07.07
節約や投資の知識も。超難関資格のFP1級取得、サバンナ八木の「青春する勉強法」とは?
47歳でファイナンシャル・プランナーの勉強を始め、50歳を迎えた2024年に難関資格のファイナンシャル・プランニング技能検定1級を取得したお笑いコンビ・サバンナの八木真澄さん。
お笑い芸人としての活動に加えて、経済メディアで節約や投資について語ったり、講演会に登壇したりと資格を生かして仕事の幅を広げている。3月には、八木さんの勉強を支えたYouTubeチャンネル「ほんださん/東大式FPチャンネル」を運営するほんださん(本多遼太朗さん)との共著「FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます」(KADOKAWA)が出版された。
勉強を始めた当時は将来の「先細りが見えていた」という八木さん。難関資格にどのような勉強法で挑んだのか、資格取得後の変化について聞いた。
ファイナンシャル・プランニング技能検定試験に挑んだサバンナの八木真澄さんFP1級合格への道のり
▼2022年
5月 勉強を始める
9月 3級学科合格
▼2023年
1月 2級学科合格
5月 1級学科1回目不合格
9月 1級学科2回目不合格
▼2024年
1月 1級学科3回目不合格
5月 1級学科4回目合格
10月 1級実技合格
40代半ばでレギュラー番組ゼロ「先細りが見えていた」
ーーファイナンシャルプランナーの資格を取ろうと思ったのはなぜだったんですか?
生活にまつわることなんで、始めやすかったというのはありますね。3級、2級を取って、芸人で1級を取った人は聞いたことがなかったから、難しいことは知っていたけど目指しました。何か仕事につながると良いな、という感じですね。
ーー勉強を始めた当時はレギュラー番組が減っていた時期だったそうですね。
先細るだけやったのは、自分で見えていたんで。どうしても次の展開がいるなと思ったんですよね。コメンテーターで番組に行っても、自分よりしゃべれる人はいっぱいいるんで、知識があったら需要があるかなって思いました。
「わからない」をパターンに分けて攻略する
ーー1級の試験はどのあたりが難しかったですか?2級までとは違いましたか?
2級の試験でも計算式が出るんですが、基本的には勉強すれば取れるんですよ。1級の場合は高校の数学ができないと、なかなか理解できない部分も多い。もういっぺん数学を復習したのはきつかったですね。
あとは、何を問われているのか、問題文が読み込めないんですよ。例えば、民法の問題ですね。文章が複雑なので、「AさんがBに対してCをする」っていう文章が出てきたら、Aさんを自分の知り合いに置き換えて、誰が何をしているかを考えていました。
暗記なのか、理解なのか、全体が見えていないのか…いろいろなパターンの「わからない」があるんですよ。
ーーいろいろな「わからない」がある中でどうやって勉強していたのですか?
ロケがきつい時は15分、仕事がない日は6時間ぐらい毎日勉強しました。最初はFP界のレジェンドである「ほんだ先生」(ほんださん / 東大式FPチャンネル)のYouTubeを見て、自分自身で「立つ」というところまでは持っていってもらって、そこからは過去問を1日1回は通してやるって決めていたんです。100回くらい連続で通してやりました。僕はそれを「稽古」と呼んでいました。
そもそも最初の段階で、自分自身を実験台にして「世界一ゆるい勉強法」っていうものを作ることを念頭に置いていたんです。一個一個の「わからない」について、「これはどういうタイプの『わからない』なんだろう?」っていうことを研究して攻略していく感じですね。
学び続けるコツは「心地よい習慣をいかに作るか」
ーー毎日勉強するということに、もともと慣れていたんですか?
慣れていないですよ。ただ、もともとトレーニングは毎日していましたし、日記も17歳から30年以上書き続けています。
ダイエットをしていた時に「2年続ければ味の好みが変わる」ことを知りました。例えば、そばか丼だったらそばを選ぶとか、味の好みをやせる方向に向けるんです。2年続けたら、それが好きになるんですよ。勉強も2年続いたらそれが心地良くなるんです。だから全く勉強しなかったら心地悪くなる。
要するに、心地よい習慣をいかに作るかだけなんですよ。僕の場合は、家で近くに家族がいて、ダラダラ勉強している方が心地よい。何もしないでいきなり朝ごはんを食べるよりも、勉強して疲れて、朝ごはんを食べるとめっちゃ美味いです。
ーーもともと何かを続けることを実践していたんですね。継続することが苦手な人も多いと思いますが、真似できる部分はありますか?
そうですね。例えば僕が会社員だったら、と考えてみますね。朝6時に起きて空いている電車に乗って、そこで勉強します。会社についたら朝ご飯を食べて、仕事が始まるまでにコーヒーを飲みながら、電車で勉強したところを20分復習します。一番集中力が出る時間なんで、問題も1個解きますね。
お昼休みになったら廊下でスクワットでもいいからちょっと体を動かします。終わったらおにぎりを食べて、15分勉強します。
夜6時に仕事が終わったとして、帰りはしんどかったら電車の中では何か聞くか、自分がやっていて一番楽しいところを勉強しますね。家に着いたら夜8時から1時間勉強します。9時からちょっとお酒を飲んで、10時には寝ます。
ーー机に向かう時間を作ろうとするより、日常でできるタイミングを見つける感じですね。
そうです。あと、僕やったら休みの日は遠くに行きますね。移動時間を勉強に使うんです。実際に東京のマンションから、神奈川の猿島という無人島に行っていました。片道1時間半から2時間かかるので、往復で3時間は勉強できるんですよ。ビーチを見て、途中でおしゃれなカフェに行って1時間勉強したら、計5時間勉強したことになります。
僕は一つの行動で3つ何かを取る、「一石三鳥」と考えるんです。会社員の方であれば1個目が勉強、2個目が移動、3個目は社内のコミュニケーションで使う「話題作り」です。
普段から営業でさまざまな舞台に立っているサバンナの八木真澄さん学び直しは「2回目の青春」だった
ーー私の場合、何か勉強を始めるとしばらくはやる気が出るんですが、飽きたり嫌になったりすると1週間くらい休んでしまい…なかなか続かないという悩みがあります。
嫌になるのは、多分問題を解くだけにしているからじゃないですか?要は、ドーパミンが出ていないんですよ。ドーパミンが出るような作業をしていないからです。
僕やったら、noteやXで勉強したことを発信しますね。例えば1週間勉強したら8日目に勉強したことを書くんです。フォロワーが増えたら飽きなくないですか?
要は、アウトプットから入るんです。僕の場合はそもそも「本を出したい」というところから入っているんです。だから試験に落ちることも想定内。落ちた時の気持ちや、なぜ落ちたのか知ることも織り込んでいるんです。
僕の場合は芸人なんで「本を出したい」から入りましたが、会社員だったら勉強していることを話題として喋ると良いです。あとは同じ資格を取る人でチームを作って自分がリーダーになってみるとか。なんかこう、青春をしていかんとだめなんですよね。
ーー青春ですか?
例えば、学校のクラブ活動って青春だったでしょう?みんなで何か切磋琢磨して、一緒にファミリーレストランで飲むコーヒーほど美味しいものはないと思っているんです。そこに青春があるんです。
試験を受けた時、実際に感じたんですよ。例えば大学って、学園祭とか営業で何回も行っているんです。でも、試験で大学に行った時は気持ちが全然違いました。門の前に立った時、「すごい、ここまで来たんだ」みたいな気持ちになれるんですよね。
試験会場にはバリバリ頭の良さそうな20代の子もいるし、他の資格も持っているプロみたいな人もいる。近くのファミレスに行ったら、最後に追い込んで勉強している人もいて。クラブ活動の試合と同じような気持ちになりました。
僕の場合は試験会場に着いたらこういう感じで(頭の後ろに手を組む仕草)一切ノートを見ずに、余裕そうな感じでいました。そんな自分に酔うんですよ。なんていうか2回目の青春をしていますよね。
ーー勉強をしていて実際に仲間もできたんですか?
勉強自体は1人でやっていたんですけど、FPの資格に受かったアイドルの方とSNSでつながったり、YouTubeで見ていたほんだ先生に連絡をいただいたり。試験が終わった後に全然知らん人と「今日難しかったですね?」と喋って、お茶にも行きました。どんどん世界が広がっていったと思います。
ーー資格を取ってから仕事の内容には変化がありましたか?
講演の仕事をいただけるようになりました。僕も知識はまだまだなんで、わからなかったら調べて、「こういう層にはこういうネタがいいんじゃないか」と考えていますね。経営者の方など普段会えない方とも会うようになりました。あとは、ラジオなら無料で聞いてもらえるので、stand.fm(音声配信プラットフォーム)でお便りをもらって答えています。
リアルに芸人に来てもらって相談に乗ることもありますね。こういう人がこういう悩みを抱えているんやってびっくりすることも多いです。めちゃくちゃ実践になっています。
講演会で話すサバンナの八木真澄さんーー今後の目標はありますか?
講演に行けたらいいですよね。あとはコンビとしていま31年目なんですが、40年目を目指すことが1つの目標です。うちのコンビの特徴はお互いが好きなことをやること。お互いにいろいろなことをやるけど、最終的にはコンビを軸としてやっていきたいです。
ーー学び続けることに苦労している方にアドバイスするとしたらどんなことを伝えたいですか?
とにかく1番楽しいところからやるってことですね。自分が興味のある、楽しいと思うことを学んで、すぐ人に喋ると良い。そこで自分が人気者になったら、また次の日に調べようって思えます。その繰り返しですね。勉強してきたことを披露して「お前すごいな」って言われたら、この嬉しさが勉強する喜びに変わりますよね。
僕も次の勉強を始めています。最低でもあと10年は続けます。もうライフワークになっているんで、終わりがないんです。
プロフィール
1974年生まれ。京都府出身。立命館大学産業社会学部卒業。94年に学生時代の後輩・高橋茂雄さんとお笑いコンビ・サバンナを結成。「ブラジルの人聞こえますか~!」など1000個以上のギャグを持ち、柔道2段・極真カラテ初段の筋肉芸人としても活躍中。著書に『未確認生物図鑑』『年収300万円で心の大富豪』などがある。2024年に1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得した。2025年3月に『FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます』を出版。
『FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます』Source: HuffPost



