04.19
「困った人」本に自閉症協会が意見書を公表「大事なことは差別意識の有無ではなく、社会にどう影響するか」
【あわせて読みたい】本田秀夫先生と考える「大人になって発達障害に気づいた僕たちの幸せな生き方とは」
4月18日、「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)について、日本自閉症協会が意見書を公表した。
4月22日に発売予定の同書は、表紙などで発達障害や精神疾患のある人を「困った人」とし、ナマケモノやサルといった動物のイラストで擬人化しており、それらの表現が発達障害に対する誤解を生み、差別や偏見を助長するとして批判が寄せられていた。
▽この記事のポイント
・経緯は? イラストレーターが詳細に説明、謝罪
・「障害のある人たちの人権を侵害するおそれ」
・日本自閉症協会の意見書全文
・出版元と著者が見解を公表
4月22日発売予定の新刊「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)についての意見です。
かかる書籍が、自閉スペクトラム症を含む障害のある人たちの人権を侵害するおそれがあることを懸念します。https://t.co/2OYLr8QW7lpic.twitter.com/FuK1EfZ8pB
— 一般社団法人日本自閉症協会 (@asjoffice) April 18, 2025
経緯は? イラストレーターが詳細に説明、謝罪
批判の声を受け、4月16日、装画を担当したイラストレーター・芦野公平さんが「装画に関するご報告と経緯のご説明」と題して、文書を公開。表現に関わった1人として謝罪した上で、差別的だと指摘されていた動物を擬人化したビジュアル表現について、当初のラフ案にはなかったものの修正段階で編集部の指示を反映したなど、経緯を詳細に説明した。
翌17日には、発達障害当事者協会が版元である三笠書房に発達障害者の尊厳を傷つける表現が含まれているとして、質問状を提出。現在、回答待ちだ。
「障害のある人たちの人権を侵害するおそれ」
そして、18日、日本自閉症協会が意見書を公表。同書が障害に対する誤解を生み、差別や偏見、分断を助長するものだと指摘し、「自閉スペクトラム症を含む障害のある人たちの人権を侵害するおそれがあることを懸念する」として、出版社に適切な対応を求めた。
また、「作者の差別意識の有無ではなく、本が当事者や職場、社会にどう影響するか」が重要だとし、精神疾患などデリケートなテーマを扱う際には監修を入れたり、当事者の受け止めを確かめたりするなど慎重な姿勢が必要だと強調した。
日本自閉症協会の意見書全文は以下の通り。
◾️神田裕子著の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)について
4月22日発売予定の新刊「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)は障害に対する誤解を生み、差別や偏見、分断を助長するものと判断します。このような本を、90年を超える歴史がある三笠書房が発刊されることは誠に残念です。
現在、この本は表紙と帯、および目次をネット上で見ることができますが、それでも差別や偏見を助長すると判断する理由は以下の通りです。
1. ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の発達障害を一方的に「困った人」として扱っていることは誤解を生みます。
2. 障害名を人のタイプに結び付けているために障害に対する誤解を生むとともに、表現されている特徴を有する人を障害者とする偏見をも生みます。
3. ASDの特徴として「異臭を放ってもおかまいなし」やADHDを「同僚の手柄を平気で横取り」など特異な事例をことさら強調しているため偏見につながります。
4. 結果としてASDやADHDの特性を有する人の尊厳を傷つけます。
大事なことは作者の差別意識の有無ではなく、本が当事者や職場、社会にどう影響するかです。作者や出版社はそのことをよく考えていただきたい。精神疾患などデリケートなテーマを扱う際に出版社は監修をいれたり、対象の人たちの受け止めを確かめるなど慎重な姿勢が求められます。
かかる書籍が、自閉スペクトラム症を含む障害のある人たちの人権を侵害するおそれがあることを懸念し、出版社が適切な対応をされることを期待します。
私たちは職場において、ASDやADHDの特性を有する人もそうではない人も分け隔てなく良好な関係ができるよう引き続き努力するものです。
出版元が見解をHPに公開
その後18日夜、版元の三笠書房が「神田裕子著『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』の公刊に関する当社の見解」と題した文書をホームページで公開。「現在、本書籍に対するご批判等賛否の意見が本書籍の発行前に生じておりますが、まずは事前告知の限られた情報の中で、ご不快な思いをされた方がいらっしゃった事実について、お詫び申し上げます」と謝罪した。
その上で、同書が「職場や組織に『困った人』が少なからず存在する現実」に基づいて執筆され、「『困った人』といかに真摯に向き合い、かつ付き合うかという視点」で書かれていると説明した。
批判が集まっている「困った人」という表現については、「病気や障害の有無にかかわらず、人は誰しも誰かにとっての『困った人』となりえます。それを念頭に『相手を知ろうとする姿勢』や『お互いさまの精神』が重要である、との視点に立っています」との見解を示した。
また、三笠書房はホームページで著者の神田裕子さんのコメントも掲載。神田さんは「差別意識や偏見などはまったくありません」とし、擬人化のビジュアル表現については「愛おしいもの、ピュアなものの象徴としてとらえており、差別的な意図はまったくありませんでした」と説明した。
Source: HuffPost




