08.01
「若く見えるね」外見の“褒め言葉”が良くない理由。ナタリー・ポートマンの映像に称賛相次ぐも…
ニューヨークにある映画『Good Sex』のセットで撮影されたナタリー・ポートマンさん(2025年7月15日)映画『ブラック・スワン』などの出演で知られる俳優ナタリー・ポートマンさんが7月28日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開かれたコンサートのステージにサプライズ登場し、会場を盛り上げた。
この時の映像には、ポートマンさんの外見に対する、ある“褒め言葉”が多数投稿された。しかしメンタルヘルスの専門家は、この言葉にはネガティブな影響が含まれる場合があると指摘している。
ステージにサプライズ登場
ポートマンさんは28日のコンサートで、レナ・ダナム監督の新作映画『Good Sex』で共演しているシンガーソングライターのロールモデル(本名タッカー・ピルズベリー)さんのステージに登場。
ロールモデルさんの曲「Sally, When the Wine Runs Out(サリー、ワインがなくなる時)」にあわせて踊った。
この時の映像は、ビルボードやローリング・ストーンのインスタグラムに投稿され、「楽しそう」などのコメントであふれた。その中でも多かったのが、「若く見える」という意見だ。
ある人は、現在44歳のポートマンさんがあと6年で50歳になることへの驚きを示し「本当に優れた遺伝子を持っている」と述べた。
他にも、「全然歳を取らない」「20歳に見える」「年齢のわりにすごくきれいだ」「魔法を使っているのでは」という意見もあった。
その一方で「私も44歳だけど、私たち死んでないよ笑。ナタリーが飛び跳ねても全然おかしくない」というコメントも投稿されている。
「若く見える」と言われて、喜ぶ人も多いかもしれない。
しかしメンタルヘルス専門家の中には、たとえ良い意図の発言でも、すべての人に快く受け止められるとは限らない上、「年齢を重ねる=悪い」というメッセージを広げる可能性があると考える人もいる。
「年齢を重ねるのは良くない」という考えを助長
「ナタリー・ポートマンは44歳には見えない」という発言について、「褒め言葉に聞こえるかもしれません。でもそこには、年相応に見えることや、年齢を重ねることが悪いことだというメッセージが込められている場合があります」と話すのは、自己肯定感や不安障害などを専門とする認定メンタルヘルスカウンセラーのハリー・クリツァスさんだ。
「たとえ悪気がなかったとしても、こうしたコメントは“若い方が優れている”という価値観を強めてしまう可能性があり、年齢を重ねるにつれて価値が下がると感じさせてしまいます」とハフポストUS版の取材に述べた。
結婚と家族療法士のアニータ・クリパラさんは、「私たちは、“年相応の外見”がどのようなものか、わからなくなっているのではないでしょうか?」と問いかける。
「これまで何十年も、雑誌の表紙に登場するモデルでさえも修正されてきました」
「今では、アプリを使えば目の下のクマもシワも消せます。ワンクリックで数キロ痩せて見せることもできます。20代や30代の女性ですら、ボトックスを使っています。そんな状況で、“普通”の44歳の外見とはどのようなものなのでしょうか?」
その上で、クリパラさんは「若く見える」というポートマンさんに対するコメントは、「自然な加齢を楽しむのではなく、“若く見えなければならない”というプレッシャーを多くの人に与えてしまう可能性がある」と語った。
達成不可能な美の基準
現在、アンチエイジング産業は数十億ドル規模のビジネスに成長している。
クリパラさんはその状況を指摘した上で「年齢を重ねてもシワひとつない赤ちゃんのような柔らかい肌であるべきだという基準が、社会の中に無意識に刷り込まれている」とも強調する。
「それは達成不可能な基準です。それに美しさとは主観的なものであり、ある人にとって魅力的でも、別の人にとってはそうでない場合もあります」
クリパラさんは、「『若々しさ』と『魅力的な外見』は、別のものと捉えるべきだ」と話す。
「人はどんな年齢でも魅力的で、顔にシワがあるかどうかなんて関係ないはずです」
また「歳をとって見えること」は多くの人にとって「死という避けられない現実」を思い起こさせる一方で、「若々しさの称賛は、身体の衰えから一時的に目を背ける行為」になるとも語った。
外見を褒めるべきではないのか
私たちは他者の外見を褒めてはいけないのだろうか。
クリパラさんが提案するのは「若々しさ」を称賛する代わりに、「その人の自信や輝き、振る舞い、周囲に与えるエネルギーに注目する」という方法だ。
「ファッションセンスを褒めることもできます。もちろんこれも見た目に関するコメントではありますが、年齢の枠を超えた褒め方だと言えるでしょう」
クリツァスさんは、「若く見える=魅力的で、美しく価値がある」ではなく、「すべての年齢の美しさを称えるべきだ」と話す。
「そうしなければ、自然で意味のあるものであるはずの加齢の価値を、知らず知らずのうちに下げてしまう恐れがあります」
「年齢ではなく、自信や喜び、その人の存在が与える影響に目を向けることができます。“魅力的に見える”というのは、“その人らしく見える”ということかもしれません」
また、「行動や振る舞い」に注目するというアプローチもある、ともクリツァスさんは語った。
「たとえば『すごく自信にあふれて見えるね』とか『とても温かくて明るい雰囲気があるね』などの表現で外見を褒めるのは良い方法かもしれません。年齢ではなく、その人の個性やエネルギーに焦点を当てる褒め方です」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
Source: HuffPost




