04.14
独学のアーティストが自宅アパートを不思議なアート空間に➡︎国が異例の指定建造物に登録(イギリス)
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イギリス中部の街にあるアパートが国の指定建造物に登録され、話題になっている。住人が独学で学んだ方法で室内を不思議なアート空間に作り変えたもので、アウトサイダー・アートの価値がこのような形で認められるのは異例だという。
水中を泳ぐ魚が壁や天井に描かれたバスルーム、大きくて立体的なライオンの顔に覆われた暖炉、古代エジプトの壁画のような絵で彩られた廊下、ローマ時代の祭壇が飾られたキッチン……。住人だったロン・ギティンズさんが2019年に79歳で亡くなるまで約30年かけて、家中に手を加えて自分だけのアート空間を築いたものだ。
ギティンズさんはアウトサイダー・アーティストだった。アウトサイダー・アートとは「生の芸術」とも言われ、芸術について正規の教育を受けず、ルールにとらわれずにその人ならでは感性で創作したものを指す。
ギティンズさんの親族らが運営するウェブサイト「Ron’s Place」によると、ギティンズさんは創造力が豊かな子どもだった。音楽の才能もあり、演劇も好きだった。組織で指示を受けて働くことは苦手で、アーティストとして自営業を営んでいた時期もあった。
ギティンズさんは生前、自宅にほとんど人を招かなかった。2019年9月に亡くなって初めて内部の様子が明らかになると、アーティストをしているギティンズさんの姪はすぐに心を奪われたという。
姪はすぐに保存に向けて動き出した。
「Save Ron’s Place」というクラウドファンディングを始めると、タイミングを合わせるようにして地元紙がギティンズさんについて記事で取り上げた。BBCも全国ニュースで放送し、保存活動が広く知られることになった。
BBCによると、ギティンズさんの自宅は2022年に競売にかけられた。ミューラー・ウィムハースト信託による支援のおかげで、地域の利益のために土地の所有・開発に取り組む地元の非営利組織が2023年3月、1階にあったギティンズさんの自宅と2階の3戸を含む建物を購入した。
それから1年後の3月19日、ギティンズさんが改装したイングランド北西部バーケンヘッドにある建物は、後世に残す価値があると国に認められた。
イギリスでは、歴史や建築的な関心が高い建物を未来の世代に残すために国の指定建造物に登録する仕組みがある。ウェストミンスター寺院やバッキンガム宮殿、国会議事堂など格別に重要とされる「グレードI」(全体の2.5%)、特別に重要とされる「グレードII*」(5.8%)、重要とされる「グレードII」(91.7%)の3等級にわかれている。
ギティンズさんの自宅はグレードIIに登録されている。
建物は必要な工事を行なったうえで、一般公開を予定しているという。
Source: HuffPost