05.13
「話すことが苦手だった」メンタリストDaiGoの人生を変えた話し方の科学
<360万人ものフォロワーを持つ、メンタリストDaiGo氏。実は会話にコンプレックスを抱え、取材で「雑談しないで」と言ったこともあるという。それを変えたのは、科学の力。古今東西の研究から導き出した、誰もが再現できる「最強の話し方」だった> コロナ禍ですっかりテレワークが定着し、自宅でひとり黙々と仕事をこなす日々に慣れた人も多いだろう。 同僚とのさりげない会話や雑談がなくなったことを寂しく思う人がいる一方で、話すことに苦手意識を持っていた人であれば、今の状況を歓迎しているかもしれない。 しかし、オンライン会議など非対面のコミュニケーションが増えるほどに、その場の空気や会話の流れだけに頼らない、地力としての「トーク力」が試されるようになったと感じている人も多いのではないだろうか。 そんな人にとって大きな宝となるかもしれないのが、『超トーク力 心を操る話し方の科学』(CCCメディアハウス)だ。著者は、「iPhone 1台で360万人のフォロワー」を手に入れ、今では幅広い活動で各方面から注目を集めるメンタリストDaiGo氏だ。 この本では、実は会話にコンプレックスを抱える少年だったというDaiGo氏を、数百万人が聞き入る屈指の話し手に変貌させた「科学的話し方」が惜しみなく明かされている。 「話し方」は人生に関わるのに、誰も教えてくれない YouTubeのフォロワーは230万人。今年に入って話題が沸騰した音声SNSのClubhouseでも既に35万人を超えるフォロワーを獲得。さらに、自身が独自に動画配信を行うアプリ「Dラボ」にも20万人のフォロワーを抱えるDaiGo氏の仕事は、文字どおり「話すこと」だ(この他に、Twitterにも75万人のフォロワーがいる)。 だが実は、「話すことが苦手だった」とDaiGo氏は言う。 子供の頃からずっと「会話が得意ではない」というコンプレックスを持ち、特に「好きなことになると早口になり、周りの反応を置き去りにしてしまう空気の読めない話し方」に学生時代から悩まされてきたというのだ。 「話し方」は、人生のあらゆる場面に否応なく関わってくるにもかかわらず、自分から勉強しようと思わないと誰も教えてくれない、不思議なスキルです。(4ページより) もともと無口で、人見知りで、雑談すらしたくないし、1~2回会ったくらいの相手との会話はなるべく避けたい、それがDaiGo氏の本心なのだ。 そのため今でも、テレビ番組の収録や講演会などの際には、本番の声がかかるまで壁際にひっそりと立ち、ひとりで本を読んでいることが多いそうだ。 今でこそ話すことを楽しめるようになったが、根底にあるコミュニケーションへの苦手意識は残っていると語るDaiGo氏。それを変えたのは、科学の力だった。 話し方や伝え方に関するさまざまな論文や専門書を読み、自分なりに試行錯誤を重ねることで、少しずつスキルを磨いていった。 ===== Chinnapong-iStock. DaiGoが編み出した「独自の会話術」ではない 話し方や会話術は人類普遍のテーマであるらしく、古今東西、数多くの研究がなされてきた。 そこで明らかにされている内容は、何千、何万という人を集めて行った実験に基づいたものだ。つまり、話術に長けた特定の誰かの独特のスキルでもなければ、飛び抜けたプレゼン力を持つカリスマ起業家に学ぶわけでもない。 だからこそ、誰もが身につけることができるスキルなのであり、DaiGo氏が言うように、「誰が真似しても一定の成果が出せる再現性」をも備えている。 科学に基づいているということは、よりよい話し方を学んで身につけようとする人にとって大きなメリットなのだ。 土台となる人柄はそのままに、スキルを上乗せしていきましょう。 ゆったりとした語り口も、時々噛んでしまう不器用さも、人前に出ると緊張してしまう性格も、私のように好きなジャンルの話はつい早口になってしまうクセも、スキルと組み合わせれば独特の魅力となります。(6ページ) したがって本書の内容も、世間の圧倒的な支持を集めるDaiGo氏が編み出した「独自の会話術」を披露する、というようなものではない。 また、会話の隙間を埋めるネタの探し方や、その場を切り抜けるテクニックといったものを伝授する本でもない。 それよりも、今のDaiGo氏を作り上げた土台とも言える「科学的話し方」について、そのスキルを一から分かりやすく共有することに重きが置かれている。 そのため、読んだ人はDaiGo氏と同じように実践でき、DaiGo氏のような「超トーク力」を身につけられる、というわけだ。 カナダの研究から分かった「雑談のメリット」 コンプレックスを克服すべく話し方の科学を学び始めたDaiGo氏は、多くの研究に目を通すうちに、あることに気が付いた。それは、どんな会話にも一定のルールがあるということだった。 オフィシャルな場での日常会話や、商談、プレゼン、会議、あるいはプライベートでの世間話や雑談、込み入った相談事など、どんな会話にも「原理原則」がある。それを知れば、自分の話を理解してもらえるだけでなく、場を盛り上げたり、相手との関係を深めたりすることも可能になるという。 本書には、その「原理原則」が数多く紹介されている。どれもDaiGo氏自身が学んで実践し、身につけてきたものばかりだ。 例えば、DaiGo氏は以前、雑談について「雑な話だったら、しないでくれる?」「間を埋めるような会話をする必要ってあります?」と取材で答えたことがあるそうだ。だが、ある研究を知って、その認識を改めさせられたという。 ===== SARINYAPINNGAM-iStock. それはカナダの大学の研究チームが行った研究で、雑談をする人はしない人に比べて周囲からの好感度が高く、能力の評価も高くなる傾向にあったのだ。さらに、重要なプロジェクトのメンバーに選ばれる確率も上がり、その人が困っているときには周囲からの助けを得やすいことも分かった。 これを知って雑談のメリットに気づいたDaiGo氏は、ノーベル賞を受賞した心理学者・経済学者ダニエル・カーネマン博士の理論から導き出した会話テクニックを取り入れ、心理学の世界でよく知られた研究事例を活用するなどして、「科学的に最強な雑談力」を身につけていった。 また、雑談によって相手にいい印象を残すには、いい後味を演出する「話し方と聞き方の基本形」と言うべき3つのルールがあるが、DaiGo氏は今でも、このルールを日常的に守っているという。 人が学んだことをすぐ行動に移せない理由 この他にも、神話研究によって明らかになった「ストーリーテリング」の効果や、相手に受け入れてもらうために必要な「内面の静けさ」に関する研究、さらには「聞く力」を高める具体的な会話例など、場面ごとに、有効な話し方のスキルやコミュニケーションの注意点などが解説されている。 ただし、これらを全て学んで実践すれば、あなたもDaiGo氏のようになれる……とは述べていない。それよりも、新しく取り入れた知識が自分自身の問題を解決してくれる、という強い関連性を感じることが重要だと説く。 なぜなら、人が新しいスキルを身につけようとするときは、現状を維持しようとするバイアスが働く。学んだことをすぐ行動に移せないのは、このためだ。 そうなるのを避けるためには、まずは自分が実際に悩んでいる問題に目を向け、それを解決してくれる知識を得ることから始めたほうがいい。 大切なのは、今、あなたが強く欲している「話し方」の情報にふれること。それが読んで得た知識を行動へとつなげる動機づけになるのです。(中略)話してみて、相手の反応を見て、対応するページを読み返し、また試す。この繰り返しの先に、目指すゴールがあります。(25ページ) 話し方や他人とのコミュニケーションに悩んでいる人の中には、それを克服するには自分の性格を変えなければいけないと考えている人もいるかもしれない。 だが科学に基づいたスキルを実践することは、性格や得手不得手には関係なく、また、何歳からでもチャレンジできる。 自分の話し方が変われば、周囲の反応も劇的に変わるだろう。そこから、新たな人生の扉が開かれることもあるかもしれない。 DaiGo氏のようになれるかどうかではなく、自分自身が望む自分になるための財産として、一生ものの「超トーク力」を身につけてみてはどうだろう。 『超トーク力 心を操る話し方の科学』 メンタリストDaiGo 著 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
Source:Newsweek
「話すことが苦手だった」メンタリストDaiGoの人生を変えた話し方の科学