05.24
ドンキの「全身長向け自転車」が半年で2500台突破!⇒135〜180cmまで乗れて買い替え不要。開発背景を聞いた
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ドン・キホーテのオリジナルブランド「情熱価格」から発売されている自転車「ラクノリ」(税込2万5278 円)の売れ行きが好調だ。2024年8月末の発売から約半年で、2500台以上が販売されている。
自転車は、身長にあわせて適したサイズを選ぶことが推奨されている。そのため、子どもがいる家庭では、小学生から高校生の間に数回買い替えなければならず、出費がかさみがちだ。
一方、ドンキの「ラクノリ」は、サドル下のフレームサイズを35cmまで下げることで、135〜180cmまで幅広い身長に対応できるように設計されている。普段は子どもが使いながら、サドルの位置を変え、大人も乗る…と、世代を問わず一台をシェアすることも可能だ。
開発を手掛けた渡邊啓(あきら)さんに開発背景や機能・デザインの特徴、今後の展開について話を聞いた。
小柄な女性の“悩み”を反映した
一般的な26インチの自転車は、身長170cmまでの成人をターゲットに設計されている。しかし、小学校高学年の子どもや小柄な女性は足が地面に届かないため、26インチ以下の子ども向け自転車に乗らざるを得ない。
ただ、成人した女性にとって「子ども向けのデザインは使いにくい」という声も少なくない。このことに対し、ドン・キホーテの自転車商品開発チームは、問題意識を持っていた。
そこで渡邊さんは「全ての人が安全かつ快適に自転車に乗れること」をテーマに、従来の枠にとらわれない自転車の開発に着手した。最も大きな課題は、サドルの最低地上高を限界まで下げる設計だった。メーカーとの打ち合わせや試行錯誤を重ね、従来のフレーム設計から大幅な改良を行ったという。
「従来のフレームではサドル高が42cm程度でしたが、サドルが車体に干渉しない範囲で限界まで下げられるよう、わずかながらサイズを調整しました。そして限界値を追求した結果、35cmという絶妙なラインに到達できました」
サドル下のフレームサイズを一般的なものから約70㎜短い350㎜にしたことで、サドルの位置をギリギリまで低く設定できるまた、乗りやすさを考慮し、従来の自転車にはあまり見られないフレームのカーブも採用。このフレームにより、乗るときの動作がスムーズになり、足の位置やハンドルとバランスを取りやすくなっている。
どの年代も使いやすい“くすみカラー”を採用
開発するうえで機能面以外に、デザイン面にも強くこだわった。
さまざまな世代の人が使いやすいユニセックスカラーとして、くすんだブラウン、グレー、グリーンの3色展開となっている。通勤、買い物などシーンを問わずに乗れるシンプルなデザインが評価されており、渡邊さんは「店舗ではどのカラーも均等に売れています」と話す。
写真はブラウン2万円台のお手頃価格が好調の要因に
2024年9月の発売開始と同時に注目を集めたラクノリは、現在約230店舗で展開。特に30~40代の女性から高い支持を得ており、従来の自転車市場とは異なる新たな顧客層を開拓している。
販売面だけでなく、店頭でのプロモーションにも力が入れられており、専用のポップやパッケージを通して「長く乗れるコスパの良い自転車」というメッセージを伝えている。
「『調整をすれば、子どもの身長が高くなっても買い替える必要がない』という訴求が大人の女性だけでなく、お子さんのいる家族にも刺さったのではないでしょうか」(渡邊さん)
また、従来の電動自転車など「情熱価格」商品と比較しても、価格帯は2万円台に抑えられており、手頃な価格と高い機能性を両立している点も好評な要因の一つだ。
次世代モデル「ラクノリプラス」も登場
2025年3月15日には「ラクノリ」の好評を受け、上位モデル「ラクノリプラス」(税込3万778 円)が数量限定で発売された。
「ラクノリプラス」はネイビーとグレージュの2色。写真はグレージュ従来モデルの基本コンセプトを踏襲しつつ、さらに7つの改善点を反映している。具体的には、スペアキー2本から4本に増やして家族でシェアできるようにしたり、長く乗れるようサドルやグリップを肉厚のものに変更されたりなど、細部にわたるアップグレードが施された。
「ラクノリプラスは3~4月の間に約600台を販売し、ほぼ想定通りの売れ行きとなっています。ブラックの希望が多かったため、次回の生産時には、できる限り要望に応えたいと考えています」(渡邊さん)
購入者の声を反映し、スペアキーの数を2つから4つに今後はクロスバイクや電動自転車など、「ラクノリ」のシリーズ展開を検討している。社内では「自転車市場は今後、少子高齢化の影響もあり、販売台数自体は大きく伸びないかもしれない」との意見もあるが、渡邊さんは「価格競争だけに頼らず、独自性を打ち出すことで、既存メーカーやナショナルブランドとの差別化を図っていきたい」と話す。
「ラクノリが好調なのは、単なる機能面だけでなく、デザインや全体のバランスが消費者にしっかり伝わっているからだと考えています。今後は、さらにラインナップを充実させ、既存商品の改良を進め、市場のニーズに柔軟に応えていきたいです」(渡邊さん)
(取材・執筆/橋本岬、編集/荘司結有)
Source: HuffPost




