08.09
なぜフィンランドは「世界一幸せな国」なのか。そこには6つの価値観の違いがあった
フィンランドの人々はなぜ幸福度が高いのか「世界幸福度ランキング」で北欧諸国が常に高得点を獲得していることはよく知られている。
中でもフィンランドは、寒い気候や長い冬、地域によっては日が昇らない時期があるにも関わらず、もう何年も首位をキープしている。(ちなみに、2024年のランキングで日本は51位だった)
こうした一見不利な状況に見えるフィンランドだが、高い生活満足度を実現し維持している背景には様々な理由があるようだ。
大きな理由の1つは、フィンランドには生活のストレスを軽減してくれる制度が整っていること。教育はほぼ無料で、仕事からの休暇が十分あり、医療保険も保証されている。国土面積は日本と比べやや小さいくらいだが、人口は約20分の1と少なく、様々なことが実現しやすい環境でもある。
しかし、フィンランドを「世界一幸福な国」にしているのはこうした制度だけのおかげではなく、習慣や信念も影響している。
フィンランドのメンタルヘルス専門家が教えてくれた、自国の人々がより幸せであると考える理由と、誰もが真似できる幸せへの「ツール」を紹介しよう。
感情を偽ろうとしない
世界の多くの国では、「元気?」との問いかけに「うん」「元気」と答えることが期待されている。軽い挨拶に対し悩みを語ることは、多くの場合、嫌がられたり不快に思われたりする。
しかしフィンランドでは、ポジティブであることを強制されることはない。MIELIメンタルヘルス・フィンランドのMeri Larivaara氏は、アメリカでの自身の経験と比較し、フィンランドは「大丈夫じゃない、元気じゃない、と言うことにより寛容だと思います」と述べた。
この感情的な正直さが、フィンランドの幸福感に寄与しているのかもしれない。
感情を閉じ込めても良いことはない。息詰まり、誤解され、行き場がないように感じるだろう。感情を抑え込むことは社会との繋がりを奪い、早死にに繋がるという研究もある。
ワークライフバランスが優先されている
フィンランド人はよく働くが、勤務時間は適正な範囲であるため、多くの人はワークライフバランスの良い生活を送っている。
Larivaara氏は、「日々リラックスし、自分を大切にする時間がとれるのです」と話す。
つまり、仕事以外の活動をする時間があるのだ。
Tempere大学社会科学部のJuho Saari学部長は、ほとんどの人の通勤時間は短く、それも仕事や自由時間に対する幸福度の高さに貢献していると述べた。
自然が身近にある
フィンランドの多くの人々の生活と幸福において、自然は大きな役割を果たしている──。この点については、話を聞いた3人の専門家全員が声を揃えた。
実際、フィンランドには「Everyman’s Right(自然享受権)」と呼ばれる権利があり、土地の所有者に関係なく、市民は全ての森、湖、海辺などの大自然を無料で利用することができる。つまり、森でのキャンプやベリー狩り、きのこ狩り、水泳、ハイキングなどのアクティビティを自由に楽しむことができるのだ。
また、フィンランドでは大都市部でも小さな町でも、常に自然が身近にあるという。
Oulu大学で心理学を教えるMirka Hintsanen教授は、「自然がストレスを軽減し、それが幸福感につながるという研究があります。つまり、ストレスが少ないと幸せを感じやすいのです」と話す。
あなたも近くの公園を散歩すれば、フィンランド流の幸福のヒントを得ることができるだろう。
新たなスキルを学ぶことが奨励されている
「私たちは成長することにとても熱心です。それに、新たなスキルを学ぶことは、メンタルヘルスに良いんです」」と Larivaara氏は話す。
新たな言語や仕事のためのスキルを学ぶ必要はなく、新しいレシピを試したり、セーリングのレッスンを受講したり、シンプルなことで良いという。
Saari氏によると、フィンランドにはヨガから陶芸まで、趣味を一緒に楽しめる協会がたくさんあるという。参加費は安く、さらに新たなことを学び続けることができるという。
また、Duke大学機械工学教授であるAdrian Bejan氏は以前ハフポストUS版に、私たちは新たなことを学ぶことで、時間をより豊かに感じられると述べている。
日々のルーティンから離れることで、時間を有効に使うことができたと後から感じることができるという。
信頼が厚い
フィンランドの人々の間にはとても強い信頼関係が存在するとSaari氏は話す。
「フィンランドは小さな国で、みんなさまざまな人々とネットワークを築き、『弱い繋がりの強さ』(適度に距離のある「弱い」関係性の方がより多くの情報が得られるという理論)があるのです」
フィンランドよりずっと大きな国では、全面的な信頼は難しいが、自分を信頼できる仲間で囲むことはできる。良い人間関係を築くことは、幸福度を高める上で重要な役割を果たすという。
「孤独感を解消することは、幸福を感じるために最も重要なことの1つだという研究はたくさんあります」
実際、2021年の調査によると、孤独感は人生の満足度を予測する上で、最も強いネガティブ要因の1つと考えられているといい、人生を満たすには人との親密な関係が必要だという。
全体的な幸福感を高めるには、自分の心を満たしてくれる家族や友人と過ごすと良い。その関係を大切にし、彼らとの連絡を怠らず、絆を深めることが大切だ。
圧倒的な幸福感より心の満足感を経験する
Larivaara氏は「フィンランドでは文化的に、幸福という感情は強烈なものではなく、自分の人生や今あるものに満足する、という持続的で静かな感情です。その方が、常に強烈な幸福体験や感情を求めるよりも、幸福を感じるのが簡単なのかもしれません」と話す。
多幸感を求めるのではなく、1杯の美味しいコーヒーや信頼できる愛車など、日々の中で満足感を与えてくれるものを探し、1日を通じでその気持ちを維持したり、他に満足感を与えてくれるものを探すと良いだろう。
【外的要因も幸福感に影響することを忘れずに】
「西洋文化で幸せについて語る際には、幸せになれるような人生を送るのは自分次第だと話すことが多いと思います。何でも正しくやれば幸せになれる、そしてそれはあなただけの責任だ、という幻想を抱いています」とHintsanen氏は話す。
真実の部分もあるが、幸福をコントロールするのは自分自身だけでなく、周りの環境、生活状況、そして社会の決定も影響する。
例えば、あなたが教師で、自治体がその地域の教師全員の給与を削減すると決めた場合、あなたの幸福度はおそらく影響を受けるだろう。しかし給与削減の決定はあなたが変えられることではない。だから、自分の気分を自身で変えようとするのは重要だが、それはあなただけの問題ではない。
「個人の責任に限ることはできません。個人以外の要因もある、みんなそれを覚えておくことは重要だと思います」とHintsanen氏は述べた。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: HuffPost




