05.17
「推し活」に煽られ過ぎず、でも楽しむために。著作権、SNSトラブル、お金の話。大人も読みたいガイドブックがこれだ。
「推し」は人生の光であるーー。
筆者も、そう自信を持って言い切れる側の人間だ。「推し」という言葉が誕生するよりもはるか昔から、あれこれと好きな対象を追いかけ、「推し」によって誕生した人間関係も多い。
「推し活」は間違いなく楽しい。しかし、最近はその名を冠しながら、依存心や競争心を利用して多額の消費を促そうとするなど、度を超えた手法も目立つようになった。10代にもその文化が浸透しているとなると、どうも自分もそれに加担しているような罪の感情さえ抱く。
この相反する気持ちにピッタリの本が最近発売された。「推し活」を楽しむという前提からは外れず、しかし、どう付き合っていくか。それを指南する子ども向けのガイドブック。
オタク4人組ユニット「劇団雌猫」の最新作『毎日がもっとキラキラする! はじめての推し活』(高橋書店)だ。一部の章では、弁護士の松下真由美さんが監修している。現代の子どもにとって、もしかしたら大人にとっても欠かせないこの本が生まれた背景について「劇団雌猫」のひらりささん、もぐもぐさんに聞いた。
『毎日がもっとキラキラする! はじめての推し活』皆さんは具体的にこれまで「推し活」でどんな幸せを得てきたと感じておられますか?また、現代で「推し活」が盛んになっている理由はなんだと思いますか?
ひらりさ:私たちが子供だった頃、「推し活」という言葉はなかったですよね。ただ、好きなコンテンツやアイドルを追いかけるために遠い場所に出かけたり、友達をつくったり……する経験は、何度もしてきました。
劇団雌猫では『世界が広がる推し活英語』という本も出していますが、「世界が広がる」というのが、推し活の与えてくれるものの一つだと思います。
もぐもぐ:「世界が広がる」は本当にその通りだと思います! 私は大人になってからアイドルや舞台にハマった“後天的”なタイプなのですが、何かを好きになったからこそ、得られた経験がたくさんありますし、趣味を通して学校や会社以外で多くの友人ができたのも人生にプラスになっています。大人になってから友達をつくるのって案外難しいですもんね。
新しい扉を開いてくれるような、きっかけをくれるようなワクワク感が魅力ではないでしょうか。
著作権や転売、課金など具体的に踏み込んだトラブル事例を対象にした章もあります。この項目は大人でも知っておくべきと思うと共に、知らない人も多そうな内容がふんだんに盛り込まれているものでした。この項目を入れた意図を教えてください。
弁護士監修の項目もひらりさ:先ほどの話ともつながりますが、世界が広がって、行く場所や出会う場所が増えたり、お金を使ったりすることは、そのぶんリスクを招くこともありますよね。
私たちの頃だったら、「とりあえず失敗して学ぶ」という選択肢もあったと思うんです。でも今はSNSが発達して、言動がすぐに拡散されますし、個人も容易に特定されるようになっています。そうなると、一度失敗した時のリスクの大きさもとてつもないですよね。そうした時代の変化を見てきたからこそ、「推し活の注意すべき点」はしっかり伝える本にすべきと思ったんです。
もぐもぐ:私も幼い子どもがいるのですが、親としては「無駄遣いが加速しそう」「SNSでトラブルに巻き込まれそう」などと距離を取りたくなる気持ちも正直自然だと思います。でも、推し活で得られたものも多い身としては、子どもだからダメ! と反論の余地なくつっぱねるのも、という気持ちもあって。
自分が子どもの頃のことを思い出しても親に一方的にダメ! と言われても納得せずに隠れてやっていたと思うし……。親に黙って行動して、結果的に何か事件に巻き込まれたらその方が問題ですよね。
この本を真ん中に置いて親子で会話することで、ありえるトラブルを冷静に予習できるというか、「今はここまではOK」「こういうことはやめようね、気をつけようね」と建設的なコミュニケーションができればいいなと思っています。
子どもを対象に「推し活」のガイドブックを出すという本企画が持ち上がったのはなぜでしょうか?
ひらりさ:これはもう、高橋書店の担当編集さんが、現在のコンセプトそのままのご依頼をくださったんです。劇団雌猫は前述の『世界が広がる推し活英語』や、先日コミカライズした『一生楽しく浪費するためのお金の話』など、専門家の人の監修も交えながら、推し活に役立つ知識が学べる本を色々出してきました。その流れとして自然と、生まれた企画かなと思います。
ただ、「推し活の闇」みたいなニュースがやたら増えているじゃないですか。だからこそ、堅苦しくルールやマナーを伝える本というよりは、「推し活の楽しさ」を膨らませるような本にしたいと、見せ方や構成などは、かなり劇団雌猫の方で意見を言わせてもらいました。
もぐもぐ:そうですね。自分たちもオタクだからこそ「推し活って楽しいよね、わかるよ!」という仲間意識のようなものをベースにしつつ、親でも先生でもないからこそ伝えられる「先輩」目線のアドバイス、というイメージで内容を検討しました。
せっかくなら元気に楽しく、持続可能に推し活を楽しんでほしい。そのためには、無理しない、人と比べない、普段の生活とうまくバランスをとる、という意識はとても大事だと思うので。大人でものめり込みすぎると忘れてしまいがちなので、偉そうなことは言えないのですが!
主人公の「チヒロ」は小学6年生です。想定読者は小学生でしょうか?
ひらりさ:対象となるのは、本の中に登場するチヒロと同じく、「推し活を始めたばかりのお子さん」ですね。それで自然と小学生になった感じですが、世代を問わず、幅広く読んでいただけるといいなと思っています。
もぐもぐ:最近は「ちゃお」「りぼん」「なかよし」のような少女漫画誌でも推し活関連の特集や企画をしていることも多いので、まさにそのあたりの読者層の方に届けばいいなと思っています。お子さんが自ら手に取りたくなるようなかわいい表紙を目指しました。キラッキラにかわいく仕上げていただきました。
私は「推し活」が様々なビジネスに利用されすぎてやや過剰になっているのではないかという点で懸念も感じています。一方で、本書では髪型や手持ちのファッションアイテムで推しに近づけるなどの提案も。こうした情報は意識的に盛り込まれているのでしょうか?
ファンレターの書き方ひらりさ:アニメや漫画、アイドルといったエンターテイメントの市場規模が大きくなる中で、企業側がマーケティング時にファンによる拡散や、推し消費を必須のものとして組み込む傾向は強まっていますよね。
そこで「推し活」という言葉が多用され、消費されているのも事実だと思います。一方でオタクの側もオタクの側で、「お金を使っている方がえらい」「現場に通っている方がえらい」みたいなマウントをとって承認を満たすケースを見かけます。
やりすぎると問題なのはどんな消費行動にも言えること。「自分のペースで推しを推す」ための色々な提案を盛り込むことを意識しました。
もぐもぐ:おっしゃる通り、油断すると大人も子どもも関係なく、推し活という言葉に簡単に煽られてしまう時代ですよね。だからこそ、改めて自分の「好き」に向き合う重要性が増している気もしていて。日々新しい商品やコンテンツが供給される情報の洪水の中で、じゃあ自分は何を一番大事にしたいんだっけ? を考えておくのは、きっとどこかで役に立つと思うんです。
なので、「推し活ガイドブック」的な体裁をとりつつ、実際には「いわゆる推し活的な応援の仕方がすべてではないよ」とも伝えている本でもあるという。
推し活はもはやマーケティングタームなので、時間やお金をかけて消費する行為を指しがちですが、創作やファンアートという手段もあるよ、という章を入れているのもその流れです。
🍬こども向け推し活本、出ます🍬
このたび『毎日がもっとキラキラする!はじめての推し活』(高橋書店)を刊行します🐱
初めて推しができたお子さん、その親御さんに向けて、お金や時間とうまく付き合いながら、推しを応援する方法を提案する一冊です。
🚚4月15日刊行!
👉目次はツリー参照 pic.twitter.com/chC3nC0nu7— 劇団雌猫🐈はじめての推し活本 発売中 (@aku__you) March 21, 2025
友達となかよくなるための声のかけ方や、貯金術・時間の配分など、「推し」を軸にしつつも、生活のための基本的な情報が盛り込まれていました。子どもが生きていくために教えなければいけないことがひと昔前より増えているのではないかと私は感じています。推し活を含めて、今の子どもを取り巻く環境についての変化を皆さんはどう感じていますか?
ひらりさ:推し活固有の問題以前に、「接することができる情報量が多い」「場合によっては偏ってしまう」ということは、平成と令和のかなり大きな違いですよね。さっきもお話ししましたが、失敗した時のリスクも増大していますし。
ただ、全部を親が教え切ることはやはり難しい。リアルな肌感で最新トレンドに触れている、子供世代の方がちゃんと判断できることもあると思うんです。「絶対失敗しないように教える」よりは、最低限のことに合意しながら「失敗した時にケアできる体制を作っておく」意識でいる方がいいのかな、と思いました。難しいですけどね!
もぐもぐ:子どもがこの春小学生になったのですが、毎日Minecraft(マインクラフト)やポケモンのお気に入りのTシャツを選んで着ていて「マイクラ好きな友達できたんだよ~」と話していて、こいつ、やるな!と嬉しかったです(笑)。
推し活なんて言葉ができる前から、そんな風に好きでつながる経験をみなさんしてきたはずですし、警戒しすぎなくてもいい部分もあるのでは。
この本をつくりながらも考えていたことですが、推し活のトラブルも、人間関係のこじれも、「親はわかってくれないから黙っとこう」になってしまう方がかえって危ない気がします。
すべてを理解したり肯定したりできなくても、歩み寄ろうとする姿勢を持っていた方がいいんじゃないかな、と自分でも改めて背筋を伸ばしました。お子さんは敏感に感じ取ってくれるんじゃないでしょうか。
以前、「自分に『推し』が存在しないことをコンプレックスに感じている」という若者と話をしたことがあります。「推しがいない」ことで悩んでいる人が、もしいるとしたら、どう考えていくのがいいでしょうか?
ひらりさ:それは…推し活社会が行きすぎてますね!(笑)推すことは、何かを好きになった時に取る行動の一形態に過ぎないので、推せないことを気にする必要はないと思います。
ただ、みんなが推してるから、推していることがコミュニケーションツールとして便利っていう一面はありますよね。うーん、難しい。推し活をする人も、推し活をしない人も「自分の軸を持つ」ことが大事な世の中なのは間違いないですね。
もぐもぐ:でも気持ちはわかります、なんかみんなずっと楽しそう、羨ましいなってなるんだと思うな(笑)。
推しを無理やりつくろうと思わなくてもいいけれど、好きなものがたくさんある方が人生は豊かになるとは思うので、せっかくなら周りの友人がハマっているものを教えてもらったり、少し興味はあったけど今まで踏み出していなかったことにチャレンジしてみたりはどうでしょう?
私の60代の両親は、去年初めてロックフェスに参加して驚くほど楽しんでいました。そこで新しく知った若いバンドを最近よく聞いているらしいです。まず一歩踏み出してみると、さらに先が広がるかも。
Source: HuffPost




