05.15
The Toys 独占インタビュー~タイが誇る天才ミュージシャンはシャイで日本が大好き
2024年も、日本屈指の国際イベント「タイフェスティバル東京」がやってきました。
実は、タイランドハイパーリンクスは2014年からタイフェスティバルに出演するアーティストを取材させていただいています。そう、丁度10年となる記念すべき年。
この10年、毎年タイを代表するスーパースターが招致されてきたため、タイミュージック全般が少しずつ変化していく様子を、目の前で見せていただき、取材することができました。
メーカーやレーベルが多数生まれ、インディーズで活動するミュージシャンも数多く登場。音楽ジャンルも多様化していき、新たな魅力的なアーティストも増えました。
近年ではT-POPが日本でも少しずつ認知されています。
FUJI ROCKや、サマーソニックなど国際的な音楽イベントにも、タイ人アーティストが出演する機会も増えましたよね。
そんなタイの最新音楽シーンで欠かせないこの人が、ついにタイフェスティバル2024のステージに登場!
彼の名はThe Toys。
10代から、音楽プロデューサーとして活動。ギタリストとしてソロギター世界第5位になるなど、天才としか言いようがない経歴を持ち、2017年の正式なデビュー曲「ゴーン ルドゥーフォン(ก่อนฤดูฝน)」で作詞・作曲・編曲・楽器演奏・プロデュース、そしてもちろんボーカルも全て担当。メロウな曲の中にいきなり入ってくる高速ラップも話題となり、デビューと同時に音楽アワードを多数受賞。
2018年10月にはアルバム「SUN」からシングルカットされた「ララロイ(ลาลาลอย)」がYouTubeで1億7,000万回以上再生されるなど、実力・人気共に、タイでは知らない人がいないのではないかというほどの、大スター。
更にはイギリス、アメリカ、シドニー、韓国、香港ほか海外公演も多数。2023年にはFUJI ROCKのステージにも登場しています。
自身の曲だけではなく、提供曲やコラボ曲を合わせると、今のT-POP業界に多大な影響を与えている人物の一人と言って良いでしょう。
デビュー前のとんでもなく若い頃から音のプロフェッショナルだった彼は、活動歴はベテラン枠。でもまだ29歳。一体どこまでその才能は広がっていくのでしょうか。
「こんな機会は滅多にない」と、この日はタイフェスティバル出演直前の、ほんのわずかな時間でしたが、The Toysにインタビューの時間をいただきました。
タイ人のアーティストはフレンドリーな方が多く、一つ質問すると十返ってくるような楽しい方が多い中で、タイ人の友人数人にリサーチしたところ、The Toysだけは別。とてもシャイな方だとのこと。
しかし、目の前に現れた彼は、穏やかな微笑みを浮かべて、自分から日本語で挨拶してくれました。そして取材の間も、さらに笑顔で、日本に対する愛情を語ってくれました。
タイフェスティバルの出演は、大きな意味がある
The Toys: コンニチワ
ーー日本語でご挨拶いただいてありがとうございます(感涙)。Toysさんの作品が大好きです。
The Toys:コップンクラップ(ありがとうございます)!
ーータイフェスティバル出演は初めてだと思いますが…。
The Toys:はい、そうです。
ーー感想を聞かせてください。
The Toys:僕は日本が大好きなんですよ。日本の文化が大好きです。だから日本のタイフェスティバルの出演は、僕にとってはかなり大きな意味があります。
ーー昨日はShibuya WWWで、今日のタイフェスティバルと同じBOWKYLIONさんと一緒にライブでしたよね?
The Toys:はい。渋谷のライブハウスにもたくさんの人が来てくれました。
ーー楽しめましたか?
The Toys:本当に楽しくて楽しくて、とても幸せでした。特にギターソロを披露できたので、僕自身が誇れるライブができたと思っています。
The Toysの日本での活動が増えるかも?
ーー日本でichikaさん(ギタリストのIchika Nito)とアルバムをリリースしたり、ライブをしたり、ここ数年日本でのToysさんの活動が活発化しているように思うんです。
もしかしたら、日本での活動がさらに増えるのではないかと期待しているのですが。
The Toys:ちょっと楽しみにしていてください(笑)。実は色々な所からオファーがきているんですよね。
ーー待ちきれません(笑)。Toysさんのことが大好きな日本人の友達も何人かいるので、喜びます。
The Toys:直近のものだと…もしかしたら年末あたりには喜んでもらえる情報を発表できると思います。
FUJI ROCK出演はタイ人アーティストにとって最高の栄誉
ーー2023年はFUJI ROCKにも出演しているんですよね。盛り上がったと聞きました。
The Toys:スゴイデス(笑)!スゴイ!
ーーアメリカ、イギリス、そして多くの国でライブやイベントに出演しているToysさんでさえ、FUJI ROCKは「スゴイ」んですね。
The Toys:タイ人のアーティストにとっても、FUJI ROCKに出演することは、最高に光栄なことなんですよ。
日本語のTATOOを入れるほど日本が大好き
ーー日本が大好きということなのですが、Toysさんは日本のどんなところが好きなのでしょう?
The Toys:和食でしょ、文化でしょ、日本の全てが大好きです。あと、これ(笑)。※チラリとシャツをずらしてTATOOを見せる
ーーあっ!日本語のTATOO!
The Toys:ふふふ(笑)。
ーーえっ?何?何て書いてあります?
The Toys:春、夏、秋、冬。
ーー日本の四季も好きなんですね。
ショッピング大好き!
ーー今回は何日くらい日本にいられるのですか?
The Toys:4日間です。
ーーええっ、短い。だって到着した日、渋谷のライブの日、今日のタイフェス、明日1日が自由時間?そんな感じですよね。
The Toys:(笑)…ベリーショート。
ーーそんな短い日本滞在の間にも、これだけはやっておきたいということはありますか?
The Toys:寿司を食べて帰りたいですね。サーモン、大トロ…。あとはショッピングも。僕はアクセサリーが大好きなんですよ(ブレスレットやリングを見せてくれました)。
ーーおっと、指全部にリングをしていますね!どれもセンスがいい。おしゃれですね。
The Toys:あとはコレ(腕時計を見せて)。もう初日に時計を買っちゃいました(笑)。
ーーSEIKOじゃないですか(笑)。今回のタイフェス記念の時計になりますね。日本を楽しんでいるなあ。もう日本でも活動しているToysさんですから、日本でお気に入りの場所ができたんじゃないですか?
The Toys:うーん…渋谷ですかね。ショッピングスポットも多いし。
ーー結局、日本のショッピングできる場所が好きなんですね(笑)。
The Toys:ハイ(笑)。ショッピング、ダイスキデス(日本語)。
ギターを見た瞬間、僕の中に最初から存在していたように感じた
ーーToysさんは作詞も作曲もプロデュースも演奏も歌も、何でも自分でやってしまうという才能の持ち主なんですが、ミュージシャンになるきっかけは、お母様が歌手、お父様が音楽プロデューサーという家庭環境が大きいですか?
The Toys:はい。そうですね。
ーー最初に楽器を触ってみようと思ったきっかけは何だったんでしょうか
The Toys:僕が最初に触った楽器はギターです。最初は弾いてみたいなんて思ってもみなかったんですけど、ギターを見た瞬間、絶対に何かあるなって思って。そんなきっかけから、今までずっとやってきた感じですね。
ーーこれは僕のもの、というような直感的な感じですか?
The Toys:そうそうそう。そんな感じです。ギターは僕の中に、最初からあった存在のように感じました。
――10代半ばからギターソロのコンテストで世界でも上位に入賞してるんですよね。
The Toys:はい。僕は歌より、ギタリストとしての自信があります。
ーーえ(衝撃)?あの柔らかくて透明感のあるToysさんにしか出せない声なのに、歌よりギターなんですか?
The Toys:はい。ギターの方が断然自信があります(キッパリ)。
憧れられる立場になると思ったこともなかった
ーー私はタイ人のアーティストの方に取材をしているんですが、憧れのアーティストを聞くと「The Toys」と答える人が多いんですよね。
The Toys:実は僕自身が憧れられる立場になるなんて、思ってもいなかったんですよ。僕はただ、自分でやりたいことを、きちんとやり遂げることだけに集中しているので。
ーーオリジナリティしか感じられないToysさんの楽曲なんですが、逆に影響を受けたアーティストはいらっしゃるんでしょうか。
The Toys:おおー…うーん(悩み中)。日本のCharです。
ーーCharさんですか!そういえば、Charさんが主宰するZICCA RECORDSから、アルバムをリリースしたこともありましたよね。
24時間音楽人間
ーーToysさんの曲は目を閉じて聴いていると、どこか違うところに連れていかれそうな浮遊感があって、よく聴いているんです。
The Toys:ありがとうございます。
ーーToysさんにしか作れないような世界を、どうやって作っているのかとても気になります。スタジオに籠って集中して作るものなのでしょうか?それとも、散歩に出かけて口ずさんでみたり?
The Toys:毎回、色々なシチュエーションがあるので、その時の状況によりますね。
ーープロデュースや楽曲提供、映画音楽、そして自分の楽曲制作を含めるとThe Toysという人は、常に制作をしている印象です。音楽のことを考えない時間はあるんですか?
The Toys:全然ないです(笑)。例えば、ゲームをしていても、運動していても、ぼーっとする時間があっても、24時間常に、頭の中に音楽が流れています。
ーーいや、本当に凄いとしか言えないです。まさに音楽人間ですよね。
「ああっ!あの曲、やっぱり僕の」…そんなこともたまにはある
ーーToysさんが楽曲提供する際、自分で歌う曲と、他の方に提供する曲はどのように区別して制作しているんですか?
The Toys:そうですね。その時次第なんですけど…例えば、オファーがあった時、この曲はあの人に合うかな?ということを一番に考えて楽曲を作って提供しています。
ーーしまった、あの曲あげちゃったけど、自分で歌いたかった!なんて曲もあったりするんですか(笑)?
The Toys:ははは…(笑)。はい。そういうことも、ちょっとありますよ(笑)。
ーー(爆笑)凄く繊細に考えていそうなToysさんにでも、そんなことがあるんですね。
The Toys:でも、もう売ってしまったから、取り戻せない(笑)。
ーー(笑)ですね。
タイ以外の国での活動も、ずっと継続していきたい
ーータイでは毎年、音楽のアワードの常連ですし、アジアでも高い評価を受けて、賞をもらっている国もありますよね?
The Toys:自分の中では、まだまだだと思っています。タイ以外の国での活動についても、ずっと継続していきたいですね。だから今回のタイフェスティバルやコンサートもいい機会だと思っています。
ーー若いので、色々な国にチャンスが広がっていきそうですね。
The Toys:そうですね。まだまだやるべきことがたくさんあると思っています。
気になる!The Kingdomsとは?
ーーToysさんのFacebookをチェックしていたんですが、2024年6月1日と2日に、ブライトさん(Bright Vachirawit Chivaaree)さん、ノン・タノン(Nont Tanont)さん、ジェフ・サター(Jeff Worakamon Satur)さんとバンドを組んでライブするんですよね?
The Toys:あ、The Kingdomsですね。
ーーこのプロジェクトはどんなきっかけで始まったんですか?
The Toys:今のタイのトレンドの人たちを集めたプロジェクトなんですけど、僕には突然連絡が来ました(笑)。
ーー突然連絡!メンバーが凄すぎますよね。そもそもそのメンツにToysさんが選ばれるのは当然なんですが、The Kingdomsは継続するバンドなんですか?それとも一時的なイベント的バンドなんでしょうか?
The Toys:まだ全然わかりません(笑)。とりあえずやってみてからって感じですね。
ーーこのバンドのために曲を書きおろしたりはしているんですか?
The Toys:(笑)…まだナイショです。お楽しみに。
ーータイのスーパースターが集まってるわけですから、タイの皆さんも日本の皆さんもワクワクでしょうね。6月1日以降が楽しみです。
The Toys:あ。でも、チケットは完売です。
ーー完売か(涙)。
The Toys:…(笑)。
タイのビーチはホアヒンが好き
T-POPやタイのエンターテイメントが好きな人が、タイ旅行を計画すると思います。トップクラスのアーティストが好きな場所にも行ってみたいんじゃないかな?と思うのですが、Toysさん自身は、タイの中でお気に入りの場所はどこですか?
The Toys:海が良いですね。僕はホアヒンが好きです。
ーーえっ?なんだかうれしい。ホアヒンは静かで、何もなくて、のんびりできるので私はタイのビーチで一番好きです。20回以上通ってます(笑)。
The Toys:えっ(驚)?ほんとに?スゴイ(笑)!
日本のファンの皆さんへ
ーータイの音楽が好きな友達には、Toysさんが好きな人が沢山いるんですよ。メッセージをいただきたいです。
The Toys:アリガトウゴザイマス!アイシテル!OK(笑)?
ーーもちろん、OKです!ありがとうございました!
The Toys:アリガトウゴザイマシタ
取材を終えてーーー
物静かな雰囲気に漂う、圧倒されるようなカリスマ性。そして、言葉数は少ないながらも、楽しそうに、一言一句、真剣に考えながら答えてくれたThe Toys。
タイでのビックプロジェクトはもちろん、楽曲制作もある多忙な中、日本での活動にも動きがあるかもしれないという、嬉しいニュースも届けてくれました。
タイフェスティバル東京2024の大トリを飾った彼のステージでのパフォーマンスはもちろん、観客との一体感も最高。
MCで沸かせるのではなく、音で100%伝える、それが全て。
そんな彼の強い意志が感じられる夜でした。
どちらかというと日本のカリスマミュージシャンに近い職人気質の彼。タイでの活動はもちろんですが「お楽しみに」と言われた日本での活動が、気になって仕方がありません。
実は筆者、コロナ禍で大好きなタイに行けない間、精神的に落ち込み、眠れない日々が続きました(どれだけタイが好きなんだ)。
You Tubeでタイの音楽を探し、貪るように聴く日々の中「ララロイ(ลาลาลอย)」という彼の曲にはまります。
その甘く優しい声とラップ、浮遊感のある独特なメロディとアレンジは、なぜか大音量で聴けば聴くほど、安心して眠りにつけたものです。
タイの大スターであると同時に、タイに行けない間の救世主でもあったThe Toys。筆者だけではなく世界中の多くの人が、彼の曲や声に魅了されていくに違いありません。
[取材・文:吉田彩緒莉(Saori Yoshida/Interview・text)]
THE TOYS
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