08.08
米ケネディ厚生長官の"科学的人種差別”を専門家が懸念。過去には「黒人の免疫は白人より強い」発言も
ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉省長官=2025年8月4日保健福祉省長官であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、公衆衛生システムを脅かすような改変を行っている。子どものワクチン接種スケジュールに関する虚偽の情報を流布したり、ワクチン諮問委員会の信頼できる委員を、誤情報の拡散で知られる人物に置き換えたりするなどだ。
アメリカ医師会(AMA)やアメリカ小児科学会(AAP)といった団体は、これらの改変に反対の声を上げており、一部の大手医療団体は、ケネディ氏が新型コロナウイルスワクチン接種のスケジュールに加えた変更をめぐり、訴訟も起こしている。
ケネディ氏がワクチンに攻撃的な姿勢をとるのは今に始まったことではない。彼の反ワクチン的な発言は、今年初めの上院承認公聴会でも主要な争点となり、黒人コミュニティとワクチンに関するケネディ氏の過去の発言が取り上げられた。
「黒人の免疫力は我々より強いから、白人と同じワクチン接種スケジュールを与えるべきではない」
この発言の意味を問われたケネディ氏は、「一連の研究」によると、「黒人はより少ない抗原で済む」と主張した。(専門家はこれは事実ではないと述べている)
医療に関する誤情報をSNS上で検証・訂正しているジョエル・バーヴェル医師はハフポストUS版に、「ワクチン接種スケジュールは現在、年齢、感染リスク、慢性疾患の有無などを基準に調整されており、人種はその基準に含まれておらず、人種を基準にすべきだと示す研究も存在しない」と語った。
バーヴェル氏はケネディ氏が2021年の発言を撤回するどころか、改めて正当化した点を、特に問題視している。
「誤情報そのものの存在ではなく、それに正面から向き合おうとしない、あるいは誤りを認めようとしない姿勢が問題」だとバーヴェル氏は語った。
以下に、バーヴェル氏をはじめとする専門家が指摘する、ケネディ氏の発言がはらむ重大な問題を紹介する。
「ケネディ氏の発言は“科学的人種差別”」
「医学や科学の分野では、人種とは社会的構築物であり、遺伝子を見ただけで人種を特定することはできないとされている」とバーヴェル氏は語る。
つまり、人種によってワクチン接種スケジュールを変えるという考え方は、科学的に見ても無意味なのだ。
内科医でHIV治療にも携わるオニ・ブラックストック医師は、「ケネディ氏が発したワクチン接種スケジュールに関する発言は、基本的に“科学的人種差別”であり、すでに否定されている理論だ」と話す。ブラックストック氏は人種における医療の公平性のコンサル会社Health Justiceの代表でもある。
「ケネディ氏は、黒人と白人は生物学的に異なるという虚偽の信念を永続化させ、それによって黒人に対して異なる(結果として不平等な)医療を正当化しようとしている」とブラックストック氏は指摘する。
人種に基づいた医療や科学的人種差別は、黒人患者への過少治療、痛みの軽視、さらには命の喪失につながってきたとブラックストック医師は強調する。
実際に過去には、黒人は白人よりも腎機能が優れているという誤った考えに基づき、黒人が腎移植などの必要な治療を受けづらくなっていた例があるとバーヴェル氏は話す。
さらに、1793年のフィラデルフィアでの黄熱病流行時、黒人は黄熱病に対して耐性があると誤解されていた。これにより、黒人の死亡率は非常に高くなったとブラックストック氏は指摘する。
「こうした神話が危険なのは、人種を根拠に異なる治療を行うような規定が設けられ、受けられる医療の質を変えてしまう可能性がある点だ」とバーヴェル氏は語る。
医療制度への不信感をさらに高める恐れ
「ケネディ氏の奇妙な点は、彼が長年にわたってワクチン反対派であることを公言してきた人物であることだ」とバーヴェル氏は述べる。
「最近になって考えを変えたようだが、長らく彼はワクチンを支持しないと語っていた。それなのに、黒人には別のワクチン接種スケジュールをと言うのだから、目的が何なのかを疑問に思わざるを得ない」
バーヴェル氏は、こうした発言が黒人コミュニティにおけるワクチン忌避を助長する恐れがあり、科学に基づく医療への信頼を損なうと警鐘を鳴らす。
「SNS上で誤情報や恐怖を煽る手法が蔓延する中、政府のリーダーによる誤情報は、医療において何が真実で何が虚偽かを見極めることをさらに困難にするだろう。医療という制度においては、信頼が最も重要なのに」
トランプ氏の主張との共通点
ブラックストック氏は、こうした誤った信念が非常に問題である一方で、トランプ大統領やその政権のメッセージとも重なる部分があると語る。
「(ケネディ氏の発言は)トランプ氏が優生思想や移民に関して発してきたレトリックを反映している。トランプ氏は、移民が“悪い遺伝子”を持っているとか、“この国の血を汚している”などと発言してきた。これらは、遺伝的純粋性や人種的優越といった虚偽の観念を助長するものだ」
繰り返すが、人種とは社会的構築物であり、遺伝的な差異を意味するものではない。「2025年という今の時代に、数世紀も前から存在し、奴隷制や強制不妊手術、不平等な扱いを正当化してきたような誤った信念がいまだに語られていること自体が衝撃的だ」とブラックストック氏は続けた。
人々が過激な発言や問題行動に慣れてしまい、こうした発言が容認されてしまっている現実があるとしつつも、「こうした発言は極めて危険で深刻な影響を及ぼしかねない。我々はこれをしっかりと問題視しなければならない」と訴えた。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
【動画】公聴会で発言について問い詰められるケネディ厚生長官の様子
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Source: HuffPost




