04.28
女性の更年期×睡眠の“なんとなく不調”に寄り添う。パラマウントベッドの法人向けフェムテック支援とは
なんとなく眠れない。なんとなくつらい。しかし、原因がわからない。更年期世代の女性たちのなかには、そんな“なんとなくの不調”を抱えながら働いている人が少なくない。
企業に勤務する約3000万人の女性のうち、およそ4人に1人が更年期世代とされている。ただし、更年期の症状や不調の出方には個人差が大きく、「病気とは言えない」「人に相談しづらい」といった理由から、見過ごされがちなのが実情だ。
では、こうした見えにくい体調の変化に対して、企業はどのように寄り添うべきなのか。
睡眠のプロフェッショナルであるパラマウントベッド株式会社と更年期世代の顧客を多く抱える株式会社陽と人が共同開発した、法人向けフェムテックサービス「伴走支援プログラム」に注目し、取材した。
更年期と睡眠に向き合う、新たな企業支援
パラマウントベッドは、2023年から陽と人とともに、更年期世代の女性社員とその職場をサポートする法人向けサービスを共同開発。
数社の企業とともに、そこで働く更年期女性の不調改善と職場での男性のサポート体制構築について実証事業を行ってきた。鍵となったのは、「更年期×睡眠」というこれまで見過ごされがちだった視点と、行動変容を促す実践的なアプローチだ。
なぜこのプログラムが必要とされたのか。そして、どのような変化をもたらしたのか。
開発に携わったパラマウントベッドの経営企画本部 バリュークリエイトグループ 事業開発チーム マネージャー・大槻朋子さんと、陽と人の代表取締役・小林味愛さんに、立ち上げの背景や実施内容について話を聞いた。
パラマウントベッドの大槻朋子さん(右)と、陽と人の小林味愛さん――プログラムを立ち上げたきっかけを教えてください。
大槻さん:遡ると2年ほど前から、社内では女性の健康、その中でも睡眠にも影響を及ぼす「更年期」にしっかりと向き合うサービスをという話が持ち上がりました。対象者のリサーチが難しい事業ですが、ご縁があって「陽と人」の小林さんと出会い、本格的にスタートできました。
小林さん:私たち陽と人ではデリケートゾーンケアの製品を展開しています。その関係で更年期世代の顧客が多く、特に、睡眠に関するお悩みを聞くことが圧倒的に多かったんです。しかし、私たちは眠りの専門家ではないので、その悩みにお答えできないという現状がありました。
商品の販売以外にも、ヘルスリテラシーを高めるために企業や自治体向けの研修や対話型ワークショップを行ってきましたが、意識や考え方が変わっても、実際の行動に結びつけるのは簡単ではありませんでした。そこで、行動変容を促すために、更年期の悩みの中でも特に深刻な睡眠問題にアプローチし、企業に対しても積極的なアクションを促すプログラムを作ろうと考え、スタートしました。
――更年期との向き合い方には、どのような難しさがありますか?
小林さん:更年期の症状が強くなるかどうかは、女性の体の仕組みの変化、個人の気質、そして取り巻く環境の3つが大きな要因になります。この世代は家庭のことや介護なども重なり、特に職場の心理的ストレスが症状を悪化させる原因の1つとして挙げられます。
また、更年期世代はちょうど管理職に就く年代でもあり、上司や部下に相談することも難しい立場。企業側の問題意識がまだ薄く、対応が追いついていない現実もあります。
睡眠の改善を援助しながら、職場環境やストレス管理も含めた総合的な対応が重要だと考えています。
大槻さん:「更年期」という言葉自体は広まりつつありますが、当事者だけが対応しようとしても限界があります。一般には伝わりにくいテーマだからこそ、働く人向けに企業単位で理解を深めていく必要がある。そこで、法人向けサービスとしての展開に踏み切りました。
――実際のプログラム内容を教えてください。
大槻さん:今回の取り組みでは、各社の状況に応じて5カ月〜約半年間のプログラムを実施しました。
最初に、女性の当事者向けには女性ホルモンなど更年期の身体的・精神的変化についての研修を行います。あわせて、管理職や同僚を対象にした研修では、女性の健康課題に対する職場での関わり方を考えるワークショップも行っています。
そして、その後は希望者が「伴走プログラム」に参加します。プログラムではパラマウントベッドの「アクティブスリープアナライザー」を貸し出し、自宅で1カ月間、睡眠を測定していただきます。
パラマウントベッドの「アクティブスリープアナライザー」。一般向けに販売もしている。そのデータを元に、分析チームが個別のレポートを作成。専門スタッフと一緒に無理なく日常生活で実践できる改善行動を探っていきます。また、更年期カウンセリングも行います。詳しく症状を聞いて重い方には産婦人科医や睡眠クリニックなどの医療機関を紹介したことも。
データは個別の支援に活かすだけでなく、まとめたものを匿名化して企業の経営層にお届けして、社員の健康状態を把握してもらっています。
――プログラムを実施した結果はいかがでしたか?
大槻さん:統計的にも良い結果が出ました。「アテネ不眠尺度」(WHOが中心となり作成した世界共通の不眠症の判定方法)を使った主観的に「よく眠れたか」を測るデータも改善しましたし、睡眠スコアという客観的なデータでも改善が見られました。また、更年期に関連する指標も良くなり、健康状態によって業務効率が落ちていたという問題についても改善があったんです。
事前と事後の数値を比較しても、全体的に良い結果が出ています。プログラムに参加した方々からも、「非常に良いプログラムだった」と高評価をいただいています。
小林さん:プログラムの大きな特徴は、人と人が直接コミュニケーションを取る点だと思います。専門家が個々の状況に合わせてアドバイスし、その方にとって無理なく改善できる方法を一緒に見つけていくので、効果的に行動を変えられると感じています。最終的には参加者が自分自身で健康管理を行い、より良い生活を実現できるようにサポートすることが目標です。
睡眠状況の改善がデータでも現れている。――パラマウントベッドといえば、医療用ベッドのイメージですが、なぜ女性の健康に注目した事業を始めたのでしょうか?
大槻さん:パラマウントベッドは2024年に新しいブランドメッセージを「WELL-BEING for all beings」と策定しました。医療や介護分野で培ってきた睡眠や健康に関する多くの知見がありますが、それをより幅広い領域で皆さんの健康に還元していきたいと考えています。
眠りをサポートする家庭用のベッド製品も各種ありますが、睡眠の悩みは性別問わず多くの人が抱えているのにもかかわらず、当初購入されるのは男性が多いという現状があります。
もっと女性の健康課題に向き合う必要があるのではと考え、始まったのが私たち「フェムテックチーム」の取り組みでした。
――女性は、自分の健康や不調改善にあまりお金をかけない傾向にあるのでしょうか?
大槻さん:今回カウンセリングの中で気づいたのは「企業向けのプログラムでなければ、自分の健康状態を改善するという意識が持てなかったのでは」という方々がかなりいたことです。
小林さん:なんとなく不調はあるけれど、「耐えるもの」だと思いがち。「この不調は更年期の症状で、改善できるものだと知れただけでも良かった」という方もいました。
大槻さん:以前、女性200名を対象に睡眠や月経に対する健康観の調査を行ったことがあります。「健康ですか?」という質問に対しては多くの方が「健康です」と答えましたが、「月経の悩みがありますか?」と聞いたところ、「悩みがある」と回答する方が多くいました。
健康だと答えている一方で、実際には悩みを抱えている。悩みが日常に溶け込みすぎて解決できるものとして考えられず、「小脇に抱えて人生を走り抜くものだ」というように認識されているのかもしれません。
例えば更年期障害を改善するホルモン補充療法(HRT)を知っていれば悩みが解決できたかもしれないのに、そこまで辿り着かない方も多くいらっしゃいるように感じます。
これは睡眠も同様で、なんらかの悩みがあるけど、解決できると思っていない。一度自分に合った睡眠を体験すると生活が変わると思うので、そうした体験をぜひどこかでしてほしいと思っています。
――このプログラムによって、どのような変化を目指していますか?
大槻さん:今回の法人向けプログラムは、主に40代〜50代の女性を対象としていますが、「女性管理職を増やすため」ということだけが目的ではありません。もちろん、結果的に管理職比率の向上が達成されることには大きな意味があると思いますが、それ以上に私たちが大切にしたいのは、働くすべての世代が自分の生活を途切れさせることなく続けていけるようにサポートしていくことです。
これまでの人生やキャリアを一歩ずつ積み重ねてきた中で、ある日突然、体の不調などによって生活も仕事も一気にストップしてしまう。そういったことが起こらないように、自分自身の心や体に目を向けて、セルフケアの意識を少しずつ変えていくことが必要です。
このプログラムがその入り口となり、日々の暮らしや働き方を持続的に続けていけるためのきっかけになればと考えています。
プログラムをいち早く取り入れた企業は?
実証事業を経て2024年に本格的にサービス化した後、本プログラムをいち早く導入した企業のひとつが、セントラル石油瓦斯株式会社。女性社員の割合や年齢層に注目し、「見過ごされてきた課題」への危機感を持ったことが導入のきっかけだったという。
昨年5月から約半年間のプログラムを実施しての変化について、代表取締役社長・太田晃さんに話を聞いた。
――今回のプログラムを取り入れようと思われたきっかけを教えてください。
太田さん:勉強会で小林さんのお話を聞いたことがきっかけです。昨今女性の活躍が広がる中で、女性と共に働く場面は増えているのにも関わらず、女性の健康課題、特に更年期についての自分の理解は極めて浅いということに気付かされました。
当社の社員は172名、そのうち57名が女性で、更年期とされる年齢層に該当する方も26名います。これは極めて重大だと受け止め、早速研修とプログラムを受けさせていただきました。
パラマウントベッドの大槻朋子さん(左)とセントラル石油瓦斯社長の太田晃さん――女性社員の困りごとについては、研修を行う前はあまり聞こえてこなかったのでしょうか。
太田さん:年に1回、全社員と20〜30分ほどの面談を行っているのですが、そこで更年期の悩みが話題にのぼることは、これまでありませんでした。私自身は全国を回って面談をしているのですが、言いづらいテーマなのだと思います。
実際、同性の同僚には話せても、社長にははばかられる。だからこそ、こうした問題への課題意識が、経営の視点からは抜け落ちてしまっていたのだと思います。これは私だけでなく、多くの男性経営者に共通する状況ではないでしょうか。特に私たち「昭和世代」にとっては、こうした課題に対する理解が浅くなってしまう背景があると思っています。
たとえば、私が若い頃は配偶者が専業主婦という家庭が主流でしたが、今では共働きが当たり前になりつつあります。そうした変化に対する認識が現経営層にはまだ十分に追いついていない部分もある。今後は、ジェンダーに関する課題を正面から捉え、働き方とか社員に対するプログラムの設計を考えていくことが求められると感じています。
――健康と仕事のパフォーマンスの関係について、どのように考えていますか?
太田さん:日頃から強く感じているのは、「健康があってこそ、仕事のパフォーマンスが発揮される」ということです。
私自身は喫煙と飲酒を断ち、食事や運動も意識するようになって心身ともに調子が整ってきたと実感しています。社員に強制するものではありませんが、実体験から言えるのは「心と体が元気であることが、仕事のパフォーマンスにとって最も重要な土台になる」ということ。
社員の健康をどう支えるかという視点は、これからますます重要になると感じています。
社員のリアルな声から見えてきた、研修の手応えと反響
これまで、セントラル石油瓦斯では健康や女性特有の課題を扱う研修は行われてこなかったという。そうしたなかで実施された今回のプログラムは、社員にどのように受け止められたのか。総務人事部 主任・鈴木水菜さんに、現場のリアルな声を聞いた。
セントラル石油瓦斯社長の太田晃さん(左)と総務人事部 主任・鈴木水菜さん――プログラム導入を聞いたとき、どのように思われましたか?
鈴木さん:健康経営やウェルビーイングに関するプログラムは今回が初めてだったこともあり、自分もですし、社員の皆さんに周知した際は驚いた様子でした。研修が始まっても最初は「そんな、自分の健康の話を会社でしてもいいのかな」という戸惑いの雰囲気もありました。しかし、時間が経つにつれて昼休みに「昨日よく寝れたんだよね」といった会話が生まれて、最後は「会社が考えてくれてありがたい」という声も上がっていましたね。
――プログラムを通じて、体調や仕事への影響などはありましたか?
鈴木さん:カウンセリングを通して具体的なアドバイスを受けたことで、生活リズムを見直すきっかけになったという声がありました。多かったのは「土日の夜ふかしをやめようと思った」というもの。無理のない範囲で整えていこうとする意識が、少しずつ芽生えているようです。
更年期の症状が出ている方は今回は少なかったのですが、「自分もいずれそうなるかもしれない」「今のうちに知っておきたい」といった関心の声も増えてきています。次回の研修では、そうしたテーマにも期待が寄せられています。
Source: HuffPost


