2024
06.26

両親の教えは偽善?思いやり?死後に見つけた箱の中身に姉妹は驚愕し、怒りに体を震わせた

国際ニュースまとめ

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大学入学の少し前に初体験をした。もしも、ちゃんと避妊していたなら、おそらく忘れてしまえるほどのことだったんだろうと思う。

今考えてみると、自分の愚かさはなかなか認めることができないものだ。交際を始めてから1年半、性行為はしなかった。2人とも婚前交渉は望ましくないとするカトリックの教えの中で育てられたからだと思う。さらに私の場合は、女性が避妊するということはセックスを楽しみにすることを意味し、罪だと母親に口うるさく言われていたことも大きかった。

初体験の5年前、12歳だったころのこと。両親は姉たちがセックスしていることを知ると、2人をけなすようになった。家では怒鳴り声が飛び交い、「こんな女性はまともな男性には求められない」など両親は口うるさかった。姉たちは引き出しの中身も定期的に調べられていた。

「避妊せず、妊娠していればまだよかった。少なくとも心構えとしてはまちがっていないわけだから」。母は姉たちにこうも言っていた。

姉たちはそれなりの受け止めしかしていなかった。10代前半だった私は少しずつ大人になっているところだったから、母の教えは絶対的だと感じていた。両親を喜ばせたい一心で、2人の言うことを、生きていくうえで必要な道徳だと受け止めていた。

両親の結婚生活は機能しなくなっていき、静かながらも家庭内には緊張感が高まっていた。女遊びが激しかった父は一晩中家を空けがちになり、母は同僚にがんを疑われるほど痩せてしまった。

そんな状況でも、母は私が交際相手のミッチに送られて帰宅するといつも玄関に出てきてすぐに家に入るように促した。この頃には私の引き出しの中身も確認するようにもなっていた。

初体験からおよそ1カ月後、私はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入学した。学生寮は埋まっていたため、キャンセルが出るのを待つことになった。自宅から通うには遠く、最初の1学期だけ家族ぐるみで仲良くしていた裕福な友人一家のところに住まわせてもらうことなった。

高校生だったこの一家の長女ローラの部屋で寝起きすることになった。ローラはピルを服用していて、セックスの善し悪しを考えあぐねていた私に「考えるのはいいけど、そうする間もちゃんと避妊して」とアドバイスされた。

私は生理不順で、だいたい45日間周期だった。この時は2カ月以上来ていなかった。数日後、ローラは夜中にキッチンに忍び足で向かうとマヨネーズが入っていた瓶をきれいに洗い、私にくれた。私はそこにおしっこを入れ、茶色の紙袋に入れて持ち出して検査へ。2日後、妊娠していないことがわかった。

ミッチとの連絡手段は公衆電話だったので、2人だけにわかる言葉を決めていた。ミッチは別の大学に通う2年生だった。電話に出たミッチに「山には行かない」と伝えた。すると、「ちょっと待って」と部屋を横切って電話のコードを引っ張って廊下に出る音が聞こえた。「何だって?」とミッチが聞いてきたので「だから山には行かない」と繰り返した。「それって妊娠しているってことだっけ?」と聞くミッチに苛立ちを覚え、「妊娠していませんでした」と受話器に向かって怒鳴った。

自販機のところにいた女性が私の大声を聞き、「おめでとう」と祝福してきた。心からの言葉だったんだろうと思う。

こうして私の大学生活は始まった。1学期が終わり、寮に移り住んだところで生理が戻ってきた。まるで3回分の生理を体内に溜め込んでいたかのように、夜中、血まみれになって目覚めた。ルームメイトを起こさないように、真っ暗な部屋の中でタオルを探り当て、トイレに向かった。洗いながらいろんなことが頭を巡った。流産したのではないか。母の教えを破ってしまった。自分たちの将来をつぶそうとした。

それでもなお避妊することにはためらいを感じた。ミッチは恥ずかしいとコンドームを買いたがらなかった。さらにはバイト先で出会った子に熱をあげ、私に冷たく接するようになった。父親の姿が重なった。2人の関係がうまくいかなくなっていき、実家にある洗面台の私の棚を調べる母親の姿に罪悪感を抱きながらも、ミッチと体の関係を持ち続けた。

罪深かろうがどうであれ、私は運任せに生きていた。キャンパス内に住んでいたので、歩いていける距離に学内クリニックがあった。ピルを処方してもらうには避妊についてレクチャーを受けねばならなかったので、予約を入れた。

レクチャーに参加するにあたり、性生活について踏み込んだ質問が並んだ長い調査票を渡された。恥ずかしかったけれど、正直に答えた。

ピルを処方してもらったが、次の生理が終わるまで使わないように指導された。次の生理が来る気配はまったくなかった。

ミッチの両親が週末留守にすることになり、次のデートはミッチの家でということになった。生理は来てなかったけれど、その週末にセックスすることは確実だったので、ピルの服用を始めた。私の理解ではピルを飲めば、生理不順が改善し、妊娠したのではと常に心配しないでよくなるはずだった。

ミッチの家では想定通りの時間を過ごした。ご飯を食べ、セックスをして、テレビを見た。しばらくすると、下腹部に痛みを感じた。痛みは急速に増し、トイレに駆け込んだ。便座に座り、体をくの字に曲げないとやり過ごせないほどの痛みだった。塊混じりの血液が大量に出てきた。

ミッチに流産してしまったかもしれないと伝えたかった。「それ」は便器の中にあるけど、どうしていいかわからないと相談したかった。だけど、ミッチは女性の体について話すことを嫌った。何か気持ち悪いと感じる点があると嫌がった。ミッチには大量に出血したと伝えるのが精一杯だった。

ミッチはしばらくの間じっと見て、肩をすくめてテレビ画面に目を戻した。私は戻ってトイレを流した。

あれから数十年が経った今も、現実を受け止めようとしなかった自分のことを思い出す。ミッチの気持ちが私から離れてしまっていたのは明らかだった。したいときにできる都合のいい女ということにしか魅力を感じてもらえていなかったのに。本音で話せる相手じゃないとわかっていたのに。それでも、また昔のように愛情を持ってくれるかもしれないと期待し、一緒に過ごす将来さえ想像していた。

あの日のことが頭から離れないと言えば嘘になる。ミッチに尋ねたところで、覚えてさえないはず。でも、私は思い返さずにはいられない。もし、誤って妊娠を終わらせてしまっていたのだとしたら、自分の人生を変えてしまったということだから。

筆者のVictoria Waddle氏筆者のVictoria Waddle氏

両親は新型コロナ禍の間に亡くなった。母の認知症が深刻さを増していたこともあり、姉たちとともに介護にあたることになった。数年前から体調を崩していた父が亡くなり、両親が住んでいた介護支援付きのアパートを引き上げ、母にはもっと手厚い施設に移ってもらうことになった。

アパートの居室を片付けていると、クローゼットの奥に書類が入った箱を見つけた。中の書類をめくり、びっくりするものを発見した。

両親の婚姻証明だった。初めて見る書類に驚いた私のところに、姉たちもやってきた。

「1954年4月18日」

一番上の姉が生まれる4カ月も前の日付だ。

両親からは1953年9月に結婚したと聞かされていた。

みんな同時に「あっ!」と同じことに気づいた。教会ではなく、牧師館で結婚した理由はこれだったのだ。

この事実に2番目の姉は「ものすごく腹が立つ」と怒りで体を震わせた。「本当にものすごく頭にきてる」。

両親に最もひどい仕打ちを受けたのは次女だった。「あんたのボーイフレンドはセックスした後、友だちを連れてきて今度はそいつらとお前がセックスするところを眺めるんだ」という言葉を次女に向かって投げつけたこともあった。

母にこの時のことについて説明してもらうすべはもうなかった。認知症が進み、子どもの名前も忘れつつあった。

姉妹で話しながらふと思った。両親はまるっきり偽善者だったのか。それとも、自分たちと同じ轍を踏ませたくないと私たちのためを思って恥辱感を味わせようとしていのか。

両親から学んだことは、自分で物事を考えず、自分で判断しなくなることだけだった。

自分の性についてどういう判断を下すかは、両親が決めることではなかった。大学の避妊レクチャーでも、あの踏み込んだ質問が並んだ調査票でもなかった。

あれから数十年が過ぎ、アメリカは性の問題について進歩してきたはずなのに、今向かっているのは女性のプライバシーを侵害し、自立を否定するディストピアだ。

私は10代の若者にかかわる職業を選んできた。教師として社会人キャリアをスタートさせ、高校の司書になった。ペギー・オレンスタイン著の『Girls & Sex』が学校図書館にふさわしいか読んだが、純潔の誓いを立てる10代は立てない子たちよりも妊娠しがちという研究結果に納得してしまった。

ほかの役立ちそうな性教育に関する本とともに、図書館に『Girls & Sex』の紹介コーナーを設けた。図書館ブログにもレビューを書いた。

恥辱感を与えるやり方は、かつてほど避妊に効果はありません。少女たちには、主体性を持ち、許可を得るべき唯一の人物は自分自身であるということを胸に留めておいてもらいたい。

◇      ◇      ◇

筆者のVictoria Waddle氏はプッシュカート賞にノミネートされたことがあり、「Best Short Stories From The Saturday Evening Post Great American Fiction Contest 2016」にも選出されている。著書に『Acts of Contrition』『The Mortality of Dogs and Humans』があり、2025年には一夫多妻カルトから脱走した10代を主人公にした小説を発表予定。

ハフポストUS版を翻訳・編集しました。

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Source: HuffPost