2024
09.26

病院で「パートナー」を「同居人」に書き換えられた。家族になれない不安や苦しみ、結婚の平等裁判で原告が語る

国際ニュースまとめ

東京高裁に向かう「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告ら=2024年9月26日撮影東京高裁に向かう「結婚の自由をすべての人に」裁判の原告ら=2024年9月26日撮影

法律上の同性カップルが結婚ができないのは違憲だとして、全国で30人を超える性的マイノリティの当事者が国を訴えている「結婚の平等裁判」は、東京2次訴訟の控訴審(増田稔裁判長)が9月26日に東京高裁で始まった。

この裁判は、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の全国5カ所で計6件の訴訟が行われている。

東京2次訴訟の一審判決では、東京地裁は同性カップルらの結婚が認められないのは「重要な人格的利益を剥奪する」として、「憲法24条2項に違反する状態だ」という判決を言い渡した

その一方で、東京地裁は「結婚の自由」を保障した憲法24条1項や「法の下の平等」を定めた憲法14条1項には違反しないと判断した。

原告はこれらの点などを不服として控訴。26日の審理では、原告の山縣真矢さん、一橋穂さん、武田八重さんが意見陳述をして、裁判所に性的マイノリティが平等に扱われ、法的な家族となるための司法判断を求めた。

人権問題を、一部の「反対意見」で判断しないでほしい

結婚の平等の実現に賛成する人は年々増加しており、国立社会保障・人口問題研究所の世論調査では、同性婚に賛成すると回答した人は70%を超えた

一方、一審の東京地裁は、法律上同性カップルの結婚について「社会的承認が得られるに至ったとまでは言えない」と判断し、理由の一つとして、否定的な意見を持つ人が今も少なからずいることを挙げた。

山縣さんは意見陳述で、この判断について「7割前後もの人が賛成している事実にこそ、焦点を当てるべきではないでしょうか」と訴えた。

同時に、山縣さんが疑問を感じたのが、マイノリティである同性愛者の人権に関わる問題を「社会的承認」を得られているかどうかで判断したことだ。

マイノリティである同性愛者は、過去にはナチスなどに迫害されたこともある。山縣さんはその歴史に触れて、地裁の判断は「理不尽で、怒りを覚え、恐怖すら感じた」と述べ、高裁では人権感覚をアップデートした判決を言い渡してほしいと求めた。

裁判後に記者団の質問に答える山縣真矢さん=2024年9月26日撮影裁判後に記者団の質問に答える山縣真矢さん=2024年9月26日撮影

「私は同居人じゃない」

武田さんと一橋さんのカップルは、判決が出た3月に生活に大きな変化があった。武田さんが体調を崩し、一時は支えなしで歩くことが難しくなり、入院も必要になったという。

武田さんと一橋さんは異性カップルだが、一橋さんがトランスジェンダー男性で、法律上の性別が同じであるために結婚が認められない。

ふたりはこれまでも「これ以上待っていられない」と思っていたが、体調が悪化したことで改めて、結婚して法的な家族になれない理不尽さを実感したと法廷で語った。

一橋さんは、武田さんの診察に付き添ったが、問診票の緊急連絡先に武田さんとの関係を「パートナー」と記入したところ、病院側に一方的に「同居人」と書き換えられ、怒りとやるせなさを感じたという。

一橋さんは「私はただの同居人じゃない」と思ったものの、武田さんの治療のことを考えて、抗議することはできなかったと法廷で語った。

武田さんは回復しつつあるものの、体調不良の原因がわかっていないため、病気だけではなく、何かあった時に家族として扱われるのだろうかという不安も付きまとっている。

武田さんは「待っている余裕はありません。手遅れになる前に私たち夫婦を家族にしてください」、一橋さんは「夫としてせめて安心させてあげたい、他人のまま死にたくはありません」と訴えて一審のような「違憲状態」ではなく「違憲」だとはっきり言い切る判断を求めた。

結婚の平等裁判では、札幌高裁が2024年3月に、結婚の自由などを定めた憲法24条1項、2項と、法の下の平等を保障する憲法14条1項に違反するという判決を言い渡した。

10月に東京1次訴訟、12月には九州訴訟の判決がそれぞれ東京高裁、福岡高裁で言い渡される。

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Source: HuffPost