2025
04.26

牛丼屋なのにダチョウの美容液?吉野家が“化粧品”を新たに展開する理由。描く「脱・牛丼依存」戦略とは

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「牛丼の吉野家」なのにダチョウの化粧品を本格展開――?

吉野家ホールディングス(HD)のグループ会社「SPEEDIA(スピーディア)」は、オーストリッチすなわちダチョウのオイルを使ったスキンケア商品の本格展開を始めた。商品は、吉野家公式オンラインショップで販売している。

吉野家は2024年8月に、ダチョウの肉をローストビーフ風に調理した「オーストリッチ丼」を一部店舗で提供。ダチョウを牛や豚、鶏に次ぐ「第4の肉」に位置づけ、長期的には経営課題である「牛丼依存」からの脱却を目指す。

なぜダチョウに着目したのか。そして化粧品という他業種に参入した背景とは。株式会社吉野家執行役員の宮之原義人さんに聞いた。

吉野家吉野家

“牛丼依存”経営の脱却を図る“第4の柱”

創業以来、120年以上にわたり「牛丼」を提供してきた吉野家。くさみのない穀物肥育の北米産の牛肉にこだわり、“よしぎゅう”ブランドを守り抜いてきた。

一方、「牛丼一筋」であるがゆえに、牛肉をめぐる情勢に左右され続けてきた。

中でも大きな打撃を受けたのが、2003年にアメリカで起きたBSE(牛海綿状脳症)問題。牛肉の輸入が禁止され、吉野家は04年2月から約2年半、牛丼の通常提供を休止する事態に追い込まれた。

その間、牛丼に代わる定番メニューとして開発されたのが、豚丼や焼き鳥丼など牛以外の畜種を使った丼もの。当時、ダチョウ肉も候補に挙がっていたが、日本では安定調達が難しく、食べ馴染みもないことから、メニュー化は見送られたという。

2004年2月当時、牛丼の販売を休止することが決まった吉野家に行列する人々2004年2月当時、牛丼の販売を休止することが決まった吉野家に行列する人々

現在も牛肉の相場や関税に左右されている牛丼事業。宮之原さんは「絶対的な命題である牛丼の品質を守りながら、事業の持続性を保つには、どのようにリスクを分散されればよいかをずっと考えてきました」と語る。

近年、牛丼に次ぐ“第2の柱”となっている「から揚げ」メニューは、畜種分散の成功例の一つ。そして2015年、吉野家HDは茨城県にあるダチョウ牧場を買収。17年にSPEEDIAの前身となる日本オーストリッチファームが設立され、ダチョウの飼育が設立され、ダチョウの飼育や研究、商品開発を進めてきた。

牛丼屋なのに化粧品事業に参入したワケ

ダチョウ関連事業に参入した背景には、将来的な食料不足への危機感もある。

「世界的な人口増加により、気候変動や資源不足など様々な課題が叫ばれています。“食のインフラ”企業である吉野家HDとしては、食料に用いられる動物の集中化を防ぎ、多様な食材により健康を維持できる選択肢を作っていかなければならないと考えました。現在、研究を進めているオルタナティブミート(植物由来の代替肉)もその一つです」(宮之原さん)

ダチョウは飼料効率に優れており、牛に比べて必要な飼料は3割程度で済むという。また、牛のゲップなどにはメタンガスが多く含まれており、世界における温室効果ガス総排出量の5%を占めると言われている。一方、ダチョウはメタンガスの排出量が少なく、環境に優しい動物として注目されている。

現在、SPEEDIAでは日本最大規模となる約500羽のダチョウを飼育。ただ、産卵率やひなの生存率の低さなど課題もあり、畜産業として成立するレベルにはまだ達していないという。食肉だけでは利益を生みにくいため、研究の副産物である「オイルの美容効果」を活かした化粧品を販売し、その収益で牧場規模を広げていく――というモデルに至ったのだ。

宮之原さんは、スキンケア商品の販路を吉野家公式通販ショップに拡大し、精力的に商品のよさを伝えている宮之原さんは、スキンケア商品の販路を吉野家公式通販ショップに拡大し、精力的に商品のよさを伝えている

ダチョウのオイルにはどんな効果がある?

SPEEDIAの研究によると、ダチョウのオイルは脂肪酸の構成が人間の皮膚に近く、肌への美容成分の浸透を促進させる効果が期待できる。また、健康に役立つとされるオレイン酸、リノレン酸なども含まれているという。

国内ではダチョウのオイルを使った化粧品はあまり見かけないが、南アフリカやベトナムなどダチョウが生息する地域では、オイルをそのまま保湿剤として使っているケースもあるという。

同社は21年、美容成分の浸透効果を高める導入美容液「グラマラスブースターオイル」、保湿クリーム「グラマラスエイジングクリーム」の販売を開始。今年2月には、「モイスチャーマスク」「ハンド&ボディケアミルク」とあわせて、吉野家公式通販ショップでの本格展開をはじめた。

SPEEDIAの全商品。左からモイスチャーマスク、グラマラスエイジングクリーム、グラマラスブースターオイル17ml・50ml、ハンド&ボディケアミルクチューブタイプ・ポンプタイプSPEEDIAの全商品。左からモイスチャーマスク、グラマラスエイジングクリーム、グラマラスブースターオイル17ml・50ml、ハンド&ボディケアミルクチューブタイプ・ポンプタイプ

いずれの商品にもオーストリッチオイルを配合。ブースターオイル、エイジングクリームはベタつきが少なく、サラッとしていて肌なじみがよいのが特徴だ。また、「モイスチャーマスク」は、「美肌の湯」で有名な山口県・湯田温泉の温泉水をかけ合わせた。

そして「ハンド&ボディミルク」は、店舗で働く従業員の「手荒れに悩んでいる」という声を反映。羽根から取れるオーストリッチケラチンを配合し、ほぼ天然由来成分で仕上げている。飲食業の人々などが使うことを想定して、無香料にしているという。

購買ターゲットは当初、美容感度の高い女性と考えていたが、ビジネスマンやSDGsへの関心が高い層、また吉野家ファンからの引き合いが高いという。商品の背景や成り立ち、吉野家のストーリーに共感し、購入する人が多いようだ。

ダチョウ事業は“超”長期的戦略。将来的には5000頭規模を視野

吉野家HDは24年8月、オーストリッチ関連事業への本格参入を発表。モモ肉とヒレ肉を使った「オーストリッチ丼」を一部店舗で約6万食の数量限定で発売した。今年3月から、公式通販ショップで「国産ダチョウ肉のロースト」の冷凍販売を開始。また、全国10店舗でオーストリッチ丼(税込1,848円)の通常提供も始めている。

同社はダチョウ事業を“超”長期的戦略と位置づけ、将来的には食肉の安定供給を目指し、豚や鶏に継ぐ“第4の肉”として普及させたいと目論む。また、化粧品の原材料となるオイル、丼に使わない部位などは、エステ会社や飲食店に卸すなど「BtoB、BtoCの両面で収益性を上げていく」と言う。

「ダチョウは白亜紀からいるとされていますが、その生態についてはあまり研究が進んでおらず、新機能の解明が期待されている生き物です。生存率を上げ、いかによい素材に育てていくのか。今後も研究を重ねて、将来的には10倍規模の飼育量に持っていきたい。そのための投資ができるように、スキンケア商品をしっかりアピールしていこうと考えています」

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Source: HuffPost