2025
06.10

5人に1人が「望む数の子どもをもてない」。経済要因が最多、気候変動への懸念も【世界人口白書2025】

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5人に1人が、「望む数の子どもをもつことができない」と考えている━。

国連人口基金(UNFPA)が6月10日に発表した世界人口白書2025で、そんな調査結果が報告された

今回の調査のテーマは「出産をめぐる真の課題」。人々が望む家族を構築できないと考える要因に、経済的・社会的な障壁があることが改めて浮かび上がった。

調査は2024年、英国の調査会社YouGovとUNFPAが、韓国やスウェーデン、米国、インド、南アフリカなど14カ国の計約1万4000人(18〜88歳)を対象に実施した。日本は対象国に含まれていない。

希望する子どもの数を実現できると思うかについて聞いたところ、次の結果となった。

「わからない」または「回答しない」45%
「希望の数を実現できると思う」37%
「希望より少ない子どもしかもてないと思う」11%
「希望より多くの子どもをもつことになると思う」7%

この回答結果からは、およそ5人に1人(18%)が、「希望する子どもの数を実現できない」と考えていることが分かった。

一方、50歳以上では、「希望よりも少ない子どもしかもてなかった」は31%、「希望より多くの子どもをもった」は12%だった。

また、すでに子どもがいる人または将来子どもをもちたいと思っている人計約1万人に対し、「当初望んでいたよりも子どもの数が少なくなった、あるいは少なくなりそうな要因」を複数回答で尋ねたところ、「経済的な制約」と答えた人が最多の39%で、次いで「失業や雇用の不安定さ」が21%だった。多くの人が、経済的な理由を挙げていることが読み取れる。

気候変動や環境破壊、戦争、パンデミックといった「将来への不安」と回答したのは23%だった。

パートナーがいないことが要因だと答えた人は14%に上ったほか、不妊症や妊娠のしにくさ(12%)、健康状態や慢性疾患(12%)といった健康上の理由を挙げる人もいた。

個人それぞれが望む家族を築くために、どんな政策が必要なのか。UNFPAは、質の高い健康サービスへのアクセス改善▽若者の自立支援などの経済政策▽包括的な性教育━などを提案している。

加えて、ジェンダー不平等も家族に関する人々の選択肢を妨げているとして、

▽女性が出産によって退職を迫られる、キャリア向上を阻まれる
▽男性の育児休暇の欠如、育児をする父親へのスティグマ
▽保育料の負担の大きさ

などの点で改善が必要だと呼びかけている。

また、多くのメディアや学者、政策立案者などが、出生率の低下は女性の選択に問題があるとする前提を持ち続けていると指摘。出生率をめぐる責任を女性に押し付けることは、女性に対する有害なスケープゴート化だとして、こうした言説は歪んだ政策にもつながると警鐘を鳴らしている。

子どもを育てたり、望んだりするのは当然、異性愛のカップルだけでなく、多様な家族の形がある。

白書では、「親になることや家族を築くことは、もはや若い異性愛者の核家族だけのものではない」と明記。だが現状では、LGBTQ当事者や独身者などが親になることを望んだ場合、養子縁組や生殖補助医療へのアクセスといった法的・制度的な障壁があると指摘し、UNFPAはこうした人々が親になる権利を拡大することも求められるとしている。

世界人口白書2025世界人口白書2025

真に必要なのは「生殖の自己決定権」

調査結果からは、経済的・社会的な障壁を背景に、多くの人が希望する家族を築けないと考えている現状が浮かび上がった。

UNFPAは白書で、「(出産をめぐる)課題の根源は、国家や経済のニーズと一致しない個人の生殖の選択にあるのではなく、個人の望みと一致していない環境や政策の選択にある」と強調。経済的な安定をはじめ、一人ひとりが望む家族の形を実現する上で必要な環境が整っていないことが問題だと分析している。

その上で、真に求められるのは出生率の上げ下げを目的とした政策ではなく、「全ての人が、自分の求める環境で生殖に関する選択を行えるよう、リプロダクティブ・オートノミー(生殖に関する自己決定権)を推進するグローバルな投資を大幅に拡充すること」だと呼びかけた。

UNFPAの成田詠子・駐日事務所長はメディア向け説明会で、「人口がこの先増減することは世界の現実です。そこで一番注目しなければいけないのは、一人ひとりのウェルビーイングが確保されているかどうかということであり、世界各国は政策を通してそれを確保しなければいけない」と話した。

世界人口白書2025」の全文は、UNFPAのサイトに掲載されている。

(取材・執筆=國﨑万智@machikunizaki.bsky.social

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Source: HuffPost