06.28
ヒョンビン主演『ハルビン』、「祖国独立で苦労した人がいる。簡単に撮影してはいけない」待望の日本公開への思い【詳細レポ】
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韓国映画「ハルビン」が7月4日に公開されるのに先駆け、主演のヒョンビンさん、監督のウ・ミンホさん、日本から制作に参加したリリー・フランキーさんが6月27日、東京・新宿ピカデリーでジャパンプレミアに登壇した。
待望の日本公開への思いや撮影の裏話を明かし、ヒョンビンさんは「とても難しくてつらいかもしれないけど、一歩一歩信念を持って進んでいけばいい未来が待っている、という希望を届けてくれる映画」だと呼びかけた。
「日本での公開が大きな意味を持つ」
本作は1909年、日本による朝鮮半島への侵略が進む中で、独立運動家の安重根(アンジュングン)とその同志たちが、独立のため中国・満州のハルビン駅で韓国統監府初代統監だった伊藤博文を射殺するまでの過程を描いた。
韓国での公開から半年が経ち、日本で封切られることについて、監督のウ・ミンホさんは「ハルビンは日帝時代の大韓義軍の物語。日本での公開が大きな意味を持ちます」と語った。
映画のプロモーションとしては約15年ぶりに来日したヒョンビンさんも「日韓の歴史を描いた映画で、観客がどのように見るか気になるし、少し緊張しています」と吐露。今回初めて韓国映画に出演したリリーさんは「歴史を題材にしたこの映画がお互いの国で上映されるということが平和の象徴なんじゃないかなと思いますし、みなさんに楽しんでもらえれば、この映画が一番良い姿になると思う」と述べた。
リリー・フランキーさん「ブルースクリーンの前で簡単に撮影してはいけない」
祖国独立のために闘った安重根は韓国では英雄的な存在で、多くの映画やドラマ、ミュージカルなどで描かれてきた。これまで「インサイダーズ/内部者たち」や「KCIA 南山の部長たち」などで韓国社会や実在の事件をモチーフにヒット作を手がけてきたウ・ミンホ監督は、書店で安重根の自叙伝を手にとったことが映画制作のきっかけだったと明かした。
「自叙伝を読み、人間的な苦悩を抱えていた人物だということを知りました。どうしてハルビンまで行って大きなことを果たそうしたのか。英雄としての姿の裏にある苦悩や、同志を思う姿を映画に込めたいと思いました」
ウ・ミンホ監督ヒョンビンさんも安重根を演じることにはプレッシャーを感じていたようで、「多くの感情や考えを抱えていたことを映画を通して見せたいと思いました。監督が誠意をもって、意味のある映画を作ろうと伝えてくれたことが、私の心を動かしました」と振り返った。
安重根らがハルビンに向かうまでを描いた本作は、日本軍に追われ、過酷な環境の中で生き抜いてきた大韓義軍の姿を映し出す。ロケは韓国のほかモンゴル、ラトビアなどで行われ、ヒョンビンさんはこんな裏話を明かした。
「監督から宣戦布告があったんです。当時は祖国独立のために苦労した人が数多くいたので、カメラの前、あるいはブルースクリーンの前で簡単に撮影してはいけない、十分な覚悟をしてきてほしい、と。ラトビアやモンゴルの自然の中で撮影した時は、つらいという気持ちよりも、『あの時代の人たちはこのようなことを考えていたんだろう』と思いを馳せることができ、いい現場だった。演技をするうえでの助けになりました」
ヒョンビンさんの優しさを感じたエピソード
撮影のために1人で韓国に向かったというリリーさんも、ウ・ミンホ監督のエネルギーや、ヒョンビンさんの優しさに触れ、楽しく充実した撮影だったと振り返った。特にヒョンビンさんの優しさを感じたエピソードとしては、こう話した。
「10人ぐらいでご飯を食べた時に、全員が韓国の俳優さんだったので、韓国語で話しているじゃないですか。僕が黙っていると、隣に座ってきたヒョンビンが、テーブルの下で僕の手に上から手を添えてくれて、『リリー、Are you OK?』と。それぐらい気を使ってくれるジェントルな人なんです」
この話を笑顔で聞いていたヒョンビンさんも「もともとリリーさんの大ファンだったので、下心がありました」と答え、会場からは笑い声があがった。
韓国で仲を深めたヒョンビンさんとリリーさん日本と韓国では撮影現場の雰囲気も違ったといい、リリーさんは「日本みたいにお弁当ではなく毎日ケータリング。3日撮影したら1日休みがあるので、スタッフが温泉に連れていってくれたこともありました」とも振り返った。
ウ・ミンホ監督自身、キャストやスタッフへのホスピタリティを心がけているといい、「優先順位の一番はおいしいご飯。みな全身全霊で仕事して心身ともに疲れるのに、ご飯が美味しくなかったら怒ってしまいますよね。私の現場での基準は、ご飯がおいしいことと、ご飯の時間を守ることです」と語った。
この話を受け、リリーさんは「日本だとご飯の時間が守られないことはよくある。今のは絶対書いてくださいね!」と冗談混じりにメディアに呼びかけた。
「OTTの時代だが、劇場で体験する映画だと伝えたい」
本作は、ヒョンビンさんをはじめ、パク・ジョンミンさんやチョ・ウジンさん、チョン・ヨビンさん、イ・ドンウクさんら豪華キャストが揃った。さらに、1979年の朴正煕大統領の暗殺事件後に起きたクーデターを描いた映画「ソウルの春」などのハイブメディアコープが制作を手がけ、「パラサイト」で知られるホン・ギョンピョさんが撮影監督を務めるなど、近年の韓国映画の盛り上がりを担ってきた製作陣が集結した。
ウ・ミンホ監督は本作について、「OTTの時代だが、テレビや携帯で見るのとは差別化された作品。劇場で体験する映画だと伝えたい」「韓国と日本の俳優の素晴らしい演技が見られる。ヒョンビンさんの安重根に憑依した、いつもとは違う姿。リリーさんの演技を間近に見ることができたのは驚くべき体験だった」と熱く語った。
リリーさんも「映像美とダイナミックさがある」とし、「携帯で見てもスケールは伝わらない。氷の上を歩いているヒョンビンを劇場で見てほしい」と呼びかけた。
たびたび観客を見渡し笑顔を見せていたヒョンビンさんヒョンビンさんは本作のメッセージについて「とても難しくてつらいかもしれないけど、一歩一歩信念を持って進んでいけばいい未来が待っている、という希望を届けてくれる映画」だと総括。さらに、日本でのプレミアが実現したことについて、「リリーさんが大きな役割を果たしてくれた。韓国での公開時には韓国に来てくれて一緒に舞台挨拶に立ったが、その時に、日本で公開された時はまたぜひ一緒にやろうと約束した。今日その約束を果たすことができました」と、改めて感謝の気持ちを伝えた。
(取材・文=若田悠希/ハフポスト日本版)
Source: HuffPost




