2024
09.10

「移民がペットを誘拐して食べている」と米共和党ヴァンス氏がSNSで主張。ネット陰謀論に議員らも同調

国際ニュースまとめ

カリフォルニア州サンディエゴの国境沿いの壁で記者に向かって話すJ.D.ヴァンス氏(2024年9月6日)カリフォルニア州サンディエゴの国境沿いの壁で記者に向かって話すJ.D.ヴァンス氏(2024年9月6日)

【関連記事】トランプ氏、移民を「動物」と中傷。「国が毒されている」と恐怖を煽る

米共和党の大統領選挙候補ドナルド・トランプ氏や副大統領候補のJ.D.ヴァンス氏は、選挙戦を通じて移民に対する憎しみを煽っている

ヴァンス氏は9日には「この国にいるべきではない人々にペットが誘拐され、食べられている」という新たな主張をXに投稿した。

【画像】「ペットが誘拐され、食べられている」と主張するヴァンス氏の投稿と、同調してトランプ氏への投票を呼びかける共和党の議員ら

ヴァンス氏は投稿で、「ハイチ人の不法移民がオハイオ州スプリングフィールドで混乱を引き起こしている」とも書いており、「ペットを食べている人々」というのはハイチから来た移民を指していると思われる。

トランプ氏やヴァンス氏らは長年にわたり移民をレイプ犯や殺人犯であるかのように扱い、ここ数カ月は映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』に出てくる移民や『羊たちの沈黙』の連続人喰い殺人鬼ハンニバル・レクターら架空の登場人物に結びつけて、攻撃している。

しかし、多くのデータから移民の犯罪率は、アメリカ人よりも低いことが示されている。

移民がペットを食べているという陰謀論

ハフポストUS版はヴァンス氏の主張の根拠などについてトランプ陣営に質問したものの回答はなかった。

ネット上には最近、オハイオ州で「移民がペットを食べている」という陰謀論が投稿されており、ヴァンス氏はこれらの根拠のない主張をシェアしたものだと思われる。

その1例では、オハイオ州スプリングフィールド在住者だという匿名の投稿者が、近所の人の娘の友人の猫が失踪し、ハイチ人の家の木にぶら下がっていたと警告した。

この投稿についてスプリングフィールド警察は、ソーシャルメディア上での噂は認識しているが、盗まれたペットが食べられたという通報はないと地元メディアのニューズサンに述べている。

他にも、インフルエンサーを名乗るアンソニー・ハリス氏が、「ハイチ系移民が 公園でアヒルの首をつかみ、頭を切り落として持って帰り食べている 」とスプリングフィールド市の委員会主張する動画も拡散している。

ハフポストUS版はハリス氏に主張の証拠を問い合わせたものの、これまでに返答はない。

こういった投稿は、290万以上のフォロワーを持つ匿名アカウントの@EndWokenessや、トランプ氏を支援する団体ターニング・ポイントの創設者チャーリー・カーク氏ら極右のXアカウントによって拡散されている。

トランプ氏を支持するXのCEOイーロン・マスク氏は、カーク氏の投稿に対して「どうやら、ペットの猫が食べられているようだ」と同調するコメントを書き込んでいる。

オハイオ州スプリングフィールドは近年ハイチ出身の移民が増えている。ヴァンス氏の投稿とは異なり、これらの移民は法的な手続きを経て入国している。

スプリングフィールド公安当局のジェイソン・ヴィア副局長は8月、移民の増加を「憎しみや恐怖を広めるために利用している人がいるのは悲しいことだ」とNPRに語った。

「『ハイチ人が公園でアヒルを殺している』とか、『ハイチ人がスーパーの通路で野菜を食べている』という通報がありますが、そのような光景を見たことがありません。本当に腹立たしいことです。コミュニティが前に進む助けにはなりません」

NAACP(全米黒人地位向上協会)スプリングフィールドの代表であるデニス・D・ウィリアムズ氏は、反移民の噂には驚いていないとNPRに述べている。

「驚きではありません。うんざりしています。私は白人ばかりの地域で育ち、『国へ場所に帰れ』と言われてきました。庭にゴミを捨てられたこともありました。70歳になりましたが、いまだに『送り返せ』という言葉を聞き続けています」

ヴァンス氏は根拠を示さずに移民を攻撃しているにもかかわらず、共和党の下院委員会テッド・クルーズ上院議員などが、同調するコメントや画像を投稿してトランプ氏への投票を呼びかけている。 

猫を殺した疑いで訴追されたのはアメリカ人

ネット上での陰謀論との関連性はわかっていないが、スプリングフィールドから車で約3時間離れたオハイオ州カントンで8月、27歳のアレクシス・テリア・フェレル容疑者が猫を殺した容疑で逮捕された。

テレビ局WLBTによると、警察は猫を殺して、複数の人がいる住宅街で食べた罪でフェレル容疑者を告発した。

カントン警察がハフポストUS版に提供した逮捕記録には「容疑者は複数の人たちがいる住宅地で猫を拷問して殺し、食べた」と書かれている。

逮捕時、フェレル容疑者の手足には血がついていたという。また、警察官のボディカメラ映像には、「なぜ殺したのか?」と問われたフェレル容疑者が放心状態で「わからない」と答えている。「食べたのか?」との質問には回答していない。

ボディカメラ映像をソーシャルメディアに投稿したマレーシア在住で極右コメンテーターのイアン・マイルズ・チョン氏は、「クスリ?」というコメントに、「もっとヤバい。ハイチ人だ」と返信している。

逮捕記録にはフェレル容疑者の市民権の状態については記載されていない。しかしカントン警察広報のデニス・ギャレン氏は「アメリカ市民権を持っているかどうかは確認できていないが、アメリカ市民でないという話は聞いていない」とハフポストUS版に述べた。また、警察によると、この事件後に動物虐待の通報はない。

裁判所が任命したスティーブン・カンデル弁護士も、自身の知るうる限りフェレル容疑者は米国市民だとハフポストUS版に語った。

また、公的記録によるとフェレル容疑者は有権者登録をしており、これまで全てもしくはほとんどの時間をアメリカで過ごしている。カンデル氏はフェレル容疑者の事件は係争中であるとして、詳細を明らかにしなかった。

カンデル氏もオハイオ州でこの事件の他にペット殺害事件は知らず、移民がペットを殺したというヴァンス氏の主張は、フェレル容疑者の事件には当てはまらないと述べた。

フェレル容疑者は無罪を主張しており、責任能力の有無を判断する審理が10月15日に開かれる予定だ。

カンデル氏はフェレル容疑者について「メンタルヘルスの問題を抱えているだけだ」とコメントした。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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Source: HuffPost