08.29
神宮外苑再開発、地元団体が「区民会議」の設置を港区に要望。18本のいちょう並木の保全も求める
東京・明治神宮外苑の再開発をめぐり、近隣住民の団体が8月28日、誰もが参加できる説明会や、いちょう並木の名勝指定・保全などを求める要請書を港区の清家愛区長に手渡した。
団体はこれらの要望に加えて、港区で自然や歴史、文化に配慮したまちづくりを進めていくための「区民会議」の設置も求めた。
区民会議とは?
要請書を提出した「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」は、神宮外苑を未来の子ども達にどう手渡していくかという視点から再開発を考える近隣住民のグループだ。
神宮外苑の敷地の一部は港区で、有志の会はこれまでも、誰もが事業者と意見交換できる説明会や、神宮外苑の4列いちょう並木の名勝指定を港区や事業者に求めてきた。
今回新たに要請した区民会議は、区長が子どもを含めた区民や専門家の話を聞き、意見を交換する場だ。
再開発などのまちづくりを行う時に、計画の構想段階から区長が住民の意見や専門家のアドバイスを直接聞くことで、「区民の声がより反映される区政運営」が実現できるという。
清家氏は6月に港区長に初当選し、就任後の施政方針演説では、「まちづくりには、地域の人たちが大切にしてきた歴史や伝統が守られることが必要」として、幅広い人々の意見を聞く場を設けるよう事業者に要請すると語った。
有志の会から要請書を受け取った清家氏は「しっかり検討して、できるだけ区民の声が反映される計画となるよう務めていきたい」と述べた。
見直し案で緑は保全できるのか
神宮外苑の再開発では、多くの樹木を伐採・移植して野球場やラグビー場を建て替え、高層ビルを建設する計画が立てられている。
しかし、貴重な都心の緑や歴史的な建物が失われることへの懸念から、市民や専門家による見直しを求める運動が続いている。
こういった声を受けて東京都は2023年9月、樹木の保全に関する見直し案を提出するよう事業者に要請した。
見直し案は1年近く出されていないが、TBSやNHKなど複数のメディアは2024年8月27日、事業者が伐採本数を124本減らし、新しい神宮球場の壁をいちょう並木から10メートル遠ざけて幅を広げる案をとりまとめたと報じた。
これに対し、事業者は「報道は事業者から公表したものではない」と声明で述べた。また、見直し案について「現在検討中であり、内容および公表時期については回答できない」とハフポスト日本版に答えた。
事業者は、樹木の保全について環境アセスメントの「事後調査報告書」も都に提出することになっている。事業者はこの事後調査報告書についても「内容検討中であり、公表時期は回答できない」とした。
2列いちょう並木の保全も求める
再開発では、神宮外苑のシンボルでもある4列のいちょう並木を守れるかどうかが争点の一つになっており、有志の会は確実に保全するために、4列並木を名勝指定するよう求めている。
28日に提出した要請書では、この名勝指定に向けた働きかけに加えて、港区道に植えられている18本の2列いちょう並木の保全も訴えている。
有志の会代表の加藤なぎささんは、「事業者は事後調査報告書で、18本の保全についてもきちんと示してほしい」と記者団の取材に述べた。
事業者は元々、この2列いちょう並木を伐採するとしていたが、2022年に「移植検討」に変更した。ただし、移植で確実に保全できることを裏付けるデータなどは示されていない。
加藤さんは、「国立競技場の建て替え時に移植した木々が、今どうなっているかを調査するなどして、移植で本当に保存できるかしっかりと検証してほしい」と述べた。
また、有志の会が注目しているのは、事業者が見直し案や事後調査報告書を提出した後に、市民や専門家との対話の場が設けられるかどうかだ。
事業者はこれまで説明会を複数回開いているものの、参加者が制限されてきたため、有志の会代表の加藤さんも出席できていない。
また都の環境アセスメントでは、事業者が提出した評価書の問題点を指摘した日本イコモスの出席は認められなかった。
加藤さんは、「環境アセスメントの審議会の中だけで事後調査報告書が検討されるのであれば、これまでと何も変わらない。開かれた場所で議論をして、市民や専門家の意見を聞いてほしい」と述べた。
「神宮外苑の再開発は何十万もの反対署名が集まるほど関心が高く、樹木や都市計画、建築など、あらゆる分野の専門家からの心配が寄せられています。こういった専門家の質問に科学的な回答をしてもらうことで、私たち市民が考え、判断できると思います」
Source: HuffPost