06.19
米最高裁、トランスジェンダーの権利に打撃を与える決定。テネシー州の性別適合医療禁止を支持
連邦最高裁が未成年のトランスジェンダーへの性別適合医療を禁止するテネシー州の法律を支持する判決を下したことを受けて、ワシントンD.C.の教会ではトランスジェンダーの権利を支持する人々による抗議集会が開かれた(2025年6月18日)【関連記事】32年男性だと思って生きてきた。衝撃的な1本の電話がその全てを変えた
アメリカの連邦最高裁判所は6月18日、未成年にジェンダー適合医療を施すことを禁止するテネシー州の法律を支持する判決を言い渡した。
判決は6対3で、ロバーツ主席判事、トーマス判事、アリート判事、カバノー判事、ゴーサッチ判事、バレット判事が賛成し、ケイガン判事、ソトマイヨール判事、ジャクソン判事が反対した。
今回の判決はテネシー州の法律に限定されたものであり、他州に住む未成年のトランスジェンダーの医療アクセスにすぐには影響を及ぼさない。
しかし、同州のトランスジェンダーの若者は、性別適合のための医療の選択肢がほぼ閉ざされることになった。
また、法律の専門家たちは、今回の判決がトランスジェンダーの権利や差別に関連したその他の訴訟に影響を与える可能性があると懸念している。
どんな裁判だったのか
この裁判では、テネシー州の上院法案第1号(SB1)が違憲かどうかが争われていた。
SB1は、未成年者への思春期ブロッカーやホルモン療法、外科的治療などのジェンダー適合医療を禁止する内容で、2023年3月に可決された。
この法案が施行されてから1カ月も経たないうちに、トランスジェンダーの若者のいる3組の家族と、同州メンフィスに拠点を置く医師1人が「法律は合衆国憲法修正第14条に違反している」として提訴した。
憲法修正第14条は平等な保護を保障している。1970年代以降、この平等な保護には「性別に基づく差別」が含まれると解釈されてきた。
原告は、州の禁止法は性別に関連するものであるから、差別かどうかを審査する際には「より厳格な審査基準」を適用すべきだと主張した。
しかし最高裁の多数派判事は、テネシー州の禁止法は「平等保護条項の下での厳格な審査の対象にはならない」と判断。「トランスジェンダーであることを理由とした差別」に当てはまらないと結論づけた。
ロバーツ長官は多数派意見で「SB1は、未成年者の性別に関係なく、特定の医療目的で思春期ブロッカーやホルモンを処方することを医療提供者に禁じているに過ぎない」として、トランスジェンダーに対する差別ではないと述べた。
また、同長官は、性別適合医療の規制に関する判断は、「国民とその選挙で選ばれた代表、民主的なプロセスに委ねられるべきだ」と、議会で決定すべきだという考えも示した。
一方、ソトマイヨール判事は反対意見で、禁止法は「トランスジェンダーの若者の家族と医師との間で行われるべき医療判断や、当事者の子どもの深刻なメンタルヘルスや性別違和をまったく考慮していない」と批判。
「最高裁はトランスジェンダーのアメリカ人を、国家による差別によって二重に脆弱な存在とした」「今回の判決は、平等保護条項に取り返しのつかない損害を与え、立法府があからさまな性別の区別を隠して、差別することを許す道を開く」と述べている。
アメリカの首都ワシントンD.C.で行われたワールド・プライドでは、トランスジェンダーの権利を規制しようとするトランプ大統領に抗議して、キルトを使ってナショナル・モールに「Freedom To Be(自分であることの自由)」という文字が描かれた(2025年5月17日)トランスジェンダーは「“気まぐれ”ではない」
これまでにトランスジェンダーの若者の性別違和や不安、うつ病の軽減にジェンダー適合医療が有効であるということが多くの研究からわかっており、主要なアメリカの医療団体も医療ケアの提供を支持してきた。
それにも関わらず、過去5年の間に、性別適合医療は反トランスジェンダー法案の標的となってきた。
これまでに、24州で未成年者への性別適合医療を禁止する法律が可決されている。そのうちいくつかの州では未成年に医療を提供した医療従事者を重罪とする規定を設けている。一方、17州とワシントンD.C.では、トランスジェンダーの医療アクセスを保護する法律が制定されている。
現在、トランスジェンダーの若者の30%以上が、何らかの医療アクセス禁止措置のある州に住んでいると考えられている。
規制されている州に住むトランスジェンダーの若者とその家族の多くは、性別適合医療を受けるために、何百ドル、時には何千ドルもの費用をかけて州外に移動しなければならなくなっている。
テネシー州でSB1が施行された後、ナッシュビルに住む13歳のトランスジェンダーの女の子の家族は、医療ケアを受けるために車でオハイオ州に通わざるをえなくなった。しかしオハイオ州でも2024年1月に独自の禁止法が可決されたため、家族はさらに遠いワシントンD.C.にあるクリニックを探す必要に迫られた。
母親のダイアンさんは、「私が娘の“気まぐれ”を許している、と思われるのは侮辱的です。気まぐれでも一時的なものでもありません。これが彼女自身なのです」とハフポストUS版に語った。
アメリカ自由人権協会(ACLU)のLGBTQ&HIVプロジェクト責任者チェイス・ストランジオ氏は18日、「本日の判決は、トランスジェンダーの人々や家族、憲法を重視するすべての人々にとって壊滅的な敗北です」と声明で述べた。
「痛みを伴う後退ではありますが、トランスジェンダーの人々とアライ(支援者)が自由や医療、そして命を守るための手段を失ったわけではありません。私たちはこれまで以上に、すべてのトランスジェンダーの人々の尊厳と平等のために闘う決意を固めています」
トランプ大統領は1月の就任以降、「性別は男性と女性のみ」と定める大統領令に署名するなど、反トランスジェンダーの政策を強化している。
最高裁は5月に、トランプ大統領の命じたトランスジェンダーの兵役禁止を認める判断を下している。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。
Source: HuffPost




