09.07
初心者が知らない、勝ち続ける投資家が必ず守る「ルール」
<たとえマーケットでは常識でも、自分のルールに反することは決してしない。個人投資家のマイルールには、成功へのヒントが詰まっている> 勝ち続ける投資家の密かな決め事 刻々と変わる株式相場では、周囲に流されず、粛々と取引を実行することが成功の鍵。そのことを身をもって体験している投資家ほど、独自の売買ルールを持っています。 たとえマーケットでは常識でも、自分のルールに反することは決してしない。個人投資家のマイルールには、成功へのヒントが詰まっています。 ■「PER70倍以上の銘柄は買わない」 成長株投資で有名なAさんのマイルールは「PER70倍以上の銘柄は買わない」。成長株ではPER100倍以上もゴロゴロあるはずなのに、PER70倍以上は買わないとは一体どういうことなのでしょうか? PERとは株価収益率のことで、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で買われているかを見る尺度です。PERが高いほど株価が割高、安いほど割安と判断されます。 ●PER=株価÷EPS(1株あたり利益) 一般的に、PERは15〜20倍が適正といわれます。ただ、急成長している企業の場合は、投資家たちの期待がプレミアムとなって株価に上乗せされるため、なかには100倍以上の非常に高いPERがついてもなお買われる銘柄もたくさんあります。 しかしながら、異常に高いPERは、投資家の期待が高まり過ぎたことの裏返し。膨らみすぎた風船は、わずかな刺激で爆発する危険性があるのです。 それに対して、仮に成長株の利益が次期以降も3割で伸び続けるとした場合、足元のPERが70倍であれば、5年後のPERは19倍で適正範囲になります。つまり、5年後までの成長を織り込んで現在の株価を評価するなら、PER70倍であっても決して高すぎるということにはなりません。 だから、将来の利益水準から割り出すなら「PER70倍までが妥当な範囲内」。これが、Aさんのマイルールの根拠なのです。 ●テスラ<TSLA> 2020年にはテスラ<TSLA>が大きなブームとなりました。言わずと知れたアメリカの電気自動車メーカーで、現在の世界を代表する成長銘柄です。コロナ禍で株価が急上昇するとともにPERもぐんぐん伸びていき、Aさんが検討を始めた時点のPERは800倍にまで達していました。 PERは、「投資資金を回収するまでにかかる期間」を示す数字でもあります。PER800倍ということは、投資資金を回収するには8世紀(800年)かかるということ。たしかにテスラの将来性は魅力的に映りましたが、結局、Aさんはマイルールに従って購入しませんでした。 加えて、異常なまでに高PERの銘柄は、その期待された成長が鈍化した場合には一気に大暴落するリスクがあります。さらに、金利が上昇すると真っ先に売られるなど、高PER株ならではのデメリットもつきまといます。事実、テスラの株価はその後ピーク時よりも3割以上も下落してしまいました。 「その株を買うためならいくらでも払う」という状況はマーケットが過熱している証しであり、そこには危険が伴います。たとえ周りの全員が買っていたとしても、自分自身が納得できる妥当なリスクの範囲内でなければ手を出さない、という心がけは(とても難しいですが)非常に大切です。 市場を支配しているのは数字ではなく、人間の心理だ──ジョージ・ソロス ===== ■「事件は売りではなく、むしろ買い」 自分が保有する銘柄に何らかの事件・事故が起きたとき、大慌てで売却する人も多いでしょう。ところが、ベテラン投資家のBさんは、保有銘柄に不正会計取引の疑いが生じたときも、涼しい顔をしています。それどころか、「事件が起きても売却しません。むしろ買い増しのチャンスです」と言うのです。 株式相場には、「事故は買い、事件は売り」という格言があります。突発的な事故は、短期的には企業の業績に影響を与えたとしても、その後は回復するケースが多いので「買い」だが、事件の場合は企業の体質が問題視されることが多く、影響が長期化する可能性が高いため「売り」だということです。 しかしながら、この格言が当てはまるかどうかはケースバイケースです。 企業に何か事件が起きたとき、それに乗じた売り仕掛けから機関投資家が一旦手放す動きをするため、株価はオーバーシュート気味(大幅下落)になります。しかしながら、その後にV字回復するケースも多く、一概に「事件は売り」とは言えないのです。 ●カプコン<9697> 2020年11月、家庭用ゲームソフト開発大手のカプコン<9697>に、不正アクセスによる情報流出が起きたと報じられ、株価は11.6%下落しました。しかし、巣ごもり需要で業績はすこぶる好調だったことから株価はあっと言う間に回復。事件発覚直後はむしろ絶好の買い場となったのです。 事件や事故で株価は急落するものの、大底をつけると、売られすぎを修正する動きが出ます。業績に与える影響が明らかになると投資家の警戒感が解け、買い戻しに転じるのです。損失が広がらない場合や企業の競争力が高い場合には、このリバウンド力が強くなります。 もちろん、株価が下げ止まらない場合や、そのまま上場廃止に追い込まれるケースもあります。特に、事件を起こした企業のリスクが大きいことは、常に念頭に置いておいたほういいでしょう。 それでも、事件が起きたからと言って必ず手放すべきだということではなく、むしろチャンスになる場合もあることは、相場が教えてくれる重要な事実なのです。 人が売るときに買い、人が買うときには売れ──ウォール街の古い格言 ===== ■「ナンピン買いは絶対にしない」 株式投資から得られる利益で生計を立てる”プロ”の個人投資家であるCさんは、「ナンピン買いは絶対にしない」と言い切ります。 ナンピン買い(難平買い)とは、買った株が値下がりしたとき、当初の買値よりも下の値段で買い増しをすることで、平均購入単価を下げる方法です。見込み違いで株価が下がった場合、ナンピン買いをすることで株価が再び上昇すれば損失を防げるため、多くの個人投資家がナンピン買いをします。 しかし、そもそも買った株がすぐに下がってしまうのは、買値が間違っていたということ。そこでナンピン買いをしてしまうと、ズルズルと下がる株価によって、さらに損失を膨らませる結果となる可能性が大なのです。 例えば、投資資金500万円のうち5%にあたる25万円を使ってある銘柄を買ったとします。その株価が買値より下落したときに、損失を防ぐ目的でナンピン買いをするには、同じ株数を買い増しすることになります。言うまでもなく、含み損を抱えた状態です。 これを何度か繰り返すと、投資資金500万円のうち同一銘柄への投資額が100万円以上となり、資金全体の20%以上を占めることになります。そうなると、さらなる株価の下落が起きたとしても売るに売れず、大切な資金を大きなリスクに晒すことになるのです。 ●「買い下がり」とは? 株価の下落中に買い増しをする行為には、ナンピン買いのほかに「買い下がり」があります。 買い下がりとは、例えば機関投資家が「投資資金の5%を買う」と決めて、最初に2%、次に1%、その次に2%、と追加して買っていくことを言います。これは下落局面における計画的な買い増しであり、反転を狙ってエントリーしているのであって、ナンピン買いとは似て非なる行為です。 もしも株価が買値を下回ったなら、まずは「買値が間違っていた」と反省することが肝要です。その銘柄を選んだ理由やタイミングの判断が甘かったと考え、事前に設定した水準に達すれば潔く損切りします。買い増しするのは必ず買値を上回ってから、と心得ましょう。 安易なナンピン買いをしないだけでも、大きな損失を避けることができるのです。 問題が生じた時と同じ考え方をしていたら解決はできない──アルベルト・アインシュタイン ===== ■「株価が20%上がっても売らない」 保有している株をいつ売るかの判断は、個人投資家にとっていちばんの悩みでしょう。本来、株式を購入する時点で「買値から◎%上昇したら利益確定する」などの出口戦略を決めておくことが、損失を避けながら着実に利益を積み重ねるための重要な手順です。 しかし、常にその方法を取っていては、たしかに損失は抑えられるものの、その反面、大きな利益を得ることが難しいのも事実。どんどん上昇していく株価を横目に「売らなきゃ良かった……」という後悔ばかりが募って、相場に向き合うのが嫌になるかもしれません。 ●日本郵船<9101> 2021年2月に2018年の高値を突破した後、25日移動平均線を明確に下回ることなく高値を更新し続けている日本郵船<9101>(2021年8月13日現在)。 このように株価が新高値を更新してどんどん上昇している場合、どこでピークアウトするかは誰にもわかりません。上昇途中で売却してしまったら、その後の上昇分の利益を得ることができずに終わってしまうのです。では一体、どうすればいいでしょうか? 個人投資家のDさんが実践しているのは、「上ではなく下を決めておく」という方法。 まず、買いに入る前に「買値から◎%下落したら損切り(ロスカット)する」というラインを決めておきます。そして、その価格での「逆指値注文」を出しておきます。もし株価が下落したらその価格で自動的に売却され、損失の拡大を防ぐことができます。 そのうえで、思惑どおりに株価が上昇した場合には、それに合わせて逆指値注文の価格を引き上げていきます。この手法をトレイリングストップと言います。こうすることで、利益を最大限に伸ばしながらも、万が一どこかの時点で株価が急落した場合でも、そこまでの利益はしっかり手にできるのです。 決して思い通りにはならない相場で戦う以上、自分の設定したラインではなく、相場の行方に素直に従って利益を追求していくこともまた、株式投資で利益を重ねるためには大切な手法です。ただし、リスク管理を徹底しなければならないことは言うまでもありません。 相場のことは相場に聞け──古い相場格言 ===== 株式投資で成功する秘訣とは? 株式相場で勝てない人の多くが「マイルール」を持っていません。それどころか、「売買ルール」を持つことすら知らない人も少なくないでしょう。 たとえ持っていたとしても一貫せず、自分では守っているつもりでも守れていないことが大半です。なんとなく買い続けていればいつか一発当てられると思っていたり、他人の意見に流されて買ったり売ったりしているようでは、いつまでたっても株式投資で成功することは叶いません。 どんな銘柄を買うか。いつ買って、いつ売るか。いくらで買って、いくらで売るか──株式投資で成功するのは、そうしたルールを自分自身でしっかりと定めた上で、どんな状況でもそれらを遵守することができる人です。 ただし、そうした「マイルール」は、その本人にしか通用しません。ここで紹介したのも、それぞれの投資家たちが何度となく失敗を経験して築き上げた彼らなりのルールであり、万人に当てはまるわけではありません。マイルールは文字どおり、自分自身で確立するほかないのです。 そうだとしても、すでに株式投資で成功している投資家たちのマイルールは、大きなヒントになることでしょう。決して、何も考えずにそのまま引用するのではなく、彼らの投資スタンスや考え方やを参考にしながら、自分なりのルールを構築していってください。 [執筆者] 岡田禎子(おかだ・さちこ) 証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) 【かぶまどアワード2020】 ※当記事は「かぶまど」の提供記事です
Source:Newsweek
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