09.30
「ママ、生理って痛い?血はどこから出るの?」娘の不安。生理を学べ、親子の会話のきっかけになる“ギフトボックス”を作った母の思い
子どもが初潮を迎える時に「赤飯で祝う」のではなく、一緒に生理について学べる機会が作れないかーー。
そんな思いで、生理用品を入れる巾着袋や湯たんぽなどの生理グッズ、そして医師の監修を受けた生理についてのガイドブックが入った「ギフトボックス」が誕生した。
発案したのは、小学生の娘から初潮に対する不安の気持ちを聞いていた女性だ。
親子間でもなかなか生理について話す機会がない中、ギフトボックスが会話の「きっかけ」の一つになればと話す。開発の背景を取材した。
初潮に対する娘の「不安」がきっかけに
「ママ、生理って痛い?」「血ってどこから出るの?」。
小学4年生になる娘に、桜口アサミさんは繰り返し尋ねられた。
初潮に対して不安を感じる娘を目の前に、自分なりの答えを伝えたものの、娘が正しく生理について理解し、不安を解消することができたのかと悩んだという。
桜口さん自身、重い生理痛やPMS(月経前症候群)で苦しんできたため、なかなか生理をポジティブに伝えることも難しかった。
頻繁に不安を口にする娘にある日、初潮が来たら必要になるポーチや生理用ショーツなどを買いに行こうと声をかけた。その瞬間、「やったー!楽しみ!」と不安の表情が満面の笑みに変わった。
それが、初潮を迎える子どもに贈るギフトボックス「TIME TO」を作ろうと考えたきっかけだった。
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Webマーケティング支援などを手掛ける「Sanpoteam」の代表取締役社長を務める桜口さんは、同社でギフトボックスを作ることを考えた。
クラウドファンディングの「Makuake」で寄付を募り、そのリターンとしてギフトボックスを贈るというシステムだ。
ギフトボックスには、オリジナルデザインの巾着、湯たんぽ、ハンドタオル、星形のピルケースなどの生理アイテムと、ガイドブックが入っている。
ピルケースは、痛み止めや低容量ピルなどを持ち運ぶ用につくった。
デザインや色味の参考にするために、小中学生101人にもアンケートを取った。
アンケート結果によると、ピンクなどより水色やシンプルでおしゃれなデザインが好まれていたことから、生理アイテムの色味も、水色や黄色、モノクロなどを用いた。
親子で共に学べる、医師監修のガイドブック
ガイドブックは2冊あり、生理を学ぶ「TIME TO LEARN」と、生理用品を選ぶ知識が得られる「TIME TO CHOOSE」だ。
この2冊で、生理やそれに伴う体調不良、PMS、生理用品の種類や選び方などについてしっかりと学べる。小学校低学年でも読めるよう、漢字にはふりがなを振っている。
ガイドブックの執筆・編集を担当した同社のメンバーらは、成長期を迎える娘や小学生の妹がいる女性たち。自分たちの初潮や生理の経験も振り返りながら、子どもたちに知ってほしい内容を考えた。
「TIME TO LEARN」は、産婦人科専門医の稲葉可奈子さんが監修した。
生理中のプールや体育の授業との付き合い方など、誰もが悩むトピックの他にも、産婦人科医へのかかり方、子宮頸がん、HPVワクチン、性的同意、避妊など70ページ以上にわたり、心身の変化を迎える子どもに知ってほしい情報がぎっしりと詰まっている。
「TIME TO CHOOSE」では、生理用ナプキンからタンポン、月経カップ、吸水ショーツなどを紹介し、生理が始まったらどう生理用品を選べばいいか考えられるようになっている。
小学校では、生理などについて基本的なことを学ぶが、生理や成長期の心身の変化と付き合っていく上で、十分な情報が提供されているかという点については疑問が残る。
一方で、保護者から生理や性について話し合う機会をつくったり、きちんと正しい内容を伝えることも簡単ではない。
そのような状況を踏まえ、桜口さんは「ギフトボックスをきっかけにコミュニケーションを取ってもらえたらとても嬉しい」とし、こう話す。
「小さい子どもは理解できないと思って生理や性について親がきちんと話さず、子どもがSNSで間違った情報を知ってしまう方が、現代では恐ろしいことだと思います。
小さい頃に生理を含む性教育についてしっかり話せなかったからと、そのまま何も家庭で話さないと子どもは『この話は家でしてはいけない』と感じ、一番身近である親にも生理のつらさを話すことができなくなるかもしれません」
プロジェクト始動にあたり2022年、同社がオンラインで323人に初潮の経験などについて聞いたアンケートでは、「赤飯で初潮を祝われるのが嫌だった」という声が相次いだ。
時代と共に、初潮を迎える際の家族内のコミュニケーションも変わっていく必要があると考えている。
保護者自身が知識に自信がなくても、医師が監修したガイドブックがあれば、子どもと一緒に読み、共に学ぶこともできる。ガイドブックは、親子の「みちしるべ」になってくれるような存在だ。
「どう伝えようかと思っていた」保護者たちからも反響
クラファンに参加した人たちからは「生理について子どもにどう伝えようかと思っていたところでした」「親子で生理の話をするきっかけにします」とコメントが寄せられた。
また、娘がいるという男性らからは「娘のために自分も学びたい」「素敵な取り組み」と応援の声が相次いだ。
商品のリターンがない寄付は、シングル家庭や若年層支援の団体と連携し、希望する家庭にギフトボックスを送る資金に充てられる。
娘がいるシングルファザー家庭にも大きな需要があるとみられる。
多くの人にとって、親子間で話し合うことが簡単ではない性や成長の話。
桜口さんは、「うちの子は初潮はまだまだ、という家庭にも手に取ってほしい」とし、こう呼びかける。
「生理に限らず『子どもたちがつらいときに相談してもらえる親であるにはどうしたらいいのか』と多くの親が望み、考えていると思います。重要なのは親子のコミュニケーションで、生理という分野においては TIME TO 初潮ギフトボックスがそのきっかけを担うことができます。
小さい頃に絵本を読み聞かせしたように、ガイドブックを親子で一緒に見ながら、生理と生理用品について楽しく学んでください」
クラウドファンディングは10月10日まで実施されている。
(取材・文=冨田すみれ子)
Source: HuffPost