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英語を上達させる「シャドーイング」とは?教材はどう選ぶ?ソフトバンク元社長秘書・三木雄信さんに聞く「効果的な取り組み方」
社会人の英語の学び直しにおいて、効果的な学習法とされる「シャドーイング」。英語の音声教材を聞きながら、それを真似して復唱していくリスニングのトレーニング方法です。
英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」代表の三木雄信さんは、ソフトバンクの元社長室長で孫正義氏の秘書を務めました。三木さんもまた、シャドーイングを繰り返すことにより、わずか半年でビジネスの場で困らないレベルの英語力を身につけています。
最終回では“上級編”として、シャドーイングの取り組み方と、より効果的に進めるための学習法「インストラクショナルデザイン」について解説してもらいます。
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シャドーイングは「0.8倍」の速さから始める
ーー英語学習にはなぜ「シャドーイング」が効果的と言われているのでしょうか?
シャドーイングとは、リスニング力を高めるためのトレーニング方法です。音声教材を聞きながら、その内容を少し遅れて発声していくことで、リスニング力だけでなく、発音やリズム、イントネーションも自然と身につけることができます。
注目される大きな理由の一つは、「言える=聞きとれる」という会話の原則に基づいているからです。例えば単語を覚えたとしても、それを口に出して言えるかどうかで理解の深さが異なります。言えるようになることで、自然とその音やフレーズが聞き取れるようになり、リスニング力も高まるのです。
さらにシャドーイングでは、会話や読書をしているとき、耳で聞いた言葉や読んだ言葉を、頭の中でしばらく覚えておく「音韻ループ」が強化されます。これを身に付けたら、英語の発音やフレーズが自然と分かるようになり、瞬時に英語を理解して話す能力が高まります。
また、英語のパターンプラクティス(反復練習)の一環としても有効です。よく使われるフレーズや構文を反復して練習することで、英語のフレーズが自動化され、考えずに言葉が出てくるようになります。これにより、英会話の際に「次は何を言おう……」と悩む時間が減り、スムーズな会話ができるようになります。
ーーシャドーイングを始めるには、どのように取り組むのが効率的でしょうか?
まずは教材選びです。英語学習の初心者なら、内容が一読で理解できるような簡単なテキストを使用するのがいいでしょう。たとえば日常会話やニュースの一部など、シンプルで具体的な内容のものが理想的です。特に英語のニュースやアニメのセリフなど、身近な話題のものは、内容が理解しやすく、興味を持ちやすいです。
また、自分が興味のある内容や、実生活で使えそうなフレーズを含む教材を選ぶと、学習のモチベーションも上がります。仕事で英語を使う機会が多い人なら、ビジネス英語の会話例やプレゼンテーションのフレーズを練習するのもおすすめします。
最初のうちは音声の再生速度を0.8倍程度に設定し、聞き取りやすくするといいでしょう。速すぎる音声に最初から挑戦すると挫折しやすいため、ゆっくりから始めて慣れてきたら速度を上げていくのがポイントです。
「完璧に聞き取る」ことを目指すのではなく、8割程度の理解で進めていくことも重要です。完璧を目指しすぎると練習が続かなくなってしまうため、ある程度の理解で次に進む柔軟さも持ち合わせましょう。
学習を成功させるための「設計図」を描こう
ーー三木さんの英語学習プログラムは「インストラクショナルデザイン」という学習デザイン理論がベースになっています。この理論について教えてもらえますか?
インストラクショナルデザインは、学習する人が効果的に学べるよう、学習プロセスを計画的に設計する方法論です。具体的には、教育目標を設定し、学習内容や活動を体系的に組み立て、進捗を評価しながら改善していくプロセスを指します。
英語学習にインストラクショナルデザインを取り入れることで、単なる暗記や反復練習に頼るのではなく、計画的かつ効果的に学習を進めることができます。
ーーインストラクショナルデザインを取り入れると、なぜ「モチベーション維持」と「目標達成」に効果があるのでしょうか?
インストラクショナルデザインは、学習を成功させるための設計図のようなものです。
まず、「何を達成したいのか」を明確にします。それは「英会話マスターになりたい」のような漠然とした目標ではなく、「英語でプレゼンができるようになる」といった具体的な目標を設定することが大事です。
次に、目標達成のための計画を立てます。TOEICで800点を目指すなら、毎週どれくらい勉強するか、どんな教材を使うかなどを決めましょう
そして、計画に沿って学習を進めます。定期的に自分の学習状況をチェックし、「計画通りに進んでいるか?」「目標に近づいているか?」を確認し、必要があれば計画を修正します。
学習の進捗を記録することで、自分の成長を実感できます。たとえば、毎日行ったシャドーイングの回数を記録すれば、努力が目に見えて分かります。自分の成長を実感することは、モチベーション維持につながり、目標達成へと近づきます。
英語の習得には「1000時間以上の学習」が必要
ーーとはいえ、仕事と両立しながら英語学習のモチベーションを維持し続けるのはなかなか難しいもの。どのようなことに気をつければよいのでしょう?
社会人が英語を学び直すとき、「途中で伸び悩みを感じて諦めてしまう」という話をよく聞きます。特に、学習を始めてから数ヶ月経つと、努力しても結果が横ばいになる「プラトー」と呼ばれる停滞期に突入することがあります。
こういうときは、「英語を習得するには、1000時間以上の学習が必要だ」という意識を持っておくと、長期的な視点で学習に取り組むことができます。
また、なんとなく英語の学校に通ったり、何も考えずに教材を購入することも失敗につながります。目的や目標を持たずに学習を進めると、時間や費用の無駄になりかねません。
最後に、机に向かっての勉強だけが学習だと思い込まないことも大切です。通勤中や家事の合間など、隙間時間を活用してシャドーイングやリスニングを行うことで、より効率的に学習を進めることができるでしょう。
(取材・執筆:橋本岬、編集:荘司結有)
【PROFILE】三木 雄信さん
英語コーチングスクール「TORAIZ(トライズ)」主宰。トライズ株式会社代表、株式会社日本英語コーチング協会代表理事。東京大学経済学部卒業後、三菱地所株式会社を経てソフトバンクグループ株式会社に入社。2000年、ソフトバンク社長室長。通信事業参入時のプロジェクトマネージャーを務める。2015年に英語コーチングスクール「TORAIZ」を開始。
Source: HuffPost