2024
04.11

除去工事のアスベスト漏えい、環境省「事前通告」調査でも50% 累計で4割近い惨状だが国に危機感なし

国際ニュースまとめ

2023年度の環境省調査で建築物などから発がん性の高い吹き付けアスベスト(石綿)などを除去する工事の半数で外部に漏えいしていたことがわかった。過去14年間の累計でも、漏えい率はじつに37.9%。事業者の同意を得たうえで測定日時をあらかじめ知らせて実施する「通告」調査でさえ、3件に1件が不適正工事というとんでもない実態が続いている。(井部正之)

3月に環境省が発表した資料の一部。これの基になる2024年2月に開催された同省アスベスト大気濃度調査検討会の資料から関連する測定データを抜き出して独自に漏えい率を調べた

◆危険性高い「レベル1~2」作業の半数で漏えい

同省が毎年実施している大気中の石綿濃度測定結果のうち、走査電子顕微鏡(SEM)による石綿同定データが公表されるようになった2010年度以降について筆者が独自に調べた。2023年度のデータは同省が2月15日に開催したアスベスト大気濃度調査検討会(座長:山﨑淳司・早稲田大学理工学術院教授)の資料から抜き出して作成した。

調査対象は吹き付け石綿や石綿を含む保温材、断熱材など危険性のとくに高い、いわゆる「レベル1~2」建材の除去工事とした。そのため波形スレートなど石綿を含む成形板など「レベル3」建材の撤去工事は除外してある。

石綿飛散の判断は、同省が「目安」とする空気1リットルあたり1本超の石綿が作業場外(出入口にあるセキュリティーゾーン内更衣室の飛散含む)で検出した場合とした。また除去工事における石綿の漏えいは現場単位とし、1つの現場で複数の箇所から石綿の漏えいがあった場合も1地点として計上した。

2023年度同省は、全国38地点の計94カ所で大気中における石綿を含む可能性のある「総繊維数濃度」を調べた。異常値の目安である空気1リットルあたり1本を超過した場合に走査電子顕微鏡で石綿の有無や種類、濃度を詳細調査している。

全国38地点のうち、建物などの改修・解体現場は5地点。作業場をプラスチックシートで隔離し、内部を減圧するなど厳重な対策で実施する吹き付け石綿など危険性の高い「レベル1~2」建材の除去作業は、うち4地点である。

調査対象とした除去工事4地点のうち、2地点で空気1リットルあたり1本超の石綿が漏えいしていた。漏えい率は50%に上る。

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