06.16
かつて女性には参政権がなかった。「同じことが若者にも起きている」立候補年齢引き下げをめぐるイベントが開催
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「かつて女性は『知力、体力において男子に劣る』として参政権が認められなかった。これと同じことが若者にも起きています」
立候補年齢を25歳・30歳以上から18歳へ引き下げることへの賛同・応援コメントを集める「#未来を生きるわたしが決める」 キャンペーンが6月13日に始動した。同日、キックオフとなるイベントが都内で開催された。
キャンペーンは、立候補年齢引き下げを求め、公共訴訟やロビイングを行う「立候補年齢引き下げプロジェクト」の一環。同キャンペーンを主催する、若者の政治参加促進を目指す一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」がイベントを行った。
立候補年齢引き下げを求める若者や弁護団が語ったことから見えてきた、若者の現状とは。
立候補年齢25歳・30歳、「合理的な根拠がないことは明らか」
公職選挙法が被選挙権に年齢制限を設けているのは違憲として、18歳から25歳までの原告6人が国を相手どり行っている公共訴訟について、弁護団の一人、戸田善恭弁護士が解説した。
日本では、選挙で投票できるようになる年齢(選挙権年齢)は18歳。一方、選挙で立候補できる年齢(被選挙権年齢)は衆議院などで25歳以上、参議院などで30歳以上で、OECD加盟国の中でも高い年齢だ。
過去に最高裁は「被選挙権に対する制約は原則許されない」、「立候補の自由は選挙権の自由な行使と表裏の関係」などの判断を出している一方、国は立候補年齢について「相応の思慮分別・社会経験が必要」などと説明している。
戸田弁護士は国の説明について、「25歳・30歳以下には思慮分別や社会経験がなく、それ以上になっていきなり出てくるのでしょうか。合理的な根拠がないことは明らかだと考えています」と主張した。
「現在の年齢設定は憲法ができた明治時代に、特に深い理由もなく決められたものです。現在18歳は選挙権もあり、裁判官にも経営者にもなれる年齢です。また、若者は低能力との前提は近時の研究結果に反するものです」
また、平等原則違反の観点から、若者という集団自体が社会的に差別の対象になりやすい人たちであり、その区別的取り扱いに合理性があるのかについても厳しく見ていかなければならない、と裁判で主張しているという。
また、戸田弁護士は東京大学の齋藤宙治教授の研究を紹介。「子どもに対して重い刑事責任を科してほしい」という声が高い一方で、「政治参加についてはそこまで大きな権利を与えなくてもいい」といったような矛盾した感覚など、若者に対する差別的な法意識や否定的なステレオタイプが存在する、と説明した。
「かつて女性は『婦人は知力、体力において男子に劣る』、『婦女は想像の才や進取の気性に乏しい』、『婦女は独立の性や確実な考え方に乏しい』といった理由で参政権が認められていませんでした。今考えれば合理的な理由は何一つありません。これと全く同じことが若者にも起きています」
立候補年齢を引き下げれば、若者の投票率が上がる
NO YOUTH NO JAPANのシンクタンクチームは「立候補者年齢と投票率」についての調査結果を発表した。
2019年と2023年の統一地方選挙を対象に調査。東京都内で議会議員選挙が実施された区市町村の年代別投票率を見てみると、20・30代の新人候補が多い地域の方が、若い世代の投票率が高いという結果が得られたという。
「立候補者に占める20代立候補者率が10ポイント上昇すると、10代投票率が1.85ポイント上昇することが分かりました。つまり、10人の立候補者がいる選挙の場合、20代の立候補者が1人増えると、10代投票率が1.85ポイント増えることになります。一人増えただけでこれだけ投票率に影響があるのは、非常に重要なことだと思います」
また、「20代の立候補者」と「新人立候補者」が同時に増えると、10代の投票率が上がる傾向にあることや、65歳以上の人口割合が高い自治体において、20代立候補者率が高くなると、10代・20代投票率が上昇する傾向にある、といったことが調査で明らかになったという。
「調査結果からも、立候補年齢が引き下げられ、若い世代から選挙に立候補できるようになることが、若い世代の投票に幅広い意味で影響を与えるということがわかります」
若者が生きている世界、見えていますか
イベントの後半では、「#未来を生きるわたしが決める」 キャンペーンに賛同する若者団体らがスピーチをした。
首都圏青年ユニオンの冨永華衣さんは、「まず最初に私の意見が若者の代表ではないということをお伝えしておきます」と前置きした上で、若者が置かれている経済的困難などについて話した。
「いま世の中には毎日の生活や労働だけで必死な若者がたくさんいます。ある組合員の一人は、仕事から帰って海外ドラマを見たくても、字幕を読むのすら疲れてしまって見れない、娯楽に使うエネルギーすらないと話していました。別の組合員は手取りが16万円で、子どもが欲しくても将来の見通しが立てられないと言っていました」
また、冨永さんは自身の話として、先日久しぶりに行った回転寿司屋のエピソードを紹介した。社会人2年目で初めて、一皿食べるごとにスマホの電卓で値段を計算せずに寿司を食べたという。
「その時の会計が2400円で、正直食べすぎちゃったなと思いましたが、『私も豊かになったな』とも思いました。でも、数ヶ月に一回好きなものを好きなだけ食べることができるって、生活の質の最低限であるべきだとハッと気づきました。そんなものを豊かだと思ってしまうほどに、私たち若者は今すごく困窮しています。政治家たちが食べている会食って一体いくらなんでしょう。私たちの生きている世界が見えているんですかって言いたいです」
また、生活や学費のために最低賃金で働く学生アルバイトに触れ、「労働市場にとって欠かせない労働力として若者を利用しながら、『思慮分別がない』と若者が政治に参画する手段の一つを奪うのは、搾取そのものだと思います」と話した。
Source: HuffPost