06.30
ネットミーム画像が理由でアメリカへの入国を拒否される?旅行者が「認められなかった」と主張
オハイオ州共和党のパーティーで話すヴァンス副大統領(2025年6月24日)アメリカに入国する際、肉類や植物を持ち込むことはできない。しかし、ヴァンス副大統領のネットミーム(インターネット上の風刺画像)も入国拒否の理由に?
ノルウェーの観光客のマッツ・ミケルセン氏は「ニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港で6月11日に入国を拒否された」とノルウェーのメディア・ノールリスに語った。
ミケルセン氏は、入国審査官に空港でスマホをチェックされたという。
入国審査官はカメラロールにヴァンス氏のミームを見つけて保存理由を尋ね、その後に過激主義のプロパガンダや麻薬の密輸についての質問をした、とミケルセン氏は振り返っている。
【画像📷】入国を拒否されたミケルセン氏が携帯に保存していたヴァンス副大統領のネットミーム
ミケルセン氏は、ドイツとニューメキシコ州でマリファナを使用したことがあると答えたが、どちらも合法の地域であるため問題にならないと思っていたと話している。
この報道の後、「ヴァンス氏のミームが原因で入国を拒否されたのでは」という憶測が広がったものの、アメリカ国土安全保障省は否定。
トリシア・マクローリン次官補は、「マッツ・ミケルセンがJ・D・ヴァンスのミームを理由に入国を拒否されたというのは誤りです。入国を拒否されたのは、本人が薬物使用を認めたためです」と6月24日にX(旧Twitter)に投稿している。
ネットミームは入国拒否の理由になりうる?
トランプ大統領は就任直後に「入国審査を強化する」という大統領令を出した。この大統領令を受けて、国境監視員らは在留資格のある移民や観光客にも、強引な審査をするようになっている。
国土安全保障省は否定しているが、携帯電話に保存されている政治的なミームが入国拒否の理由になるうるのだろうか?
弁護士で『The Walls Have Eyes: Surviving Migration in the Age of Artificial Intelligence(壁には目がある。AI時代の移民と生存)』の著者ペトラ・モルナー氏は「ミームや記事、写真が入国拒否の根拠として使われる可能性は十分にあります」と述べる。
「入国の判断は、かなりの部分が裁量に任されています。リスクのある行動を探すためという理由でのソーシャルメディアの監視強化が、その傾向をさらに強めています」
米国務省は6月に、「アメリカに対する敵意」を調べるために、ビザ申請者にソーシャルメディアのアカウントを公開するよう求めると発表した。
モルナー氏はこの要請に触れて、「一見くだらない冗談のようなものでも、今のような状況では拘束や尋問、強制送還の根拠として使われる可能性があります」と警告する。
F、M、またはJ非移民ビザを申請する全ての方は、米国の法律に基づく身元確認及び米国への入国適格性の審査を円滑に行うため、ご自身のすべてのソーシャルメディアアカウントのプライバシー設定を「公開」にするようお願いします。 pic.twitter.com/UKlRxHVgd7
— アメリカ大使館ビザ課 (@USVisaTokyo) June 23, 2025
検査を拒否できるのか?
アメリカ政府は、入国の際に電子機器を検査する権利があると主張している。
しかし、アメリカ市民であれば、スマホにヴァンス氏の風刺画像を保存していたことが理由で入国を拒否されることはない。
電子フロンティア財団の弁護士ソフィア・コープ氏は「アメリカ市民であれば『自分の国に入国させない』と言われることはありません。それは違法です」と語る。
ただしアメリカ市民であっても、電子機器の検査に応じないことで尋問や、長時間の足止め、機器押収の可能性はあるという。
コープ氏は「数週間から数か月間押収される場合もあります」と注意を促す。
アメリカ市民と比べると、観光客やビザ保有者の権利は保護されていない。
モルナー氏は(検査に応じなければ)「入国を拒否されるリスクが高く、最悪の場合は不快な尋問を受け、電子機器を無期限に没収される可能性もあります」と述べる。
コープ氏は、「ネットミームを理由に観光客の入国を拒否するのはばかげている」としつつ、ミケルセン氏はアメリカ市民ではなかったため、対抗手段がなかったと指摘する。
「残念ながらグリーンカードを持っていない非市民の場合、電子機器へのアクセス許可を求められた時、拒否するための交渉手段はほとんどありません」
どんな対策ができるのか
立場の弱い観光客やビザ保有者は、入国検査における自分の権利を理解しておくことが助けになるかもしれない。
たとえば検査官は本来、携帯電話を調べる前に「機内モード」に設定するよう求められており、SNSなどのクラウドアプリを閲覧すべきではない。とはいえ、実際はソーシャルメディアのアカウントを見られたことが報告されている。
モルナー氏は「FaceID(顔認証) などの生体認証を無効にし、自動クラウドアクセスを制限し、メッセージの自動消去機能を設定しましょう。Signalのようなアプリに切り替えてもいいかもしれません」とアドバイスする。
また、「予備の携帯電話を用意する、ノートパソコンを持っていかない、不要なデータや問題視されかねない資料を削除しておくこともできます」とさらに踏み込んだ対策も紹介した。
本来、スマホのロック解除に必要なパスワードを提供する義務はない。しかし、観光客やビザ保有者は拒否すれば入国を拒否される可能性がある。
ミケルセン氏は「携帯電話のパスコードを教えなければ、収監もしくは罰金刑になる言われた」と主張している。
ハフポストUS版は、この主張について税関・国境警備局(CBP)と国土安全保障省(DHS)に尋ねたが、「ミケルセン氏は薬物使用を理由に入国を拒否された」というマクローリン次官補のコメントを述べるにとどまり、直接的な回答はなかった。
コープ氏は「携帯電話のパスコードを教えるのを拒否すれば刑務所に送られるもしくは罰金を科される」という脅しに法的根拠はないと指摘する。
「現実的には、入国を拒否されるか、携帯電話を押収されるかのどちらかです。犯罪ではありません」
電子機器の検査を拒否することには、メリットとデメリットの両方があり、リスクは本人の在留資格によって大きく異なる。
コープ氏は「デバイス検査によるプライバシー侵害は、入国拒否されるだろうか?飛行機に乗り遅れないだろうか?拘束されるだろうか?などのリスクとバランスをとって考える必要があります」と語る。
監視が強化されるアメリカ
今、アメリカへの渡航に不安を感じている人は多いだろう。
コープ氏は「トランプ政権は、自分たちに何らかの形で反対の意思を表明する人々に対して、非常に過敏になっているように見えます。(今回のヴァンス副大統領のミームは)反対の意思を伝える最も害のない表現です」と語った。
モルナー氏も、「ネットミームやソーシャルメディアまでも検査するようになった現在のアメリカで、監視の強化を懸念するのはもっともなことだ」と話す。
また、同氏は「プライバシーの権利は単に悪事を隠すためのものではない」とも指摘する。
「私たち個人の自律性と監視からの自由という、根本的な権利の問題です。その権利が今、深刻な脅威にさらされています」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
Source: HuffPost




