10.06
「差別的な影響全くない」永住資格取り消し制度めぐる国連委員会の緊急書簡に日本政府が回答
日本政府は10月6日までに、永住資格の取り消し制度をめぐる国連人種差別撤廃委員会(CERD)からの書簡に回答した。
CERDは日本政府に対し、6月25日付で緊急の書簡を提出。税金を滞納するなどした場合に、外国人の永住許可を取り消せる規定を盛り込んだ入管難民法の改正案(6月に参院本会議で可決、成立)について、改正法の見直しや廃止措置などに関する回答を求める内容だった。
改正法案には、永住許可を得ている外国人が故意に税を納付しなかったり、拘禁刑に処されたりした場合、永住資格を取り消すとの内容が盛り込まれた。
従来の制度でも、永住者が虚偽の申請をしたり、1年を超える懲役や禁錮刑に処され強制退去となったりした場合などは、永住資格を失う。改正案は、そうした資格取り消しの対象を拡大するものだ。
CERDは6月の緊急書簡で、永住資格の取り消し制度に関して「人種差別撤廃条約の下で保護される諸権利に及ぼしうる不均衡な影響を憂慮する」と指摘。
加えて、「市民ではない人に対する差別に関する一般的勧告」を踏まえ、改正法が市民ではない人に差別的な影響を及ぼさないことや、国外退去命令への異議申し立てなどの救済措置を実際に利用できるようにすることなどを日本政府に求めていた。
これに対し、日本政府は9月25日付で回答を提出し、改正法は人種差別撤廃条約上の人種差別には当たらないと主張。
「日本に居住する永住資格を有する市民でない者の人権、とりわけ本条約の下で保護される権利に不均衡な影響を及ぼすものではない」と述べ、委員会の懸念に対しては「既に適切な措置がとられている」とした。
また「改正入管法は、病気や失業など、本人に帰責性があるとは認めがたく、やむを得ず公租公課の支払ができないような場合については、在留資格の取消事由として規定していない」と記載。
仮に、支払い能力があるにも関わらず税を滞納するなどして資格取り消しの対象となった場合でも、「直ちに『永住者』の在留資格を取り消して出国させるのではなく、原則として、『定住者』等の在留資格に変更し、引き続き安定的に我が国に在留させる」と説明している。
その上で「改正入管法が、いかなる意味においても、我が国に在留する永住者に対して差別的な影響を及ぼすことは全くない」と主張した。
「政府の自由裁量に一言も触れていない」支援団体が批判
政府の回答を受け、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」は声明を発表した。
やむを得ず公租公課の支払いができない場合は取り消しの対象とはならないという政府の説明に対し、「改定条文には『正当な理由がある場合は除く』という例外規定がまったくない」「永住資格を取り消すかどうかは、すべて法務省・入管庁の判断、自由裁量にかかっている」と指摘した。
さらに、取り消しの対象となった場合について、在留資格の変更や国外退去などの決定も「法務省・入管庁の自由裁量による運用次第」であり、政府の回答は「政府の自由裁量による運用について一言も触れていない」と批判。
「永住取消条項を拡げたこと、さらに公務員による未納者通報まで設けたこと自体、悪意に満ちた立法であり、『国際人権条約の下で保護されるべき永住者の諸権利』を侵害するもの」だとして、永住資格取り消し制度を廃止するよう改めて求めた。
国連人種差別撤廃委員会による書簡は、同委員会の「早期警戒・緊急措置手続き」(early warning and urgent action procedure)に基づいて出された。この手続きに基づく措置には「決議」「声明」「書簡」がある。
Source: HuffPost