2021
05.14

脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メーカー誘致に舵を切っている

国際ニュースまとめ

<2019年以降、韓国政府や自治体が、脱日本依存を宣言して国産化に取り組んだが、ここへ来て、方針を大きく転換しているといえそうだ…… > 強硬な対日姿勢を見せてきた韓国の自治体が、積極的な日本企業誘致に舵を切っている。4月29日、半導体装置メーカーの日産化学と韓国現地法人のNCKが、忠清南道と唐津市松山2産業団地に工場を新設する覚書(MOU)を締結した。 日系半導体素材メーカーが、ぞくぞく新工場 NCKは2001年に日産化学が90%を出資して京畿道平澤(ピョンテク)市に設立した子会社で、半導体材料やディスプレイ材料の研究と製造、販売を行っている。 韓国有数の港湾都市である平澤市はサムスン電子の企業城下町としても知られている。サムスン電子は昨年8月、世界最大規模の半導体工場となる平澤2ラインの稼動を開始した。NCKが工場を新設する唐津市はその平澤の川向かいに位置しており、外国人投資地域に外国企業が一定額以上を投資すると税制優遇を受けられる制度がある。 NCKは唐津市松山の外国人投資地域4万423平方メートルの敷地に3700万ドル(約410億ウォン)を投資して工場を新設する計画で、地元自治体は5年間で5250億ウォン規模の輸入代替効果と600億ウォンの輸出効果を期待している。 NCKに先立つ今年1月、ダイキン工業が工場を新設する覚書を締結した。ダイキン工業は、韓国の半導体製造用ガス市場で約28%のシェアを持つ。同社は半導体の製造過程で必要なエッチングガス(高純度フッ化水素)を日本や中国で生産し、サムスンやSKハイニックスなどに供給してきた。 韓国半導体製造装置メーカーのシーアンドジーハイテク社と合弁で、唐津市松山2外国人投資地域の3万4070㎡(約1万306坪)の敷地に5年間で40億円ウォンを投資して工場を新設し、50人程度を雇用する。 昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)も京畿道安山市に110億円を投資して新工場を作る計画だ。2016年にSKマテリアルズと合弁でSK昭和電工を設立し、半導体材料を生産している。新工場を建設し、生産能力を30%引き上げる計画だ。 東京応化工業は仁川市の松島工場に追加投資を行って、生産能力を2倍に引き上げた。同社は2012年、サムスン物産と合弁でTOK尖端材料を設立し、半導体核心素材のフォトレジストを生産している。韓国市場は同社の売上げの14%、営業利益の16%を占める重要な市場である。 ===== 京畿道は「脱日本技術独立」を宣言したが…… 2019年7月1日、日本政府が半導体・ディスプレーの核心素材であるフォトレジスト、フッ化ポリイミド、エッチングガスの3品目の韓国向け輸出管理を強化すると発表すると、京畿道がいち早く反応した。 韓国半導体メーカーのサムスン電子とSKハイニックス、また、ディスプレイメーカーのLGディスプレイとサムスンディスプレイは、いずれも京畿道内に拠点があり、サプラライヤーも多いことから、大きな影響を受けると思われた。 京畿道は「脱日本技術独立」を宣言し、素材・部品・装備の研究開発を行う道内企業に5年間で2000億ウォン以上を支援する予定を立て、また公共機関が韓国で戦犯企業とされている日本企業の製品を購入しない「不買条例」を制定した。 道内企業に対して20年7月までの1年間で300億ウォンを支援し、日本以外の企業誘致に取り組んだ。19年11月に世界最大の半導体装置企業である米ラムリサーチ社の誘致に成功。20年には半導体中古装置流通分野で世界トップのサープラスグローバルを誘致し、今年4月、産業用ガス製造企業である米国エアプロダクツ社と投資協約を締結した。 親会社は「戦犯企業」と言われていた 韓国は、日本政府がグループAから韓国を除外した措置を輸出規制と批判するが、輸出が不許可となる例はほとんどない。 輸出管理を強化した品目の多くが、日本企業が合弁あるいは単独で設立した韓国内の工場で、日本などから輸入した原料をもとに生産されており、韓国企業も日本から輸入した原料で”国産化”を進めている。 しかし、サムスンなど日本政府のさらなる規制を危惧する企業が、日本以外から原料を調達する多角化を画策しており、日本企業が影響を受ける懸念がある。 また、韓国がグループAからグループBに変わったことで、輸出手続きが煩雑になった。日本企業にとって、韓国工場での生産は煩雑な輸出手続きを簡素化でき、また韓国企業の要求に合わせて納入しやすいメリットがある。 韓国の自治体にとっても雇用を守ることができる上、韓国工場の生産品は韓国製にカウントされるため、国産化を推進したと主張できる。 京畿道をはじめ各自治体は、税制優遇のほか賃貸料の減免や法務、会計、人事労務、金融などの無料相談など、さまざまなインセンティブを用意して、日本企業等を誘致したい考えだ。 忠南道に投資を決めた日産化学とダイキン工業や京畿道に投資する昭和電工マテリアルズの親会社である昭和電工は、韓国では「戦犯企業」とされており、自治体が方針を大きく転換したといえそうだ。

Source:Newsweek
脱・脱日本依存? 韓国自治体が日本の半導体材料メーカー誘致に舵を切っている