2025
05.30

トランプのナルシシストな行動を止めるためにできることを専門家が分析。「感情をコントロールされてはいけない」

国際ニュースまとめ

アメリカのトランプ大統領(2025年5月28日)アメリカのトランプ大統領(2025年5月28日)

アメリカの陸軍創設250周年と自身の79歳の誕生日が重なる6月14日に、トランプ大統領は軍事パレードを計画している。

自分の誕生日をケーキやロウソクで祝うだけでは満たされず、戦車、儀礼飛行、最大4500万ドルかかる軍事パレードを求めるのであれば、それはもはや普通の感覚とは言えないだろう。

【画像】法王やスーパーヒーロー……。トランプ氏が自分と重ね合わせて作った自身を称賛するAI画像

これは、自己愛性パーソナリティ障害の診断基準の1つである「自己の重要性について誇大な感覚がある」に当てはまる。

もちろん、私は直接診察することなく、大統領や公人の診断を下すことはできない。

しかし、権力者、特に政治権力者は自己愛性パーソナリティ障害の特徴を示す可能性が高いことが研究からわかっている。

ナルシシストが指導者になると、真実が歪められ、信頼が損なわれ、制度が不安定になる。一方で、この力学を理解すればするほど、私たちは健全な社会と民主主義を守ることができる。

私はトラウマやナルシシストによる虐待の問題に取り組む臨床心理士として、診察を通して誇大な自己像を持つナルシシストが及ぼす影響を目にしてきた。

誇大な自己像を持つナルシシストは家族を不安定にするのと同じように、民主主義を揺さぶる。彼らは一見魅力的に思えるかもしれないが、否定や攻撃、責任転嫁、感情的混乱などを生み出す。

私の患者の1人は、自分の兄弟が高齢の母親に暴力的な脅しや経済的虐待を加えていることを知り、その兄弟を問い詰めた。すると兄弟は態度を一変させてすべてを否定し、逆に患者を「情緒不安定だ」と非難。自分の“優等生”イメージを必死に守ろうとした。

その患者は黙っているよう家族から圧力をかけられ、強く思い悩んだ。しかし問題に気づき、サポートを得たことで、確固たる態度をとった。彼女は落ち着いた姿勢を保ちながら、壊れたレコードのように繰り返し、加害を指摘し続けた。そうすることで、自身の境界線を守り抜いた。代償はあったものの、最終的に兄弟は母親の家から出て行くことになった。

同じようなパターンは、政治の舞台ではさらに拡大された形で現れる。ナルシシストによる支配は、コロコロ変わる態度や監視者の沈黙などで繁栄する。

ナルシシストの家族のメンバー同様、権威主義的な指導者たちは、人々を「不安定で予測不可能な心理状態」にさせる。これは昔からよく使われている手法だ。

そうやって物事が常に変化し、予測不可能な状況が続くことで、脳は予測したり備えたりする力を奪われ、人々は精神的なバランスを崩して支配されやすくなる。

これに対抗するために必要なのは「気づき」だ。「気づき」はワクチンのような役割を果たす。ナルシシズムの虐待に気づくことで、さらなる加害に立ち向かうための心理的免疫力を徐々に築ける。

ある患者は、元恋人に「ムービング・ゴールポスト(一方的に条件や合意事項を変更すること)」という戦術を使われていた。この元恋人は「彼女を良くするためだ」と主張して要求を突きつけ、満たされるとすぐに新たな期待を押しつけていた。

この戦略は、政治の世界では政策や公的な見解を頻繁に翻す形で現れる。そうやって、市民やメディア、同盟国を常に不安定で混乱した状態に置くのだ。 

トランプ政権は発足以来、関税政策を何度も変更し続けている。民主党のテッド・リュー下院議員は4月13日、「ホワイトハウスは関税について自分たちが何をしているのか全くわかっていない。態度をころころ変えている……。こんなにすぐに撤回するのであれば、なぜ免除するのか?」とXに投稿した。

多くの人は、度重なる方針転換を「無能」や「戦略ミス」だと片づける。実際、ナルシシズムは衝動的で誤りの多い意思決定と関連がある。それでも、ナルシシストによる虐待に詳しい人なら、こうした行動の奥にあるもっと深い操作の意図を見抜いている。意識的であれ無意識であれ、ナルシシストは他者を「心理的むち打ち状態(精神的に翻弄される状態)」に置くことで、支配力を維持する。それは、実際に効果を発揮する。

ナルシシストの第一の目的は「相手の感情をコントロール」することだ。脆い自尊心や権利意識を守るために壮大な幻想を保ち続けようとし、他者に感情移入しない。

自己陶酔的なナルシシズムは必ずしも虐待とイコールではない。しかし、より攻撃的なナルシシズムは、混乱や絶望、忠誠心などの感情的な絆を利用して、他人の思考や感情を操作し、称賛や反応を絶えず引き出す。そうやって自分を恥の感情から守り、たとえ相手に不利益な状態でも、つなぎ止め続けようとする。

ナルシシストが使う数々の戦術の中で最も効果的なのは「危機の捏造(ねつぞう)」ではないだろうか。

“緊急事態”が続くのは偶然ではない。意図的に作り出されているのだ。そうやって人々を常にサバイバルモードに追い込み、より深刻な問題から気をそらす。そうすることで、ナルシシストは常に注目と支配の中心にいられる。

ナルシシストによる虐待を受けた私の患者は、激しいかんしゃくをぶつけられたり、親権を奪うと脅されたり、深夜の電話で「強盗にあった」という作り話をされたりしていた。これは国家レベルでは、言葉による挑発や、法的脅迫、非常事態宣言という形で現れ、ニュースを支配し、反対意見を押しつぶす手段として使われる。

神経には耐えられる限界がある。こうした虐待を受け続ければ、戦う(怒り)、逃げる(逃走)、固まる(麻痺)、こびへつらう(服従)、あきらめる(絶望)などが、生存本能による自然な反応として現れる。しかしこの反応で、動けなくなることもある。

セラピーの場でも民主主義の回復においても、そこからの癒しは、こうした状態に囚われていることに気づき、そこから抜け出し、揺るぎなく、組織された行動を取り戻すことから始まる。

私は臨床心理士として、患者が自分の置かれている状況を特定し、解放されるための支援をしている。患者は、理由もなく自分が不安になったり集中できなかったりしていたのではなく、心理的な強制状態に反応し続けていたのだと次第に理解し始める。

同じことは、ナルシシストのリーダーに揺さぶられている社会にも当てはまる。これは単なる政治の話ではない。今、何百万人もの神経系が「闘争か逃走か」の状態にあるのだ。

母親から虐待的なメッセージを送られ続けていたある患者は、フラッシュカードを使って対応するようにしている。

この母親は、自分の子どもを非難し、被害者のような態度を取り、“緊急事態”だと騒ぎ、金銭を要求していた。

母親の不安定さに振り回され、絞られた雑巾のように疲弊していた患者は、戦術を見抜き、「否認」「攻撃」「被害者ぶる」「ヒーローを演じる」「危機を作り出す」などと、フラッシュカードに書き留めるようにした。そうやって戦術に名前をつけることで、距離を取れるようになった。

相手の戦略に名前をつけることで、冷静さを保ち、自分の反応を自らコントロールできるようになる。予測不可能だったものが、予測可能なものへと変わる。そうすることで、「心理的免疫力」を獲得できる。

私はこれまで、ナルシシズムの支配の霧の中から抜け出そうともがく多くの患者を見てきた。それはいっぺんにできることではない。

まずは変えられないものが何かを見極めて諦め、次に手の届くことに集中する。注目を取り戻し、境界線を引き、自分から反応を引き出して喜ぶ相手に、自分の力を渡すことを拒否する。

私は、ナルシシズムの力学が制度の中でどのように働くかを見てきた。法律事務所や大学、政治機関などが、社会で共有すべき重要な価値観よりも権力者に従ってしまう構図は、家庭で起きている虐待と同じだ。誰もがビクビクと用心しながら歩き、自己防衛が最優先され、価値観ではなく恐怖に基づいた選択をする。

そこから回復するためにまず必要なのは、内部抗争の連鎖に協力してエネルギーを消耗するのをやめることだ。

貴重な余力を怒りに費やす代わりに、戦術を見抜き、害を指摘し、信頼できる支援を構築し、自分の手に負えないものは手放す。ショックや相手との交渉、ネガティブな考えにとらわれ続けるのは、深い喪失感で生じる悲しみを避けようとする心の動きを反映している場合が多い。それは、患者の場合は私的で感情的な喪失、国にとっては社会的・制度的な喪失だ。

『オズの魔法使い』では、主人公のドロシーがカーテンを開けて、魔法使いの正体がマイクとスモークマシンで自分を大きく見せていた自信のない男性だったことを明らかにした。それにより、街全体を支配していた幻想が打ち砕かれた。このような「気づき」の瞬間は、セラピーでもとても強力だ。操作する相手の正体を見抜いたとき、呪縛は解け始める。

トラウマ心理学の視点から見て、「カーテンの裏側」が明かされた時に国は何ができるのだろうか?

まず最初にやるべきは、相手に力を与えるのをやめることだ。ダメージの後始末のために過度に反応すれば、かえってナルシシストは責任を取らず、影響力を持ち続けてしまうことが多い。

政治レベルでナルシシストが起こした混乱は、すぐに“修正”しようとするのではなく、まずは立ち止まって戦略を練る必要がある。戦略的な自制——それはすべての挑発に乗らないハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務にも当てはまるだろう。彼の姿勢はしばしば「反撃しない」と批判されるが、それは弱さではなく規律だ。

私が教えている対処法の一つに「グレイロッキング(gray rocking)」がある。これは、ナルシシストが求める大騒ぎや注目、感情的な反応をしないという方法だ。

グレイロッキングでは確固たる態度を貫く。感情的になったり大げさに反応したりせず、権力に依存する人間にとって“退屈で魅力のない標的”になる。誇張したり、感情的に反応したりすれば、ナルシシストをむしろつけあがらせてしまう。彼らが求める“燃料”を与えてはならない。これは決して簡単にできることではない。しかし、加害者の力を削ぐ。

次にすべきなのは、境界線を引くことだ。セラピーの場合、壊れたレコードのように何度も「ノー」と繰り返し、安全を保つための支援体制を築く。国家レベルでは、協力して憲法のガードレールを再び機能させることを意味する。それには法の適正手続きや、抑制と均衡(三権分立)、言論の自由などが含まれる。

トランプ大統領が、18世紀に作られた戦時法を抜け穴として利用して権力を拡大したことは、アメリカの民主主義の弱点を露わにした。

アメリカ独立宣言にはこう書かれている——「そのすべての行為により専制君主を特徴づける性格を持つ君主は、自由な民の支配者としてふさわしくない」。憲法とは単なる法的構造ではない。それは、ナルシシストの支配に対抗するための心理的な足場でもある。

3つ目はレジリエンス(回復力)を築くことだ。ナルシシストによる虐待は危険で歯止めがきかない。さらに、虐待が生み出す苦痛や孤立そのものを燃料として維持される。

だからこそ、このサイクルを断ち切るには、規制を回復させ、コミュニティの力を強化する訓練が必要なのだ。みんなで支え合うことや自分を大切にすることは贅沢ではない——抑圧の時代においては、それこそが革命的な行為だ。休息は撤退ではない。それは、行動を起こし、体制を立て直すのに必要な、明晰さと団結力を取り戻すための手段だ。手を取り合い、協力しよう。数には力があり、連帯で安全が生まれる。

何よりも大切なのは、「長期戦への信頼」を持ち続けることだ。ナルシシズムの力学は、緊急性や不安を煽ることで成り立っている。しかし本当の変化は、冷静さと明晰さ、つながりを保ち続けることから生まれる。

ナルシシストの支配への対抗に必要なのは、有害な手法を真似ることではない。それを見抜き、その被害を悼み、これ以上ナルシシストの支配を可能にすることを阻止し、衝動的な反応から抜け出すことだ。境界線を引き、市民として立ち上がり、長期的な戦略を立てる——それが、民主主義の精神を癒やす第一歩だ。

セラピーでも民主主義でも、癒やしは衝動的に反応することをやめ、本来の自分たちを思い出すことから始まる。

筆者:Dr. Jocelyn Sze(ジョスリン・シー博士)。科学的根拠に基づくPTSD(心的外傷後ストレス障害)と不安症の治療を専門にする臨床心理士。カリフォルニア大学バークレー校の臨床学准教授。トラウマに焦点を当てた研修・研究・治療を行うNPO団体ベイエリア・トラウマ・リカバリー臨床サービスと、歴史的に排除されてきたコミュニティをエンパワーする草の根団体を支援するマキューン財団の理事を務める。本記事は著者本人の見解であり、所属組織の公式な見解を代表するものではない。

ハフポストUS版の寄稿を翻訳しました。

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Source: HuffPost