2024
06.24

<女性インタビュー>2024年春、北朝鮮内部はどんな状況か(1) 誰が、なぜ飢えているのか?

国際ニュースまとめ

トウモロコシ畑の中で会議する女性たち。収穫作業に動員された「女性同盟員」のようだ。2023年9月末に中国側から撮影した平安北道の朔州郡の様子。アジアプレス

毎年春になると焦燥感がつのる。春の端境期を迎えた北朝鮮住民に、また良くないことが起きるのではないかという心配のためだ。2024年の春、北朝鮮で何が起きているのか。4月末に両江道(リャンガンド)住む女性に電話取材した内容を2回にわたって報告する。(チョン·ソンジュン / カン·ジウォン

◆2023年春に「たくさんの人が死にました」

電話取材をしたのは、両江道に住む育児中の女性だ。 コロナ禍以前は、中国製品を扱う商売を1人でしていたが、当局の統制でできなくなり店をたたんだ。北朝鮮当局の電波探知や盗聴を警戒し、数分ごとに通話を中断して、時間をおいて再開する方法でインタビューを進めた。

――コロナパンデミックの期間、北朝鮮の状況がひどかったと聞きました。具体的に説明してください。
コロナにかかって死んだ人より、国境封鎖によって多くの人が死にました。お金が底をつき、個人で金を稼ぐことが全くできないので、昨年のポリコゲ(春窮期)の時期はたくさんの人が死にました。

※ポリコゲ(春窮期) 前年に収穫した食糧が底をつき、まだ麦が実っていない4月から始まる春の端境期

――周囲で大体何パーセントくらいの人が死んだと思いますか?
何パーセントかは分かりませんが、去年の5月だけでも町内で3、4人は死んだと思います。その時死ななかったとしても、当局があれこれ統制ばかりして食べ物も与えないから、今まで生き延びているのは本当に幸運なことです。1日1食をやっと食べるような人が多いし、食べることができずに栄養失調でむくむ人も多いです。

(参考写真)国営の「糧穀販売所」。撮影当時は運営が中断していたため閑散としていたが、現在は国が食糧を専売している。2012年11月、両江道の恵山市で撮影(アジアプレス)

◆災難の原因は当局の統制強化

――どんな人たちに一番打撃が大きかったですか?
去年は「穀物販売所」もろくに機能せず、流通が途絶えたりしたので、あるものを全部食べた後で、元手のない人たちが急に食べ物がなくなるという状況でした。それによって栄養状態が悪くなり、下痢や風邪のようなたいしたことのない病気でも死にました。

正直言って、年寄りはほとんど死んだと思います。少し具合が悪くなっただけでも、薬もないし、ご飯もろくに食べられないから。はぁ··…。ここもひどかったんですが、吉州(キルジュ)や金策(キムチェク)、咸興(ハムン)などでは、アパートで1日に2人、3人ずつ死んでいったと聞きました。深刻だったので、上層部では軍糧米や戦争物資から1週間分の食糧を配給したりしました。

※穀物販売所 国営の食糧専売店。金正恩政権は2019年頃から市場での食糧流通を強く統制しつつ、この専売店でのみ主食のコメとトウモロコシを購入できるように改変した。

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