09.05
「産休育休みんな取ってますよ」と言うけれど…。就活で企業の“リアルな事情”を知りたい学生たち【Z世代座談会】
今、日本企業の多くが人手不足や優秀な人材の確保に悩んでおり、特に若手社員の獲得と定着が急務となっています。
新卒採用においては、学生優位の「売り手市場化」が進み、学生の多くが複数の内定先の中から、業務や福利厚生などを吟味して就職先を決定しています。
ビジネスの大変革期とも言える今、学生たちは何を求めて、あるいは何を危険信号とみなして、企業を見極めているのでしょうか。
ハフポスト日本版では、2025年卒業予定で、内定が決まっている関東の有名大学・大学院の学生6人の座談会を開催。SNSで「就活アカ」を作るなど情報収集の方法は多岐に渡りますが、制度や数字だけでは働く実態が見えづらいと感じている学生もいるようです。
▽座談会参加者とその内定先
Dさん:男性、総合コンサル
Hさん:女性、通信
Mさん:男性、リユース・リサイクル業
Nさん:女性、総合コンサル
Tさん:女性、広告代理店
Yさん:女性、広告代理店
前編記事:AI面接や動画選考って正直どう? 就活で「内定11社」の時代、学生たちが企業に求めるもの【Z世代座談会】
女性も平等に評価され昇給している?
──就活の情報収集は時間がかかりますよね。何か特別な方法でやったことはありますか?
Nさん:私はXで就活アカウントを作っていました。匿名アカウントのプロフィールに「25卒で外資系のコンサル志望」と書いて、自己紹介をピン留めしておくと、同じような学歴や目標の人とつながり始めて、DMで会話したり、100人ぐらいのコミュニティに入ったり。そこで「今日はこれ行ってきました」「誰か夜に面接対策しませんか」と声をかけあっていました。
Hさん:私もXで就活アカを作って面接の練習などしていました。意識の高い人たちはどんな就活をやっているのか知ることもでき、モチベーションを維持する上でも重要でした。また、企業で働く社員さんを訪問できるビズリーチ・キャンパスというアプリで、働いている人たちと直接話す機会も作って、情報収集するようにしていました。
──SNSやアプリを使って就活をしているのは今の時代ならではですね。逆に、企業が発信している情報の中で不足していると感じたものはありますか?
Tさん:実際の初任給や手当の金額が、就活サイトや会社のサイトに書かれている内容からイメージしたものと違いがあるのが気になりました。給与面に関しては、産休育休をとった場合も含めて、女性も平等に評価され昇給しているという事例が具体的にどれくらいあるのか、事前に知れたらよかったなと思いますね。やはり聞きづらいことはあって、実際に入社してからしか実態はわからないというか…。
──たしかに、産休や育休の表面的な取得率だけではない実情について知るのが重要ですよね。
Tさん:そうですね。多くの企業が「産休や育休、みんな取ってますよ」と言うんですけど、期間やその後のキャリアに影響があったのかなどについて知りたいなと。制度的な部分だけではなく、休みに入る時に周りの人とはどうコミュニケーションを取っているのかとか、一歩踏み込んだリアルな事情を社員の方に直接聞けたほうが安心して入社できると思います。
Dさん:僕は具体的なビジネスモデルに関する情報がもっと知りたかったですね。金融などの業界では「漠然としているけど、そもそもどんな仕事なの?」という状態のまま、選考過程に入ってから基礎知識を学んでいく人も多いのかなと思います。
Hさん:私も具体的な業務について事前にもっと知りたかったですね。面接で聞くと「勉強不足」と思われてマイナス評価にならないかと不安で、聞きづらかったです。
「親ブロック」の実情は?
──親の許可を得ないと就職ができない「親ブロック」という言葉が最近使われていますが、皆さんは就職先について家族に相談しましたか?
Nさん:私はあまり相談はしていませんでした。親が同じく外資系で働いていたので、色々と言われそうだなと…。
Mさん:僕も最終的な判断は特に親には相談せずに決めました。両親は「好きに決めていいよ」という感じで反対や衝突はありませんでしたが、父が大企業の名前を並べてきたことはありましたね。意見がぶつかりそうだと思ったので、掘り下げて話をすることは避けていました。
Dさん:僕もほとんど相談していませんが、「ここにするよ」と報告をしたときは「知らない会社!本当にそこでいいの?」と言われたので、親の反応次第で選択に迷いが出る人もいるんだろうなとは思いますね。
Yさん:私も少しだけ「こういう会社だったら転職しやすいかな」と雑談程度で話したくらいですね。
Hさん:広告業界も受けていたので、過労死のニュースなどを知っている親から「激務すぎない?大丈夫?」と心配されたことはありましたが、あまり具体的な話はしませんでした。今思うと、逆にもうちょっと意見を言ってほしかったなというのもあります。
Tさん:皆さん相談していないんですね!私は結構親に相談して進めていました。親世代の人から見て気になっている企業や、私の考えているキャリアがどういう印象なのかを知りたくて、実際に学びになる部分もありましたね。でも、あくまでも参考の一つにする程度で、最終決定は自分でしました。世に言う「親ブロック」ではなくて、壁打ち相手になってもらっていた感じです。
10年後のキャリアは? 「急いで決めすぎず」の声も
──ここまでみなさんの話を聞くと、仕事に情熱を持って取り組みつつ、自分の時間を十分に確保したい、会社員として働く以外の道にも興味があるという人が多いのかなと思いました。みなさんは10年後のキャリアについて、どのように考えていますか?
Nさん:コンサルで色々な業界を見て勉強した上で、起業や副業などの会社員以外の仕事をやってみたいですね。通っている大学院には社会人の方が多く、一度社会を経験したからこそ学びに熱心で、課題意識も明確にあって。アカデミックとビジネスを行き来するようなキャリアにも興味があります。
Mさん:漠然としていますが、何かしらの専門性を身につけていたいですね。ビジネスを通じて社会に対してアクションを起こしたときに、周囲にある程度の影響力を持った存在になっていたいんです。結婚や子どもはあまり重視していなくて、基本的には1人でもいいのかなと考えています。安定した、自立した生活を送っていたいです。
Tさん:私も影響力のある存在でありたいですね。今の業界や周辺領域、得意分野において、周囲を補助して活躍するリーダーになっていけたらいいなと思います。私の母は父の海外赴任で引越しをして、自分のキャリアを諦めたそうです。女性もキャリアを築きやすい時代にはなってきているものの、例えば産休や育休からの復職のしやすさや男性の育休取得は未だに変革フェーズにあって道半ばです。キャリアを通して、ジェンダー分野の課題の解決にも貢献したいと考えています。
Yさん:私は10年後には転職はしていますね。プライベートではもし子どもがいれば学習環境を整えられるだけの経済力は持っておきたいです。10年後の働き方についてはまだ具体的には考えていないですが、常に「自分にしかできないことをしている」という実感を持ち続けながら働ける環境にいたいなと思います。
Hさん:私も転職していると思うので、それまでの10年間で手を挙げた仕事を任せてもらえるスキルと信頼を身につけ、柔軟に環境を変えていける状況にいたいです。結婚や出産などは今のところあまり考えていないですが、Wワークや副業も視野に入れつつ、自分で事業を立ち上げられる人になっていたいです。
Dさん:3パターン考えていて、1つはそのまま今の会社でコンサルを続けて、ディレクターまでいくパターン。2つ目が子どもがいて、時間とお金の観点からファンドに移行するパターン。そして、もし子どもがいなければ、興味探究を軸にキャリアを築いていくのもいいかなと考えています。急いで決めすぎずに何パターンかイメージしておくと、気持ちが楽かなと感じています。
♢
「10年後は転職している」と考える人が多かったとおり、学生たちのキャリアプランは多様化しており、ワークライフバランスの実現はもちろん、起業や副業、Wワークなどにも関心を持つ人が増えているようです。そのため、企業に対しては、資格取得支援やキャリア休職制度など充実したサポート制度を導入し、自由で柔軟な働き方を認めてほしいという声も聞かれました。
職場におけるジェンダーによる待遇や給与格差などに課題意識を持っている学生も増えています。「売り手市場化」が加速する今、企業はそうした学生たちの意識を踏まえた労働環境の整備が急務となっていると言えるのではないでしょうか。
Source: HuffPost