07.08
結婚詐欺で全財産失った⇨デジタルスキル習得で“どん底人生”変えた。女性のDX人材を支援へ、官民組織が発足
東京都内で開かれた「官民連携DX女性活躍コンソーシアム」のキックオフイベント【あわせて読みたい】「イクメン」から「トモイク」へ。職場も家庭も“脱ワンオペ”、「長時間労働」改善目指す。令和の父親像とは
地域で働く女性のデジタルスキル習得・就労支援の促進を目指す「官民連携DX女性活躍コンソーシアム」が7月7日、発足した。
同日、東京都内でキックオフイベントが開かれ、会長に就いた矢田稚子・前首相補佐官が、「まだまだ各地で眠っている才能を地域や社会で輝かせていく」と意気込みを語った。
イベントでは、実際にデジタル技術の習得で「人生を変えた」女性たちも登壇し、これまでの経験や目指す将来について話した。
「応援団になりたい」
東京ガーデンテラス紀尾井町(千代田区)で開かれたキックオフイベントには、政治家や企業関係者など約100人が集まった。
冒頭、平将明デジタル相が「女性のデジタルスキル習得・就労支援の促進は政府としても重要な課題」と挨拶。
国家を背景としたサイバー攻撃が行われている現状から、セキュリティー分野での需要が高まっているとし、「本当に必要な人材、女性が活躍できる社会の実現を目指す」と呼びかけた。
続いて、矢田さんがコンソーシアムの設立趣旨について説明した。
首相補佐官時代、あらゆる地域で企業や女性たちの声を聞いてきたといい、「地方の中小企業を生産性の高い経営力のある企業にしたい。女性たちの力を引き出したい。この2つの思いがあった」と話した。
また、就労意欲の高い女性たちは310万人に上る一方、夫婦間で偏りのある家事や育児の負担などから「働きたくても働けない人が多い」という現状についても言及。
大学の進学率は男女でほとんど変わらないにもかかわらず、「稼ぐ力」を比較すると、大卒女性の36%は年収200万円以下の仕事についているという政府のデータを紹介した。
その上で、先行する自治体では「デジタル技術の習得で人生を変えた女性たちがいる」とし、「地域を盛り上げ、地域社会を活性化する。そんな人たちの応援団になりたい」と決意を表明した。
矢田稚子・前首相補佐官福島・大熊町に移住した女性「人生が良い方向に変わった」
キックオフイベントでは、実際にデジタル技術の習得で「人生を変えた」女性たちも登壇した。
その中の一人、沖縄県出身の城間ちあきさんは、デジタル技術と出会う前、正社員として週5日間働きながら、シングルマザーとして2人の子どもを育てていた。
しかし、体調を崩して働けなくなり、傷病手当金をもらいながら生活を送るようになった。さらには「結婚詐欺」にも遭い、全財産を失うなど「人生のどん底」を味わったという。
自らにも嫌気がさし、落ち込んでいた2021年、城間さんに転機が訪れる。役所を訪れた際、担当者からリスキリング・就労支援を行う「MAIA」(東京都)の「でじたる女子プロジェクト」を紹介された。
パティシエや栄養士として働いてきた城間さんは、これまでほとんどパソコンを触ったこともなかったが、「どうにかこの生活を変えたい」という思いでプロジェクトに参加することにした。
リモートで受講できる講座を何度も何度も繰り返し視聴し、文字通り“泣きながら”勉強した。頑張れたのは、どん底の時に支えてくれた家族や役所の職員たちに「恩返ししたい」という気持ちがあったからだ。
サポートを受けながら約3カ月半の間、ITスキルやビジネスマナー、金融講座などを全て頭に詰め込み、運良く舞い込んできた仕事をこなしながら経験を積んでいった。
現在はシステムエンジニアとして、ドイツに本社がある世界的なIT企業「SAP」の日本法人「SAP ジャパン」(東京都)でも活躍している。
生活スタイルや収入はガラリと変わった。稼働は在宅ワークで週3.5日。それでも収入は前職と比較し、時給換算で2倍超になった。
城間さんはハフポスト日本版の取材に、「今は自分の体調や子供のことを優先できるようになり、生活が安定して精神的にもゆとりができた」と喜んだ。
城間ちあきさんまた、城間さんは2024年10月、住み慣れた沖縄県から福島県大熊町に子供と共に移住した。
同町は福島第一原発が立地し、東京電力福島第一原発事故で全町避難。 2019年に大川原・中屋敷地区の避難指示が解除されたが、一部地域ではまだ避難指示が続いている。
そんな同町に興味を持ったのは、復興支援をしているSAPジャパンの関係者が企画した福島ツアーで、同町の幼小中一貫教育「学び舎ゆめの森」を知ったからだった。
「学び舎ゆめの森」は、原発事故前に計1000人ほどが通っていた小中学校を統合した学校で、2023年に避難先から同町に帰還した。
0歳から15歳が同じ校舎に通うほか、クラスの垣根を越えて授業を受けたり、始業や終業のチャイムがなかったり、子ども一人ひとりの個性に合わせて授業を行うことで注目を集めている。
そんな自由な校風に惹かれ、「子供をこの学校に通わせたい」と移住を決断した。システムエンジニアに転身し、在宅ワークでどこでも仕事ができるようになったことも、その思い切った決断を後押しする原動力となった。
子供は福島の地でのびのび学び育っている。城間さんは「生活を楽しめるようになり、自信も溢れ出て様々なことにチャレンジしたいという思いがわいている。子どもにとっても本当に良かった」と語った。
今では飲食に関わる仕事の経験をいかし、同じ浜通り地域の浪江町で弁当屋も営業している。注文を受けて弁当を配達したり、イベント出店の際はタコライスやサーターアンダーギーなど沖縄ゆかりの料理も販売したりしている。
「デジタル技術を取得して人生が良い方向に大きく変わった。子供も福島での生活を楽しんでおり、思い切って決断をして良かった。これからもリスキリングや移住の魅力を伝えていきたい」ーー。城間さんは笑顔で話した。
◇
「官民連携DX女性活躍コンソーシアム」では今後、参加企業などを募り、法人化を目指していく。
地域女性のデジタルスキル取得による活躍モデルケースの収集と発信、スキル取得後の就労支援、地域女性の賃金の向上、地域企業の経営DXの支援などを行う。
自治体との連携も予定しているが、取り組みに興味を示している自治体はすでに68に上るという。政府関連省庁と連携し、政策提言もしていく予定だ。
Source: HuffPost




