2025
06.03

「アメリカ人」を理由に解雇された。度を越したトランプ政策の代償

国際ニュースまとめ

スタジオで働いている筆者スタジオで働いている筆者

【あわせて読みたい】ハーバード大学に合格した。父は沈黙し、祖父母は衝撃的な言葉を私にぶつけた。

そのメールは先週突然やってきた。

「プロジェクト契約の残りは最後まで続けるが、それ以降はアメリカ人とアメリカ企業との取引は終了する。君のせいではないのは分かっているが、君の大統領は『戦争』を始めた。アメリカ人のことは好きだが、幸運を祈るよ」

とのこと。

私の収入の20%が消えてしまった。

ボイコットされたのも、仕事が取り消されたのも初めてだった。

私はボイスオーバー俳優だ。テレビCMや医療機器の説明、YouTubeのミニドキュメンタリーのナレーションなど、知的で信頼性があり、人を惹きつける声を提供している。あなたがすぐに「次へ」ボタンを押すような面倒くさいオンライン研修の声も担当している。私は、情報を伝えたり、ブランドやメッセージに信頼性を加える、聴覚的な心地よさと安心感を与える存在なのだ。

しかし「アメリカ英語」への信頼は崩れ落ちた。

私のクライアントである国際的な組織は、あらゆる大陸の国々と交流があり、もはやアメリカの個人や産業にお金を費やしたくないと思っている。そして組織の希望溢れる取り組みに、アメリカ訛りの英語ナレーションを使用したくないのだ。

このクライアントはウクライナの組織ではない。中国やイラン、北朝鮮企業の報復的な行動でもないし、EUに拠点を置く企業でもない。それは友好的なカナダのクライアントで、狂気の大統領に率いられた今や「敵国」に対し、正当に、そして愛国的に団結している。

かつての同盟国の反応がこれだ。これまでアメリカを憎み続けてきた国々の反応を見るのが待ちきれない。

世界はもうこれ以上、アメリカに我慢できない

メールが届いた時、その決定に抗議したいと思った。成人してからこれまでの全ての投票記録や、LGBTQや左寄りの取り組みに関するたくさんの執筆記事のリンクを送りたいと思った。

ほら、見て!私も同じように怒ってるんだ。私たちは同じ側にいる。同感だよ!

でも、そんなの関係ない。アメリカ国民全員の連帯責任だ。世界はもうこれ以上我慢できないのだ。

実際にトランプを支持していようが、彼にお手上げの心境で苦しんでいようが、私たちはひとくくりにされ、経済的な影響は全員に及ぶことになる。

拒絶はクリエイティブな仕事をする人にとっては人生の一部だ。私たちは常に「方向性を変えることにした」という一言に備えている。新しいCEOやクリエイティブ・ディレクターがやってきて、既存の契約関係に手を加える。意思決定者が変わることは仕事の一部で、私は長年そうした損失に耐えてきた。

でもこのメール、この損失は、辛かった。フリーランスの人なら誰もが口を揃えて言うだろうーー。「境界線を尊重し、細かい管理や干渉をしてこず、常に期限以内に支払いをしてくれる貴重なクライアントを見つけたら、命をかけてしがみつけ」と。

すべてはとてもうまくいっていた。

トランプ大統領の馬鹿げた関税と、「カナダを51番目の州にしよう」という嫌がらせ発言のせいで、私は頼れる収入源という貴重なギフトを失った。AIに台本を書かせ、動画を編集させ、さらにナレーションまで任せる企業が増えていることを心配している最中、これは壊滅的な打撃だ。

でも、この契約を失ったショックと傷が癒え始めると、私はカナダ人に敬意を示さずにはいられなかった。

分かるよ。当然だ。もう度を越した。誰かが立ち上がらなければならない。だから私はカナダの友人や同僚を心から尊敬している。

彼らはせめて、私に真実を伝える誠実さを持っていた。私の仕事が基準を満たしていないとか、新たな声を求めていたとか言うこともできたし、予算の調整のせいにすることもできた。一方的に連絡を断つこともできただろう。

代わりに、大胆なリーダーの言動には結果が伴うということを私に伝えることが重要だと考えたのだ。

というわけで、私は友好的なカナダ人たちからボイコットされた。

アメリカとその国民はどうなるのだろうか?

今後数カ月のうちに、先を見据えた国々がアメリカから手を引き、厳しい報復や防衛的な動きを見せ、あらゆるアメリカ人から同様の苦い話を聞くことが増えるだろう。

最も困難な問題はまだ残っている。かつての同盟国がすべて我々から離れ、信頼できる成熟したリーダーが率いる新たなグローバル大国として歩み出した時、アメリカのこの「実験」と市民たちはどうなるのだろうか?

民主党支持者であろうが共和党支持者であろうが、私たちは皆同じ運命にある。私たちはみんなにとって悪者であり、歴史上正しい評価にある側は悪者を救いにはこない。私たちを救うのは、私たち自身しかいない。しかし、民主主義の失敗を積極的に望んでいる人が多くいる中、民主主義は勝利できるのだろうか?

私には分からない。

でも、私は自分の声と文章を駆使して闘い続けるつもりだ。だって、私にはそれしかないから。

私たちのこれからの方向性に合う、軍事請負業者向けの声を磨くか?それともイギリス訛りの英語を習得して新たな住所を手にいれるか…

私は今、すべてにおいて悲嘆に暮れている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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Source: HuffPost