03.07
<北朝鮮内部>脱北「最後の拠点」がピンチ 取り締まりの成果で秘密警察を表彰 密輸と脱北はほぼ根絶か

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の保衛局(秘密警察)が、中国との国境地帯での取り締まりに成果を上げたとして、昨年末に表彰を受けたことが分かった。鴨緑江上流に位置する恵山市は、1400キロに及ぶ朝中国境における密輸や脱北の最大にして「最後の拠点」。金正恩政権による「掃討作戦」が続いていた。(石丸次郎/カン・ジウォン)
◆最大の脱北、密輸拠点の恵山

2012年に発足した金正恩政権は、ヒト、モノ、カネ、そして情報の非合法な流出入に頭を悩ませ、朝中国境全域を鉄条網で覆い、国境地域の住民の監視・統制を強化するなどして根絶を図ってきた。だが、恵山市だけは、密輸も脱北も何とか維持されて来た。
恵山市は40年以上前から中国との密輸、越境が盛んだった。鴨緑江の川幅が数十メートルと狭い上、対岸の吉林省長白県の人口7万2000人のうち朝鮮族が16.7%を占めるというという「有利」な条件があったからだ(人口統計は2023年末の長白県政府による)。
この恵山市が、2020年のコロナ・パンデミック以降、国境封鎖政策において取り締まりの最大の標的となってきた。保衛局への表彰は、成果があったということなのだろう。
◆中国の携帯電話を徹底取り締まり
恵山市に住む取材協力者A氏は、保衛員から直接聞いた内容を次のように伝えてきた。
「いつも最下位だった恵山市の保衛局が、昨年末に中央の保衛省から表彰受けたそうだ。中国の携帯電話と密輸、中国への越境に対する取り締まりが成果を上げ、住民管理をうまくやったからだ。一部の保衛員は賞金までもらったということだ」
保衛当局が、とりわけ神経を尖らせているのが、密搬入された中国の携帯電話だ。中国の電波が届く国境地帯においては、外部世界と意思疎通できるほぼ唯一の手段になっており、密輸や脱北、非合法送金などに欠かせない。
また、内部事情を外部に流出させる媒体でもある。アジアプレスでも、中国の携帯電話を使って、北朝鮮の取材パートナーたちと日常的に連絡を取り合っている。
北朝鮮当局は、妨害電波を常時発射して通信の妨害をしている他、保衛員らが電波探知機を携行して国境近くの街や村を巡回している。
「過去に中国の携帯電話を使っていた人を洗い直して、呼び出し尋問している。また、収入に合わないお金の使い方をしている家はないか、人民班を通じて通報させていて、報奨金まで出している。通報されると家宅捜索を受ける」(協力者A氏)
※人民班は末端の行政組織で通常20~30世帯、約60~80人程の人員で構成される。
◆関連者情報1人につき1年減刑
中国の携帯電話の使用は違法である。発覚すると教化(懲役)刑に処されるが、関連者3人の情報を供述すれば、一人当たり1年ずつ減刑するというやり方も導入したという。
「昨年12月に捕まった送金ブローカーが、金を届けた相手3人の名前をしゃべって釈放された。その3人は僻地に追放になるそうだ。韓国や中国に脱北した家族から金を受け取っている人たちは、戦々恐々で息もできない程だ」(協力者A氏)
恵山市では、中国の携帯電話を使う送金ブローカーも、数年来摘発が相次いでいる。今や、密輸と中国への越境、脱北はほぼ根絶されてしまったといえるだろう。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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Source: アジアプレス・ネットワーク

