05.10
製薬企業から見た「日本社会の4つの課題」とは?ノバルティスが「イノベーションエコシステム」を推進
少子高齢化や社会保障費の増大などが急速に進む現代、医療や健康との向き合い方にも変化が求められている。
そうした中、4月中旬、スイス・バーゼルに本社を置くグローバル製薬企業ノバルティスの日本法人で、医療用医薬品の開発・製造・販売を行うノバルティスファーマがメディア向け発表会を開催した。
同社の日本国内での取り組みや今後の事業戦略、ウェルネスにおける持続可能なイノベーションエコシステムについて聞いた。
製薬企業から見た、日本社会の4つの課題
今回のイベントは、同社代表取締役社長のジョンポール・プリシーノさんが2024年11月の就任後、初めて開催した発表会だ。
同社は2019年から現在に至るまで、大幅に売上高および利益率を伸ばしている。研究部門には1万8000人以上の従業員が属し、年間の研究開発支出額には93億ドル(約1兆4千415億円、1ドル=155円計算)を投じているという(2024年)。
また、日本を重点戦略地域(米国、日本、ドイツ、中国)と位置付けており、これまで基礎研究から医療アクセスの向上のフェーズまで、日本国内でさまざまな取り組みを実施してきた。
最近では、2023年11月発表の放射性リガンド療法医薬品の生産力強化(※1)を目的とする篠山工場への1億ドル(約155億円)の投資により、日本国内で製造された最新治療薬を日本の患者に提供できる仕組みを大きく前進させた。また、今年3月には循環器・腎・代謝疾患、免疫疾患(イムノロジー)、中枢神経系疾患、がん(オンコロジー)領域における、創薬のインパクトを加速する「クリニカル トランスレーショナルリサーチ ハブ」を設置するなど、革新的医薬品への医療アクセスと創薬力の強化に対する新たな取り組みも開始している。
こうした日本国内での取り組みについて、プリシーノさんは「我々の『日本の創薬をしっかりサポートしていきたい』という気持ちの表れだと自負しています。そしてこれは、弊社の取り組みのほんの一歩にすぎません」とコメントした。
ノバルティスファーマ代表取締役社長 ジョンポール・プリシーノさんプリシーノさんは今後、さらに注力して向き合うべき日本社会の課題として「高齢化社会」「社会保障費の増大」「ドラッグラグとドラッグロス」「イノベーションへの公平なアクセス」の4つを挙げた。
特に高齢化については「世界的にも異例のスピードで進行しており、国内総人口の約30%を65歳以上が占めています。健康な人生をより長く生きる上でのサポートが欠かせない現状です」と語り、その重要性を強調した。
また、創薬の意義に関しては「承認を得て終わりではなく、実際に患者に届ける仕組みまで作らないといけません」とコメントし、基礎研究、研究開発、製品化、安定供給、アクセスのすべてのフェーズに注力することで、日本のイノベーションエコシステムに貢献する姿勢を改めて明示した。
さらに「事業の成長により、日本の社会、日本の患者さんに貢献することができるからこそ、これからも成長の道を歩み続けたいです」と事業に寄せる思いを語った。
※1:がん細胞に特異的に結合する「リガンド(分子)」に、放射性同位体を結合させた医薬品
「アンメットニーズ」に応え、創薬のインパクトを加速する
続いてキーワードとして挙がったのは、希少疾患や小児用医薬品などの「アンメットニーズ(患者が望んでいるが、まだ十分に対応されていない課題)」だ。
同社は過去5年間に、日本で11種類の新薬を含む32件の医薬品の承認を取得し、15種類の希少疾病と14種類の小児の適応症例を取得している。また、23種の有効成分と43個の製品において新薬創出加算(※2)を取得している。現在は約40の臨床開発プログラムが進行しており、5件が申請中、21件が第3相臨床試験段階にあるという。
日本政府には、イノベーションエコシステムの構築を後押しする「持続的かつ予測可能な政策の実現」が求められると説明した。薬価制度改革については「イノベーションが対価を受けるような形にすべきだと考えます」と考えを示した。また「新薬創出等加算など、革新的医薬品に対するサポートの姿勢を日本からいただいていると思う」と語り、アンメットニーズのある領域の創薬では、追い風の状態にあると説明した。
こうした背景から、プリシーノさんは2030年に向けて、自社の医薬品により治療を受ける国内患者数を現在の約3倍である900万人へと拡大させる目標を掲げた。最後に「日本の人々がより健康に暮らせる社会の実現に向け、ヘルスケアの大きな変革に取り組むことを約束します」と語り、発表会を締め括った。
※2:新薬の価格が過度に引き下げられないように保護する仕組み
Source: HuffPost




