2025
06.20

ChatGPTなどのAIを使うと思考能力が衰える?MITメディアラボの新研究が指摘する懸念点とは

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AIで人間は賢くなるのか、それとも――。

多くの人がChatGPTなどを日常的に使うようになった今、AIが人間にどのような影響を与えるのかがますます注目されるようになっている。

アメリカ・マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボは、ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)を使うことが教育現場、具体的には文章の執筆にどのような影響を与えるかを探る実験を行い、6月に結果を発表した。

論文によると、ChatGPTを利用して執筆した参加者は、脳の神経ネットワークや、言語面、行動面でのパフォーマンスが一貫して低かった。

研究者は、LLMに依存しすぎるとクリティカルシンキングや認知能力、主体性などが影響を受ける可能性があるという懸念を表明している。

どんな研究だったのか

研究には大学に通う18〜39歳の54人が参加し、3グループにわかれて以下の条件で合計3回小論文を書いてもらった。

①ChatGPTを使う
②Googleの検索エンジンを使う
③自分の頭脳のみ

【画像】ChatGPTの影響を調べる実験で参加者が小論文を執筆する様子

小論文は、「選択肢が多すぎることは問題か」「芸術には人生を変える力があるのか」などの大学試験SATで出されるテーマで執筆した。

小論文の内容はどうなった?

実験の結果、ChatGPTで執筆したグループの小論文は使用言語や構成がほぼ完璧だった一方で、内容がどれも似通っており、同じような表現やアイデアが繰り返されるなど、独自の思考が欠けていることが多かったという。

添削した英語の教師は、ChatGPTグループの小論文を「魂がないように感じた」と評価している。

また、参加者は執筆の回数を重ねるごとに手を抜くようになり、3回目はコピペに頼る傾向が顕著になったという。

一方、自分の頭脳のみで書いたグループは、長さが短く正確性のスコアが低めと評価される部分はあったものの、研究者は「参加者やトピックごとに多様で変化に富んだアプローチが見られた」としている。

Googleを使ったグループは、検索エンジン最適化されたコンテンツに影響される傾向がみられたという。

脳の活動の違い

研究では、脳波計を使って参加者の脳活動も記録した。

その結果、頭脳のみで書いたグループは、アルファ波やシータ波、デルタ波の神経ネットワークの接続が最も高かった。

この神経ネットワークの接続は、検索エンジンのグループは中程度で、最も低かったのはChatGPTのグループだったという。

ChatGPTを使った参加者は、頭脳だけのグループと比べ、神経ネットワークの接続が最大で55%低下していた。

記憶力はどうだった?

研究者は、3回の執筆に加えて任意で4回目を実施。ただし4回目では、参加者は新たなテーマではなく、自分が1〜3回で書いたエッセイのうち1本のテーマを選んで、書き直すよう求められた。

また4回目では書き方を入れ替え、1〜3回でChatGPTを使った参加者は頭脳のみ、頭脳のみだったグループはChatGPTを使用して執筆した。

その結果、1〜3回でChatGPTを使って執筆した参加者は、自分の書いたエッセイの内容をほとんど覚えていなかったという。

1〜3回で頭脳もしくは検索エンジンを使って書いたグループでは、約89%が自分の書いた文章を正しく引用することができたが、ChatGPTを使って書いた参加者は約17%だった。

また、1〜3回で頭脳のみを使ったグループは、自分で書いたという「所有感」が高かったが、ChatGPTグループでは低かった。

どう使うかが重要

研究者は、AIを使えば大幅な時間や労力が削減できる一方で、依存しすぎると知識や主体性、記憶、批判的・論理的思考能力、ライティングスキルなどの習得を阻害してしまう恐れがあると指摘している。

一方で、最初に自分の頭脳だけで執筆した後にAIを使った学生は、脳の神経ネットワークの接続が強かったこともわかっており、使う順序が大事だということも示された。

今回の研究はサンプル数が比較的少なく、まだ査読(ピアレビュー)を受けていない。

論文の責任著者でMITメディアラボのナタリヤ・コスミナ氏は、教育現場でLLM導入が加速する中で、脳の活動などへの影響について注意喚起するため、査読を待たずに結果を早期公表したとTIMEに述べている。

コスミナ氏らは、LLMはかつてないほど学習や情報へのアクセスを向上させる可能性がある一方で、認知発達やクリティカルシンキング、知的主体性への影響については慎重に検討し、継続的な研究を行う必要があると結論づけている。

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Source: HuffPost