09.30
酪農産業の救世主?飼料コストと温室効果ガスを「ダブル削減」するダノンの秘策
世界的な人口増加に伴い、食糧危機の懸念が高まる現代、たんぱく源としての生乳・牛肉の持続可能な生産が注目されている。
しかし、牛の糞尿やげっぷに含まれるメタンや一酸化二窒素など、牛の生育に関わる温室効果ガス(GHG)排出量は全世界の約9.5%を占めており、地球温暖化における大きな課題の1つとなっている。さらに、昨今の世界的な飼料高騰などによって酪農家の経営は圧迫される傾向にあり、飼料コストの軽減が求められている現状だ。
そういった背景から、味の素は、フランスに本社を置く食品企業のDanone(以下、ダノン)と、同社の生乳サプライチェーンから排出される温室効果ガスを削減するためのグローバルでのパートナーシップを締結した。
アミノ酸を効率的に吸収→飼料コストと温室効果ガスを削減
本パートナーシップでは、味の素が販売する牛用アミノ酸リジン製剤「AjiPro®-L」を活用し、飼料中のアミノ酸を乳牛が効率的に吸収することで、飼料コストを大幅に削減しながら、乳牛の生育に関わる幅広い温室効果ガスの排出量削減を目指す。この取り組みは、ダノンの「パートナー・フォー・グロース」プログラムの一環として実施される。
同社独自の製造技術により開発された本製品は、通常では牛の小腸まで届きにくい必須アミノ酸のリジンを、栄養として体内に効果的に届ける事が可能。
また、一般的に牛の飼料として使用される大豆粕は高たんぱくながら高価格で余分なアミノ酸を多く含むのに対し、本製品では大豆粕などの飼料を減らしながら不足するアミノ酸を補い、飼料中のアミノ酸バランスを整えることができるという。
さらに、同社ではげっぷに含まれるメタンを抑制する「メタン削減製剤」の削減効果が、本製品でアミノ酸バランスを整えた飼料と組み合わせて用いることで30%程度(※1)増幅することを確認しているという。
※1)代表的なメタン削減製剤を使用した場合。同社算定。
地球のWell-beingに貢献するために
2社は、すでにグローバル戦略パートナーシップに関する覚書(MoU)を締結しており、スペイン、ブラジル、アメリカにあるダノン契約農家や、エジプト、モロッコにあるダノン自社農家での導入に向けた取り組みなども進めている。
味の素 執行役常務バイオ&ファインケミカル事業本部長の前田純男さんは「私たちは、『アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する』というパーパスに沿った戦略を通じてネガティブインパクトを緩和し、ポジティブインパクトの拡大に貢献していきます」と今回のパートナーシップに寄せる思いを語った。
ダノンCPOのJean-Yves Krummenacherさんは「味の素のようなパートナーと協働し、酪農家に対してGHG排出量の削減と利益の改善という二重の効果をもたらすソリューションを増やすことで、酪農家のレジリエンスが高まります」と語り、引き続き酪農産業の発展に注力する姿勢を示した。
今後も、持続可能な酪農を推進する2社の協働に注目が集まりそうだ。
Source: HuffPost