2024
11.19

<北朝鮮超望遠レンズ撮影>謎の軍需産業都市・満浦(1) 接近困難な辺境で見えたものは…白煙吐き出す木炭車に固く閉ざされた通商口、軍の検問も(写真9枚)

国際ニュースまとめ

住民の中国への越境を防ぐために有刺鉄線が張られている。足元の木製の垣根は「痕跡線」と呼ばれる。越えようとすると折れるように作ってあり、国境に接近した人がいないか判断する。

10月中旬、北朝鮮慈江道(チャガンド)満浦(マンポ)市を対岸の中国吉林省集安市から撮影した。慈江道は北朝鮮の軍需産業の中心地で、秘密保持のため慈江道の住人は他地域との往来が厳しく統制されており、脱北する人も極めて少ない。また、中国側も近年、集安市付近の一部の国境沿いを外国人が接近できないように統制を強化している。取材が難しく、あまりメディアにも登場することがない、謎に包まれた満浦の近影を報告する。(洪麻里)

◆中国人には「神秘さ」アピール、外国人は接近不可

集安市は、のどかな小都市だ。代表的な観光名所である高句麗全盛期の王、広開土王の石碑に加えて、対岸の北朝鮮も「観光資源」のひとつだ。

中国側には遊歩道が整備され、食堂が立ち並ぶ。右側の山並みが北朝鮮。遊覧船にも乗れるが、望遠カメラでの撮影は禁止と言われた。

満浦と集安間には連絡橋がかり、朝中貿易の通商口にもなっている。連絡橋付近は、満浦中心部を遠目に見ることができる観光スポットだが、外国人は入場チケットを買うことができず、立ち入り禁止になっていた。 一方で、中国人観光客に対しては、「神秘的な国、朝鮮」と大看板で辺境観光を宣伝していた。

集安市の国境沿いの観光地の看板。「国境地帯に入りました。国境管理法規を自覚的に遵守してください!」という警告の下に、北朝鮮側への声掛けや撮影などの禁止事項が書かれている。

慈江道の経済の中心は軍需産業で、住民の多くは軍需工場で働くという。一方で、山の深い谷間に位置している地理的特性上、農業には適していない。

満浦郊外の鴨緑江沿いに立つ大きな工場。セメント工場とみられる。

◆危なっかしい水害復旧建設現場、足場は不揃いの丸太

7月末の集中豪雨で、慈江道でも大勢の人が亡くなった。北朝鮮国内に居住するアジアプレスの取材協力者によると、満浦と恵山を繋ぐ鉄道(北部線)の線路が土砂で埋まるなどの被害があったという。

満浦中心からやや外れた場所では、被災者向けのアパートを建設している様子を確認できた。

建設中の4階建てのアパート。山裾の一段高い場所に作られている。手前には洪水でなぎ倒された木。

超望遠カメラでのぞくと、加工されていない細くて不揃いな木材で足場が作られていた。大規模復旧建設が行われていた平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市や義州(ウィジュ)郡の現場よりも、さらにもろく見えた。

照明を灯しての建設作業。動員されているのは近隣住民だとみられる。赤い上着を着た女性は、ふるいで石と砂を分けている。

◆木炭車を目撃、中国製トラックを改造

満浦中心に向かう道路には、軍が管理する哨所(検問所)がある。この日も、兵士が男性住民の通行証を確認したり、車を一台ずつ止めて検査したりする様子を確認できた。

検問する兵士に男性が書類らしきものを見せている。後ろにはトラックが待機している。

哨所の手前では、モクモクと白煙を吐く木炭トラックも目撃した。文字通り木炭を燃料として動く自動車だ。一時停止したその荷台には食糧らしきものが積まれ、兵士が冬用の軍服を載せたり、人々が荷台に上がり込んだりする様子が見えた。「FAW」というメーカー名から、トラックは中国製であることが分かる。エネルギー不足の北朝鮮では、中国からの輸入車をわざわざ木炭車として改造して使っているということなのだろう。

中国からの輸入トラックを改造した木炭車。右端の兵士は冬用の軍服を抱えている。荷台の袋は食糧のように見える。

◆固く閉ざされた通商口、往来はストップしたままか

北朝鮮はコロナウイルスの発生を理由に、20201月から中国との国境を完全に遮断し、人とモノの往来を厳格に禁止していた。2023年夏以降、新義州-丹東、恵山-長白など代表的な通商口では、本格的な貿易再開が確認されている。

しかし、取材チームが訪れた10月時点において、集安側の税関の門扉は、平日にも関わらずワイヤーか紐のようなもので硬く閉ざされており、人の気配がなかった。

集安の税関ゲートは固く閉ざされていた。建物の奥に鴨緑江が流れている。
北朝鮮地図 製作アジアプレス

※写真はすべて慈江道満浦市。202410月、中国側から撮影アジアプレス

 

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Source: アジアプレス・ネットワーク