09.04
<北朝鮮内部>「腹が減って仕事できない」 水害復旧動員者が空腹で離脱 住民への資材や支援物資の供出要求続く
7月末に北朝鮮北部地域で発生した水害の復旧作業には、各地の企業で「突撃隊」を組織して動員しているが、食事の供給が足りず離脱者が出ていることが分かった。当局は、8月中旬に「被災者への支援は労働党と国が引き受ける」と通知したが、住民への供出要求が現在も続いているという。(洪麻里/カン・ジウォン)
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◆動員離脱は強制労働の可能性
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)郡にある北朝鮮最大の鉄鉱山でも「突撃隊」が組織され、水害の復旧作業に投入されている。しかし現地の取材協力者は、食事がまともに供給されず離脱する問題が生じているとして、8月下旬に次のように伝えてきた。
「茂山鉱山の労働者の配給の一部を突撃隊に回しているが、秋の収穫前なので食糧が不足している。(十分に食べられず仕事にならないため)突撃隊に組織された300人のうち20人以上が戻ってきた。これは食糧を確保できなかった企業の責任なのに、無断離脱したとして強制労働をさせるという話が出ている。食事が足りないため、突撃隊への動員を逃れようとする人が増えている」
※「突撃隊」とは、国家的な建設プロジェクトに動員される建設土木専門の労働部隊のこと。主に企業の青年組織から選抜され服務期間が3年程度の常設「突撃隊」と、職場や党員などからプロジェクトごとに選抜される臨時の「突撃隊」がある。
◆資材や支援物資の供出要求続く
また、復旧作業に必要な資材や、水害で家や家財道具を失った世帯に対する支援物資が足りず、住民に負担を求める圧力が続いているという。
「人民班や女盟(女性同盟)から、麻袋や砂利などの供出を求める以外に、被災者を自発的に助けろという要求がある。政治学習でも、被災者のために食糧と布団、現金を供出した女盟員4人が表彰された。彼女たちを見習えというわけだが、いったい誰が支援なんかできるのかと裏で話している」
両江道(リャンガンド)に住む取材協力者はこのように述べ、住民への「税外負担」が無くなっていないと憤る。
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◆10月10日の党創建記念日までに復旧終えよ
不通となっている両江道と慈江道(チャガンド)を結ぶ北部鉄道は8月下旬時点で、線路の盛土まで流されて再開の見通しが立たないという。
両江道の取材協力者は、「他のプロジェクト工事をすべて中断させて、被災地の復旧作業を最優先で進めてはいるが、雨が降れば今にも崩れそうなその場しのぎの工事だ」と話す。
取材協力者たちによれば、10月10日の労働党創建記念日までには、被災者向けの住宅建設を終え、平壌に避難生活をしている住民を元の居住地に戻すことを労働党中央から指示されているという。
※税外負担:北朝鮮は「税金制度のない国」を標榜してきたが、現実には、予算不足のためインフラ整備や学校運営など様々な場面で金品の要求が続いてきた。これらは「税外負担」と呼ばれ、住民生活を圧迫し強い不満が出ている。金正恩氏は、今回の洪水被害でも、「税外負担」を無くせという指示を出したが、継続しているのが実情だ。
※アジアブレスでは、中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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Source: アジアプレス・ネットワーク