05.15
<北朝鮮内部>成果あげる金政権の外部情報遮断策 「韓国や外国のことは皆目わからなくなった」 家族が脱北した家庭に監視張り付き
◆情報統制で外部のニュースは真空状態
「今、こちらでは中国や韓国がどうなっているのか、まったく知ることができなくなった。市場でも情報を聞くこともない。触れられるのは、労働新聞に出る中国の経済発展のことやパレスチナ戦争の状況くらいだ」
4月下旬、北部地域に住む取材協力者は我われにこう嘆いた。
外界と遮断された北朝鮮に住む人々は、もちろん外部の情報を渇望している。金正恩政権は、2020年にコロナ・パンデミックが発生して国境封鎖を余儀なくされた非常事態に乗じ、外部情報の流入と国内での流布を徹底して取り締まった。その結果、密輸で韓国や中国の動画コンテンツが入って来ることはほとんどなくなった。
また、密かに搬入された中国の携帯電話の摘発を重ね、外国と通話した者を逮捕している。さらに、国営メディアが扱っていない外国情報が流布されているのを察知すると、それを「流言飛語」とみなして、その出元を執拗に追跡する作業が行われている。
このような厳格な情報統制によって、金正恩政権が住民を外部の情報から隔離するのに成果を上げているのは間違いないだろう。
◆監視と弾圧の標的になった「脱北者家族」
治安当局が外部情報の流入に睨みを利かせる中で、特に監視が厳しくなっているのが、韓国や日本に脱北した身内がいる「脱北者家庭」だ。取材協力者は、「脱北者家庭」が外部情報や資金を国内に流入させる潜在的犯罪者だと規定し監視下に置いているとして、次のように説明した。
「『脱北者家庭』に対する統制が格段に厳しくなった。情報を流布させたり、中国の携帯電話を使ったりする行為は、絶対に容赦しない方針だ。(家族の脱北で)すでに罪を犯したのだから、国に忠誠を尽くせと要求している。
保衛局(秘密警察)、安全局(警察)が頻繁に家を訪ずれ、また呼び出して調査するので、『脱北者家庭』は身動きが取れなくなっている。監視要員がいつも見張っていて、一挙手一投足を探っている。中国の携帯電話を使って(韓国などにいる親族から)お金を受け取ると見て、仲介人(送金ブローカー)になりすました人間をおとりとして送り込むことまでしている」
「脱北者家庭」は、国内の移動においても強い制限を受けている。協力者が説明を続ける。
「(中国との)国境から離れた地域に住む『脱北者家庭』には、旅行証明書(通行証)の発行すらしてくれない。それでも密かに国境付近まで来た場合、(韓国や日本にいる家族に)実際に電話したかどうかにかかわらず、逃亡を企図したとみなして教化所(刑務所)に送られている」
金正恩政権は、体制のアキレス腱ともいえる外部情報の流入を完全に遮断するため、「脱北者家庭」を標的にしている。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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Source: アジアプレス・ネットワーク