06.02
男性上司もカチューシャをつけて仕事?サンリオと脳科学者が、幸福度と生産性を上げる「Kawaii 研究」を開始
健康寿命やメンタルヘルスなどへの関心が高まる現代、脳科学の領域においてもウェルビーイングに関する研究が進んでいる。
そうした中、日本を代表するキャラクター企業「サンリオエンターテイメント」と、脳の健康状態を可視化し、維持・向上を目指す「ブレインインパクト」は、脳の健康管理サービスやコンサルティングを提供する「BHQ」と共同で「Kawaii BHQ研究」を開始した。
「Kawaii(かわいい)」という感情と幸福感の関係性に焦点を当てた本研究について、小巻亜矢さん(サンリオエンターテイメント代表取締役社長)や、山川義徳さん(ブレインインパクト理事長・京都大学 特命教授)などに話を聞いた。
サンリオピューロランドKawaiiの可能性を、脳科学で明らかにしたい
そもそも、なぜ脳科学とサンリオという斬新な共同研究が始まったのだろうか。
研究の出発点について、小巻さんは「同社での長いキャリアの中で、かわいいものに触れて笑顔になる多くの方々を見ているうちに『かわいいものに触れることで、精神だけでなく身体や人間のコミュニケーションにも直接的に良い影響が出ているのではないか』と長らく感じていました。そこにBHQという脳の幸福度を示す指標が生まれたということで、化学的かつ具体的に『kawaii』から生まれる脳の幸せを証明できたらと考えました」と説明。
山川義徳さん(左)と小巻亜矢さん(右)小巻さんは、慶應義塾大学教授の前野隆司さんが提唱する4つの幸福因子(「やってみよう」因子「ありがとう」因子「なんとかなる」因子「あなたらしく」因子)についても言及。「BHQが高い状態にあると幸福度も高いと言われています。BHQを上げることで幸福度が高まり、ビジネスにおいては仕事への意欲や生産性の向上、アーリーアダプターとして好奇心を持ってチャレンジしやすくなるなどの効果が期待できます」と説明した。
山川さんは「残念ながら日本の経済は調子が良くない現状です。その要因には同調圧力によるモチベーションへの低下や、情報社会での思考過多による意思決定のリソース不足、不安によるチャレンジ不足などもあると考えています。そこに『kawaii』という身近な感情でアプローチできないかなと考えました」と話し、ビジネスや経済にポジティブな影響を与えたいとコメントした。
予備実験の結果、Kawaiiで脳の幸福度が激変?
実際に、何かを「かわいい」と感じることで、BHQおよび幸福度にはどのような影響があるのだろうか。
パナソニックの社員22人が参加した予備実験の結果について、同社プロダクト解析センターの難波嘉彦さんが説明した。
参加者はまず、ブレインインパクトが監修し、神戸大学と連携して開発した『BHQ Search』を用いて、自分の脳が喜ぶサンリオキャラクターを診断。その後、診断結果に応じたキャラクターグッズを仕事環境に取り入れつつ通常通りの業務を行い、キャラクターグッズを取り入れた場合とそうでない場合の脳の1週間の状態を比較した。
山川さんは「かわいいものへの感受性は、目に見えるところにかわいいものを置くなどの簡単な手段で高まるという研究の結果が出ており、また愛着を持って積極的に触れることでより結果が出るという研究結果もあります」と話す。さらに、知識労働時間が多く、高収入で高齢の男性ほどかわいいものへの感度が低いことも明らかになっているという。
サンリオのかわいキャラクター実験中の出来事を振り返り、難波さんは「キャラクターのカチューシャをつけて仕事をするのは、正直恥ずかしかったですね(笑)。カチューシャは難易度が高いという社員は、グッズをデスク周りに置いたり、パソコンのホーム画面やスリープモードにキャラクターを表示したりと、それぞれに合った形で実験に参加してくれました。社員の柔らかい表情をたくさん見ることができたり、チーム全体が盛り上がったりしたことがとても嬉しかったですね」とコメント。
さらに「診断によると僕の脳はシナモンロールが好きらしいので、今日もシナモンロールのカチューシャをつけて来てみました。弊社はポチャッコ推しが多かったのは意外でしたね」と話し、会場を和ませた。
AIの時代、クリエイティブに欠かせない心理的安全性

実験の結果、介入前後で参加者の1週間のBHQスコアに大きな差が認められたという。
山川さんは「介入前は月曜日のスコアが低く(約-0.8)、水曜日(約0.5)に向けて上がるものの、金曜日(約0.2)に向けて緩やかに低下しています。一方の介入後では、月曜日の時点で高いスコア(0.5以上)を記録し、金曜日(約0.9)に向けてさらに向上していることがわかりました。予備的なデータではありますが、職場環境には働き手の幸福度を向上させるための大きな可能性がありそうです」と説明した。今後、最適な介入方法などを明らかにするため、規模を大きくしての研究を計画しているという。
実験結果を振り返り、小巻さんは「何かを『かわいい』と感じることは心理的安全性を高めるとも言われており、多くの人にとって身近な感情でもあります。少し恥ずかしいかなと思いつつも、職場をより温かく、笑顔で溢れる場所にするために、研究がどのように発展し、どれくらいの人を笑顔にして、生産性を上げて日本の経済が元気になるのか。とても期待しています」とコメントした。
山川さんは「AIが進歩し、人間にはクリエイティブ面でのスキルが求められる時代になりつつあります。アイデアが出る職場には笑顔が溢れるコミュニケーションが欠かせません。職場や経済のため、脳科学者にもできることがあると思うので、今後も研究を大きく進めていきます」と総括した。
今後「Kawaii」がビジネスパーソンの幸福度や日本の経済にどのようなインパクトを及ぼしていくのか、引き続き注目していきたい。
Source: HuffPost




