2025
05.26

第二のYOASOBI、CreepyNutsは生まれるか?日本アニメのグッズ・音楽・ゲーム展開、海外進出の現状

国際ニュースまとめ

アニメビジネスに詳しいコンテンツアナリスト、尾形拓海さん(株式会社Haru代表)が、日本のアニメ産業の世界戦略と向かうべき方向について考えます。第四回は、『アニメ産業で狙うべき領域はどこなのか』について。

第一回:日本アニメ3.5兆円、急成長する世界戦略に潜む「落とし穴」

第二回:『NARUTO』級作品はアニメだけではもう生まれない。日本アニメ、世界での本当の人気ランキングと「稼ぐ力」の可能性を分析した。

第三回:知られざる、現代アニメ業界のビジネスモデル。アニメ自体は宣伝媒体、二次展開で稼ぐモデルとは?

第四回:第二のYOASOBI、CreepyNutsは生まれるか?日本アニメのグッズ・音楽・ゲーム展開、海外進出の現状(今回はここ)

第五回:日本アニメが世界でもっと成長するために。足りないのはこの3つだ。

アニメビジネスは、アニメ作品だけでは決して成り立たず、グッズやイベント、舞台、音楽、ゲームなど様々なメディアが集合することによって初めて成立する総合格闘技です。

これがアニメビジネスの難しいところであり、同時に可能性に満ちた面白いポイントでもあります。

海外におけるアニメ人気への理解を更に深めるために、総合格闘種目の中でも特に市場規模が大きい「グッズ」「ゲーム」、そしてYOASOBIやCreepy Nutsが躍進している「音楽」について分析します。

2024年4月、サンフランシスコでパフォーマンスするYOASOBI2024年4月、サンフランシスコでパフォーマンスするYOASOBI

フィギュアは、覇権作品以外にも可能性がある

アニメグッズには多様な種類がありますが、最も人気が高いのはフィギュアです。

どのようなアニメフィギュアが売れているのかを分析するために、Amazonの米国サイトにおいて過去2年以内に発売されたアニメフィギュアの売上ランキングトップ100において、人気アニメがどのように分布しているのかを調査しました。

今回、人気度の分布を分析するために、MyAnimeListの「Most Popular」ランキングを使用して、「1〜10位」「11〜30位」「31〜100位」「100位圏外」という4つの分類を定義しました。

なお、Amazonのアニメフィギュア売上ランキングには、アメコミやボーカロイドといったアニメ以外のフィギュアも多く含まれていたため、それらを除外し、アニメに限定してフランチャイズ別に集計を行いました。

ただし、『ポケモン』はグッズビジネス単体でアニメ市場全体を超えるほどの規模であるため、今回の集計対象からは除外しています。

フィギュアの売り上げランキングにおける人気アニメの分布フィギュアの売り上げランキングにおける人気アニメの分布

このデータから読み取れる重要なポイントの一つとして、「アニメフィギュア市場は比較的ロングテールな構造になっている」という点が挙げられます。

トップ100のうち約半数は1〜30位が占めており、レジェンダリータイトルのシェアが大きいです。これは、連載の第二回で詳しく分析したように「海外におけるアニメ人気を安定的に支えているのはレジェンダリータイトルである」という事実を踏まえると、自然なデータだと言えます。

重要なのは、「トップ100のうち33%は、100位圏外の作品が占めている」という点です。この層には、「各シーズンで覇権を取ることはできなかったが、一定のファンを獲得・育成できた中堅タイトル」が多数含まれています。

つまり、レジェンダリータイトル及び覇権作品でなくとも、アニメフィギュア市場で一定の売上を作ることは十分に可能であるということになります。また、フィギュアで可能であれば他のグッズジャンルでも一定可能である、ということは仮説として十分妥当でしょう。

この傾向は、他社による調査データにも裏付けられています。越境ECプラットフォームであるBuyeeが発表した「2024年に放映されたアニメの越境ECにおける販売商品数ランキング」でも、上位には有名タイトルが並ぶ一方、下位層には比較的マニアックなアニメも多く見られます。

出典:Buyee

私自身、アニメフィギュアを含む物理グッズの越境ECに関わっていたことがありますが、今回のデータはその時の現場感覚とも一致しています。

当時の売上の柱は『ワンピース』や『僕のヒーローアカデミア』といったレジェンダリータイトルでしたが、売上全体の半数弱は比較的マニアックなアニメが占めており、熱量の高いファンに支えられていると感じていました。

このように、後述のゲーム・音楽と比べると海外でも広く機会が開かれているアニメグッズですが、ビジネスモデルに構造的な課題があります。

それは、物理グッズの商流、つまりグッズのライセンシング体制です。

通常、アニメグッズのライセンスは地域や国ごとに付与されるため、人気作品ほど世界各国からの申請が多く、製作委員会単独では対応しきれなくなります。

そのため、IPエージェントと呼ばれる仲介企業が間に入り、ライセンス管理や契約交渉、商品化許諾などを行います。例えば、中国や台湾、東南アジアでは『MUSE』や『MediaLink』という企業が広く知られています。

IPエージェントは、特定エリアにおいて、商慣習の理解や企業ネットワークなどの専門性を有しています。そのため、該当エリアに知見を持たない製作委員会にとっては、IPエージェントにライセンシング業務を委託することで、業務負担を軽減できるだけでなく、アニメ自体をより効果的に宣伝できるというメリットがあります。

同時に、「1. 中間マージンが発生し製作委員会へ入る収益が減少すること」「2. 最終的な商品発売までのリードタイムが長期化してしまうこと」「3. エージェント側のリソースにも制限があるため、アニメの人気度によってサポート体制に濃淡が出てしまうこと」などのデメリットも多く存在します。

グッズはアニメ関連市場でも市場規模が最も大きく、日常生活でも触れる機会が多いため、ファンの育成に特に最適なメディアです。

アニメを本格的にグローバル展開していくにあたり、これらのデメリットはこれまで以上に大きくビジネスに影響してくる可能性があります。

音楽は言葉の壁を超えない、ただし、アニメソングならば可能性がある

アニメソングのグローバル展開においては、ここ数年で明るい話題が続いています。たとえば、2023年には『【推しの子】』のオープニング曲であるYOASOBIの『Idol』が、Billboard Global 200の年間チャートにおいて日本人アーティストとして初めてランクイン(42位)するという快挙を達成しています。

また、2024年にNetflixオリジナルアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』のオープニング曲として起用されたCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、Billboard Global 200の週間チャートで8位を記録しました。

こうした成功例は、アニメを媒介として日本の音楽が従来以上に海外へと届いていることを示しています。しかし、れらの成功例が「アニメソング全体のグローバル進出」を意味するわけではない点には注意が必要です。

2024年のSpotify再生数グローバルトップ50を見てみます※1

50位のTyla『Water』は、調査時点におけるSpotifyでの累計再生数が約10億回であるのに対し、『Bling-Bang-Bang-Born』は約4億回となっています。

『Bling-Bang-Bang-Born』が他の日本発音楽と比べ海外でも多く聴かれたのは確かですが、グローバル全体で見ると存在感はまだ薄いと言えます。

ちなみに、2024年のSpotify日本再生数ランキングにおける2位は、Mrs. GREEN APPLEの『ライラック』で、TVアニメ『忘却バッテリー』のオープニング曲です。

調査時点におけるSpotifyでの累計再生数は約1.3億回と健闘しているものの、グローバル水準で見れば存在感は限定的であることがわかると思います。

「音楽は言語を超える」という言葉があります。

私は、17年間ドラムを続けていますが、この言葉はミクロな視点で見ると言い得て妙だと感じます。以前マイアミへ海外出張した際に訪れたジャズバーにて、隣に座る黒人の少年と音楽の話になり、彼から私が知らなかった邦人アーティストの曲を教えてもらいました。

その曲に感動した私は、日本でそのアーティストのコピーバンドを結成して演奏しました。このように日本の曲を米国から「逆輸入」できたのも、音楽が言語を超えることができるからだと信じています。

ただ、ミクロとマクロだと見える景色が全く違うのも事実です。

以下は、Spotifyのユーザー数上位10カ国における、調査時点でのトップソング50にランクインした曲の重なりを分析したヒートマップです。

例えば、「Global x US」の欄が0.43となっています。これは、グローバルのトップソング50に含まれる曲のうち43%が、USのトップソング50に含まれるという意味です。重複率が比較的高い欄(10%以上)は赤く、低い欄は青く色付けをしています。

これを見ると、赤く塗られている欄のほとんどは英語を公用語とする国であることがわかります。

そして、自国独自の言語を公用語としているそれ以外の国は、ほとんどの欄が青くなっています。ここからわかることは、「各国で多く聴かれる曲は、言語の制約を強く受ける」ということです。

日本では日本語の曲がよく聴かれ、フランスではフランス語の曲がよく聴かれ、米国やイギリス、カナダでは英語の曲がよく聴かれます。

この事実を踏まえると、間違いなく存在する言語の壁を超えて世界に広がり始めているアニメソングの凄さを再認識することができます。

同時に、字幕や吹替が一般化している映画や、非言語でコミュニケーションが可能なゲームと比べると、音楽がグローバルへ進出することの構造的な難しさも強く感じます。

新規参入が難しくなるゲーム

2023年のゲーム市場規模は約29.5兆円に達しており、音楽(約3兆円)や映画(約13兆円)と比べても、圧倒的に大きな産業であることがわかります。

前年度の2022年は26.9兆円だったため、安定的な成長を続けており、今後もこの拡大傾向は継続すると見込まれています。

一方で、近年では新規参入のハードルが急激に上がっているという現実もあります。その大きな要因が、ライブサービスゲームの台頭です。

ライブサービスゲームとは、従来の「買い切り型」のゲームとは異なり、定期的なアップデートやイベント、追加コンテンツの提供を通じて、長期間にわたりプレイヤーを引きつけ続ける運営型のゲームを指します。

PC・コンソールゲームにおいては、2023年時点で、わずか19のゲームがプレイ時間の60%を占め、33のゲームが75%を占めています※2

モバイルゲームも同様で、ここ数年間は『ディズニーツムツム』『モンスターストライク』『Pokémon GO』『パズル&ドラゴンズ』『Fate/Grand Order』の5タイトルがモバイルゲームのトップ10から落ちたことはありません。

トップ500に一度でもランクインしたゲーム数は2020年は176本、2021年は159本、2022年は135本と減少傾向にあります※3

このように厳しい市場環境ですが、一つの参入戦略として機能しているのは「有名IPのゲーム展開」です。例えば、Hasbroが保有するモノポリーをモバイルゲーム化した『Monopoly Go!』は、リリースから7ヶ月で1億回以上ダウンロードされ、約1500億円稼ぎ出しました。これはモバイルゲーム史上最速の記録です。

出典:PocketGamer.biz

また、ワーナー・ブラザーズ・ゲームがパブリッシュしたホグワーツレガシーは、発売から2週間で1200万本を突破し、売上高は約1140億円となりました。その後も勢いは止まらず、2023年12月末時点で世界累計販売本数が2200万本を突破するという大成功を収めています。

ここから、アニメをゲーム化することは、この厳しい市場環境においてもグローバルで機能しうる戦略であると言えます。

しかし、開発費も高騰し続ける中でゲームへの参入はハイリスクであることには変わりなく、ゲーム化に踏み切れるアニメは「覇権作品やレジェンダリータイトルの中でも、さらにほんの一握りである」という事実は重要です。

実際に、2021年から2023年の間にゲーム化されたアニメ作品のMyAnimeListにおける人気ランキングを確認すると、その大半がトップ100に入っており、さらにその中の約半数はトップ10に名を連ねるレジェンダリータイトルとなっています。

ランキング圏外の作品であっても、『ガンダム』や『遊戯王』のように、国内で根強いファンを抱えるタイトルのみが選ばれており、作品選定におけるハードルの高さがうかがえます。

また、ライブサービスゲームはリリースして終わりではなく、ユーザーを維持・拡大するための運営が肝心です。アニメを原作とするライブサービスゲームは、原作やアニメのユーザー基盤を有しているため、初動のダウンロード数は非常に好調な場合が多いです。

しかし、リリース後にユーザーの関心を惹きつけるコンテンツやキャンペーンを運営することに苦労し、ユーザーが離れていってしまうケースが多いのも事実です。実際、2021年および2022年にリリースされたアニメ原作のライブサービスゲームのうち、約4割は2〜3年以内にサービスを終了しています。

このように、そもそも非常に競争が激しい市場環境において、ゲーム化されるアニメ作品は覇権作品やレジェンダリータイトルの中でもさらに一握りに限られているものの、リリース後の運営に苦戦し、2〜3年でサービス終了に至る例が少なくないというのが、アニメを原作とするライブサービスゲーム市場の現状です。

※1 kworb

※2 Newzoo

※3 YahooNews

越境ECヒットランキング越境ECヒットランキング

私自身、アニメフィギュアを含む物理グッズの越境ECに関わっていたことがありますが、今回のデータはその時の現場感覚とも一致しています。

当時の売上の柱は『ワンピース』や『僕のヒーローアカデミア』といったレジェンダリータイトルでしたが、売上全体の半数弱は比較的マニアックなアニメが占めており、熱量の高いファンに支えられていると感じていました。

このように、後述のゲーム・音楽と比べると海外でも広く機会が開かれているアニメグッズですが、ビジネスモデルに構造的な課題があります。

それは、物理グッズの商流、つまりグッズのライセンシング体制です。

通常、アニメグッズのライセンスは地域や国ごとに付与されるため、人気作品ほど世界各国からの申請が多く、製作委員会単独では対応しきれなくなります。

そのため、IPエージェントと呼ばれる仲介企業が間に入り、ライセンス管理や契約交渉、商品化許諾などを行います。例えば、中国や台湾、東南アジアでは『MUSE』や『MediaLink』という企業が広く知られています。

IPエージェントは、特定エリアにおいて、商慣習の理解や企業ネットワークなどの専門性を有しています。そのため、該当エリアに知見を持たない製作委員会にとっては、IPエージェントにライセンシング業務を委託することで、業務負担を軽減できるだけでなく、アニメ自体をより効果的に宣伝できるというメリットがあります。

同時に、「1. 中間マージンが発生し製作委員会へ入る収益が減少すること」「2. 最終的な商品発売までのリードタイムが長期化してしまうこと」「3. エージェント側のリソースにも制限があるため、アニメの人気度によってサポート体制に濃淡が出てしまうこと」などのデメリットも多く存在します。

グッズはアニメ関連市場でも市場規模が最も大きく、日常生活でも触れる機会が多いため、ファンの育成に特に最適なメディアです。

アニメを本格的にグローバル展開していくにあたり、これらのデメリットはこれまで以上に大きくビジネスに影響してくる可能性があります。

音楽は言葉の壁を超えない、ただし、アニメソングならば可能性がある

アニメソングのグローバル展開においては、ここ数年で明るい話題が続いています。たとえば、2023年には『【推しの子】』のオープニング曲であるYOASOBIの『Idol』が、Billboard Global 200の年間チャートにおいて日本人アーティストとして初めてランクイン(42位)するという快挙を達成しています。

また、2024年にNetflixオリジナルアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』のオープニング曲として起用されたCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、Billboard Global 200の週間チャートで8位を記録しました。

こうした成功例は、アニメを媒介として日本の音楽が従来以上に海外へと届いていることを示しています。しかし、れらの成功例が「アニメソング全体のグローバル進出」を意味するわけではない点には注意が必要です。

2024年のSpotify再生数グローバルトップ50を見てみます※1

50位のTyla『Water』は、調査時点におけるSpotifyでの累計再生数が約10億回であるのに対し、『Bling-Bang-Bang-Born』は約4億回となっています。

グローバルでのスポティファイ再生回数ランキング。『Bling-Bang-Bang-Born』でもまだ存在感は薄い。グローバルでのスポティファイ再生回数ランキング。『Bling-Bang-Bang-Born』でもまだ存在感は薄い。

『Bling-Bang-Bang-Born』が他の日本発音楽と比べ海外でも多く聴かれたのは確かですが、グローバル全体で見ると存在感はまだ薄いと言えます。

ちなみに、2024年のSpotify日本再生数ランキングにおける2位は、Mrs. GREEN APPLEの『ライラック』で、TVアニメ『忘却バッテリー』のオープニング曲です。

調査時点におけるSpotifyでの累計再生数は約1.3億回と健闘しているものの、グローバル水準で見れば存在感は限定的であることがわかると思います。

「音楽は言語を超える」という言葉があります。

私は、17年間ドラムを続けていますが、この言葉はミクロな視点で見ると言い得て妙だと感じます。以前マイアミへ海外出張した際に訪れたジャズバーにて、隣に座る黒人の少年と音楽の話になり、彼から私が知らなかった邦人アーティストの曲を教えてもらいました。

その曲に感動した私は、日本でそのアーティストのコピーバンドを結成して演奏しました。このように日本の曲を米国から「逆輸入」できたのも、音楽が言語を超えることができるからだと信じています。

ただ、ミクロとマクロだと見える景色が全く違うのも事実です。

以下は、Spotifyのユーザー数上位10カ国における、調査時点でのトップソング50にランクインした曲の重なりを分析したヒートマップです。

例えば、「Global x US」の欄が0.43となっています。これは、グローバルのトップソング50に含まれる曲のうち43%が、USのトップソング50に含まれるという意味です。重複率が比較的高い欄(10%以上)は赤く、低い欄は青く色付けをしています。

言語の制約を受ける音楽言語の制約を受ける音楽

これを見ると、赤く塗られている欄のほとんどは英語を公用語とする国であることがわかります。

そして、自国独自の言語を公用語としているそれ以外の国は、ほとんどの欄が青くなっています。ここからわかることは、「各国で多く聴かれる曲は、言語の制約を強く受ける」ということです。

日本では日本語の曲がよく聴かれ、フランスではフランス語の曲がよく聴かれ、米国やイギリス、カナダでは英語の曲がよく聴かれます。

この事実を踏まえると、間違いなく存在する言語の壁を超えて世界に広がり始めているアニメソングの凄さを再認識することができます。

同時に、字幕や吹替が一般化している映画や、非言語でコミュニケーションが可能なゲームと比べると、音楽がグローバルへ進出することの構造的な難しさも強く感じます。

新規参入が難しくなるゲーム

2023年のゲーム市場規模は約29.5兆円に達しており、音楽(約3兆円)や映画(約13兆円)と比べても、圧倒的に大きな産業であることがわかります。

前年度の2022年は26.9兆円だったため、安定的な成長を続けており、今後もこの拡大傾向は継続すると見込まれています。

一方で、近年では新規参入のハードルが急激に上がっているという現実もあります。その大きな要因が、ライブサービスゲームの台頭です。

ライブサービスゲームとは、従来の「買い切り型」のゲームとは異なり、定期的なアップデートやイベント、追加コンテンツの提供を通じて、長期間にわたりプレイヤーを引きつけ続ける運営型のゲームを指します。

PC・コンソールゲームにおいては、2023年時点で、わずか19のゲームがプレイ時間の60%を占め、33のゲームが75%を占めています※2

モバイルゲームも同様で、ここ数年間は『ディズニーツムツム』『モンスターストライク』『Pokémon GO』『パズル&ドラゴンズ』『Fate/Grand Order』の5タイトルがモバイルゲームのトップ10から落ちたことはありません。

トップ500に一度でもランクインしたゲーム数は2020年は176本、2021年は159本、2022年は135本と減少傾向にあります※3

このように厳しい市場環境ですが、一つの参入戦略として機能しているのは「有名IPのゲーム展開」です。例えば、Hasbroが保有するモノポリーをモバイルゲーム化した『Monopoly Go!』は、リリースから7ヶ月で1億回以上ダウンロードされ、約1500億円稼ぎ出しました。これはモバイルゲーム史上最速の記録です。

有名ボードゲーム「モノポリー」もゲームになっている有名ボードゲーム「モノポリー」もゲームになっている

また、ワーナー・ブラザーズ・ゲームがパブリッシュしたホグワーツレガシーは、発売から2週間で1200万本を突破し、売上高は約1140億円となりました。その後も勢いは止まらず、2023年12月末時点で世界累計販売本数が2200万本を突破するという大成功を収めています。

ここから、アニメをゲーム化することは、この厳しい市場環境においてもグローバルで機能しうる戦略であると言えます。

しかし、開発費も高騰し続ける中でゲームへの参入はハイリスクであることには変わりなく、ゲーム化に踏み切れるアニメは「覇権作品やレジェンダリータイトルの中でも、さらにほんの一握りである」という事実は重要です。

実際に、2021年から2023年の間にゲーム化されたアニメ作品のMyAnimeListにおける人気ランキングを確認すると、その大半がトップ100に入っており、さらにその中の約半数はトップ10に名を連ねるレジェンダリータイトルとなっています。

ランキング圏外の作品であっても、『ガンダム』や『遊戯王』のように、国内で根強いファンを抱えるタイトルのみが選ばれており、作品選定におけるハードルの高さがうかがえます。

ゲームとアニメの人気の関係ゲームとアニメの人気の関係

また、ライブサービスゲームはリリースして終わりではなく、ユーザーを維持・拡大するための運営が肝心です。アニメを原作とするライブサービスゲームは、原作やアニメのユーザー基盤を有しているため、初動のダウンロード数は非常に好調な場合が多いです。

しかし、リリース後にユーザーの関心を惹きつけるコンテンツやキャンペーンを運営することに苦労し、ユーザーが離れていってしまうケースが多いのも事実です。実際、2021年および2022年にリリースされたアニメ原作のライブサービスゲームのうち、約4割は2〜3年以内にサービスを終了しています。

次々と仕掛けが必要なゲーム、生き残りは簡単ではない次々と仕掛けが必要なゲーム、生き残りは簡単ではない

このように、そもそも非常に競争が激しい市場環境において、ゲーム化されるアニメ作品は覇権作品やレジェンダリータイトルの中でもさらに一握りに限られているものの、リリース後の運営に苦戦し、2〜3年でサービス終了に至る例が少なくないというのが、アニメを原作とするライブサービスゲーム市場の現状です。

※1 kworb

※2 Newzoo

※3 YahooNews

(このコラムは、尾形拓海さんによるハフポスト・オピニオンへの寄稿です。内容は必ずしもハフポスト日本版編集部やBuzzFeed Japanの意見を反映するものではありません)

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Source: HuffPost