06.08
住まいを失ったLGBTQ+当事者のための個室シェルターがある「この場所があったから回復できた」
東京プライドに出展した「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」のブース(2025年6月7日)東京・中野区に、住まいを失ったLGBTQ+当事者のための一時的な避難場所がある。
「LGBTハウジングファーストを考える会・東京」は2018年から、貧困などで住居をなくしたLGBTQ+のための個室シェルターを運営している。
これまでに貧困や心の病、HIV陽性の診断、薬物依存、DV被害などさまざまな理由で困窮した人や、難民として日本に逃れてきた性的マイノリティの当事者が利用してきた。
同団体は6月7、8日に東京・代々木公園で開かれた日本最大級のLGBTQ+イベント「東京プライド2025」にブースを出展して、なぜ個室シェルターが必要なのか、どんな支援が求められているのかを伝えた。
なぜLGBTQ+のシェルターが必要なのか
「LGBTハウジングファーストを考える会」は、LGBTQ+や生活困窮者の支援に関わってきた個人の有志が立ち上げた。
同会事務局長の金井聡さんは、「過去の支援の中で暴力や虐待、貧困などに苦しむLGBTQ+当事者のための避難場所がないと感じたことが、シェルター立ち上げのきっかけになった」とハフポスト日本版の取材に答えた。
例えば、DV被害者のシェルターはほとんどが女性用で、同性パートナーから暴力被害を受けた男性の受け入れ先が圧倒的に不足している。
生活困窮者の受け入れ先があったとしても多くが相部屋で、同性パートナーから暴力を受けた被害者の中には、トラウマを抱え知らない相手と暮らすのが難しいと感じている人もいるという。
他にも、戸籍上の性別を変えてないトランスジェンダー当事者が、女性・男性どちらの施設にも受け入れてもらえないという問題も生じていると金井さんは説明する。
主催者・東京プライドのブースで「LGBTQ+と貧困」をテーマに話をした金井聡さん(2025年6月7日)性的マイノリティの当事者の多くが、行政・福祉サービスを利用しにくいと感じていることがわかっている。
NPO法人ReBitが2023年に実施した調査では、LGBTQ+当事者の95.4%が「行政・福祉関係者にセクシュアリティについて安心して話せない」と回答した。
金井さんらも、行政や福祉関係者に相談できず、友人の家やネットカフェに泊まったり、ホームレスを選ばざるをえなかったりするのを目にしてきたという。
避難できる場所がないLGBTQ+当事者が安心して利用できる個室シェルターを作りたいという思いから、クラウドファンディングで資金を集め、2018年に1室目を開室した。
シェルターはこれまでに20人以上が利用してきた。入居期間の目安は3カ月で、シェルターで生活しながら、スタッフが日常生活や、次の支援や住まい探しをサポートしている。
利用者からは「脅かされることなく暮らせる場所があったことが精神的な回復につながった」「社会生活を再生させられた」「仕事がなくなり路上生活も考えたが、人生をリセットできた」などの声が寄せられている。
東京プライドのブースで、会の活動について説明するスライド(2025年6月7日)シェルターの次の課題
LGBTハウジングファーストを考える会は、国や自治体の補助金は受けておらず、市民からの寄付と企業の支援金でシェルターを運営している。
コロナ禍の2020年にクラウドファンディングをして2室目を開いたものの、その後資金不足になり、現在は1部屋のみの運営になっている。
金井さんは「まずは資金不足を解消して、もう一部屋シェルターを増設したい。そのための東京プライドのブースでも協力者を募りたいと思っています」と話す。
もう一つの課題は、LGBTQ+の人たちの相談先を広げることだ。金井さんは、そのためにさまざまな分野の専門家との連携が重要だ、と強調する。
「シェルターはもちろん必要なのですが、相談できる場所がなかなかないことが、生活が困窮につながっていると感じています」
「私たちLGBTQ+コミュニティだけで支援を担うのではなく、医療や福祉の専門職の人たちにもどんな課題があるのかを知ってもらい、当事者が生活に困った時に、行政や福祉の窓口などでも相談できるようになってほしいなと思います」
「誰もが行政や福祉の窓口で相談でき、様々な施設を利用できるようになる。そういう場所が地域に広がることが、本当の意味でのインクルーシブだと思っています」
Source: HuffPost




