2025
01.10

米下院、国際刑事裁判所の職員に制裁を課す法案を可決

国際ニュースまとめ

米下院、国際刑事裁判所の職員に制裁を課す法案を可決

アメリカの下院議会は、イスラエルの指導者への逮捕状を巡り、国際刑事裁判所(ICC)の職員に制裁を課す法案を可決した。

 

「違法かつ根拠がない」と主張

 

アメリカの下院議会には1月9日、国際刑事裁判所(ICC)の職員に対し、制裁を科す法案が提出され、投票が行われた。

 

国際刑事裁判所は昨年、イスラエルのネタニヤフ首相やガラント前国防相らが、ガザ地区で飢餓を利用し、パレスチナ人の大量虐殺を行っているとして、逮捕状を発行した。

 

しかし今回、下院に提出された法案では、ICCの逮捕状発行は「違法かつ根拠がない」とし、「アメリカやイスラエル、そしてICCの管轄権に同意していない、全てのパートナー国を脅かす有害な前例を作る」と主張している。

 

投票の結果、243対140で、法案は可決された。その後、この法案は共和党が多数を占める上院で可決され、大統領の署名を得て初めて法律となる。


法律が制定されれば、ICCに協力した同盟・有志国を含む外国の個人も、アメリカに保有する資産が凍結される可能性が出てくる。

 

イスラエルのロビー団体は歓迎

 

法案に賛成した共和党議員は198人、45人の民主党議員も賛成に回ったという。また反対した140人全員が民主党議員であり、共和党からは1人の議員が「棄権」したそうだ。

 

強力な親イスラエルのロビー団体「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」は、ICC職員に制裁を課す法案の下院での可決を賞賛。「私たちは上院に、この重要な法案を速やかに可決するよう要請する」と述べた。

 

AIPACはアメリカで最も影響力のある外交政策ロビー団体の1つであり、長年にわたりイスラエルの利益を促進するために舞台裏で活動。

 

2024年の下院選挙389件と上院選挙26件に資金を投じ、民主党の予備選挙では、アメリカ政府のイスラエル支援を批判した進歩派の議席を奪うために、多額の資金を費やしたと言われている。

 

「大量虐殺狂のネタニヤフ首相を保護」

 

一方、反対票を投じた民主党のラシダ・タリーブ下院議員は、ICCの職員に制裁を課す法案を可決した、下院議員らを激しく非難。

 

「新議会の最初の週、彼らの最優先事項は何か?コスト削減?住宅危機への対応?いや、大量虐殺狂のネタニヤフ首相を保護し、ガザでの大量虐殺を継続させるために国際刑事裁判所に制裁を課すことだった」とSNSに投稿した。

 

また同じく法案に反対した、民主党のイルハン・オマル下院議員も、「地球上で犯された、最悪の残虐行為を記録している(ICCの)人権弁護士やその他の人々は、称賛されるべき英雄であり、罰せられるべきではない」と投稿した。

 

世界最大の人権NGOである「アムネスティ・インターナショナル」も、今回の下院での決議を批判。ICCを「人類が知る、最も重大な犯罪と戦うことを目的とした、独立した司法機関」として擁護した。

 

また「ICCは、ニュルンベルク裁判や、それ以降もアメリカが主導的な設計者であった、国際司法のグローバルシステムの一部である」とし、もし上院でこの法案が可決されれば、「世界中のすべての被害者と、人権と正義を擁護するアメリカ政府の能力に重大な損害を与えることになる」と述べたという。(了)

 

出典元:Aljazeera:LIVE: Israeli attacks kill 22 Palestinians across Gaza(1/9)

Source: Switch News