き起こした企業が一切責任を負わないという構造そのものを正すための第一歩」と訴え、「気候危機に対する責任を認め、被害の賠償、温室効果ガスの削減計画の策定・実行が必要だ」と述べた。
慰謝料「2035ウォン」が象徴すること
気候変動の農業への影響を訴えるプラカード今回の訴訟請求では、財産的損害額のうち、被告企業の世界における排出寄与度に相当する金額に加え、象徴的な意味での慰謝料として「2035ウォン(約217円相当)」が請求されている。
慰謝料として安価な2035ウォンには、ある意味が込められているという。
この金額には、韓国の現政権が掲げる「2040年までの脱石炭火力」という目標を前倒しし、「2035年までに石炭火力を廃止すべき」との訴えが込められている。原告側は、G7諸国が掲げた「2035年脱石炭火力発電」の合意について言及し「国際的な潮流に沿って早期脱石炭火力が必要である」と強く主張している。
SFOCは「今回の訴訟が、気候危機・気候変動と企業による温室効果ガス排出との因果関係を認める裁判所の初の判例となれば、韓国内外の気候訴訟において重要なマイルストーンとなり、高炭素中心の産業構造全体へ変化を促す契機になる」としている。
Source: HuffPost




