2024
04.02

「私がバカなことをしたから怒られた」発達障害がある人に生じる“二次障害”を描いたマンガ「まさに今の自分…」など反響広がる

国際ニュースまとめ

「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(1/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(1/4)

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ちょっとした言葉を攻撃と感じ、相手からの指摘や“なんでもない言葉”でも泣いてしまう━━。

発達障害の当事者である「春野あめ」さん(@AmeHaruno)が投稿した、自身の経験や気づきを描いたマンガに反響が広がっています。

2024年2月に「発達障害が理解されにくいワケを自分で考えてみた」(竹書房)を出版した春野さん。「発達障害を持つ多くの方に生じる“二次障害”についてです」というコメントを添え、コミックスに収録された「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」というエピソードをXで公開しました

作者の春野さんは「相手の言葉を一方的に攻撃、否定と捉えてしまい、自ら“みんな不幸”な状況を作ってしまっていた」とつづり、大学生だった当時の自分に教えてあげたいことを漫画にしたそうです。

■「私自身を非難されたわけじゃないのに…」

春野さんが大学生の頃、授業後に作業台を片付けていた時のことでした。大学内にある工場のスタッフに「はかりの上に物を置かないで!」と注意を受けました。
春野さんはその言葉に敏感に反応してしまい、泣き出してしまいます。
「私がバカなことをしたから怒られた」「嫌われた」「怖い…」
相手はただ注意しただけ。しかし、その“なんでもない言葉”が、発達障害の特性がある人にとって、時に通常の何倍ものストレスがかかったり、頭がパンク状態になったりすることがあるのだといいます。
その結果、春野さんは、処理しきれなくなった感情が涙として溢れてきたそうです。
「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(1/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(1/4)
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「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(2/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(2/4)

「私自身を非難されたわけじゃないのに、なぜこんな極端な考えになってしまうのか」

それには、発達障害の特性の1つである「白黒思考」があるのではないかと、春野さんはいいます。白黒思考とは、「白か黒か」「0か100か」というようにどちらかの選択肢しかない極端な考え方のことです。

さらに、「発達障害が原因での幼い頃から積み重なってきた孤独がまだ影響していたんだと思います」と振り返り、「昔から漠然とした不安感・さみしさ・違和感みたいなものがあった」とマンガの中で説明しています。

「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(2/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(2/4)
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そうしたモヤモヤが一体何なのかわからず、ストレスと緊張状態が続いた結果、誰かに当たってしまったり、自分を責めてしまったり、精神面だけでなく体調面にも影響が出てきたといいます。

これが発達障害における「二次障害」と呼ばれるものだといいます。

「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(3/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(3/4)
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春野さんの場合は、25歳の時に発達障害と診断されてから、特性を理解して、それによる二次障害と向き合える状態になるまで、8年かかったそう。

二次障害に関しては完全になくなったわけではなく、気持ちが不安定になった時は、起こった出来事やその時の感情を書き出すといった対策をしているそうです。そうすることで、「過去の気持ちに引っぱられにくくなって問題を整理しやすい!」といいます。

「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(4/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(4/4)
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一方で、当事者ではない周りの人も、自分の言葉が相手を悲しませないか、怒らせないかなど、どうやって関わればいいのか分からないことがあります。

春野さんは、そんな時は「手を貸してあげてください」「当事者が一体何ができて何ができないのか、一緒に考えてくれると嬉しいです」といいます。

特性とうまく向き合うためには「つながりは浅くてもいいと思うようにして、広く作ることに目をむけてもいいのではないでしょうか」とアドバイスし、相談窓口とつながることの大切さも伝えています。

「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(4/4)「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」お話(4/4)
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「普段から“安心を増やす”ことを意識すればいいんじゃないかな」

ハフポスト日本版は、春野さんに発達障害との向き合い方、周りの人がどのようにして関われば良いのかなどを聞きました。

━━そもそも診断を受けようと思ったきっかけはありましたか?
私は、幼い頃から家庭でも学校でもトラブルが多かったのですが、そんな時はいつも頭の中で、“自分のせい”もしくは“周りのせい”という考えが行き来していました。しかし、それでは周りの人を振り回すばかりで… とくに社会に出てからは、生活もままならなくなっていました。そんな自分を変えたくて受診を決めました。しかし、はじめは自分の性格や家庭環境以外に原因があるなんて考えがなく、発達障害を疑って受診したわけではなかったんです。でも、カウンセリング前の話し合いの中で知能検査を受けてみようということになり、結果的に発達障害であることがわかりました。
━━マンガでは、発達障害の特性の1つである「白黒思考」が引き起こしたエピソードが描かれます。現在、そうならないために工夫されていることはありますか?
基本的にこだわりが強いので、変えることが難しい考えは多々あります。それが一人で完結する場合は自由にすればいいと思うんですが、“対人”の場合は、ほとんどの場合トラブルにつながります… なので、まずはトラブルの原因のひとつに自分の偏った思考が関係していることを自分で認識するのが大切と思っています。そうすると、以前より柔軟にものごとを考えられるようになった気がします。
━━春野さんは、ご自身の特性と向き合うためにジャーナリング(自分の考えや感情を書き出すこと)で心の整理をするなどされていますが、当事者ができること・してみるとよいことなどアドバイスはありますか?
当事者は、脳の特性から不安感が強い傾向があります。そのため、普段から“安心を増やす”ことを意識すればいいんじゃないかなと思っています。
私がやっていることで例をひとつあげると、考え方の工夫なんですが、“自分のことを好きか嫌いかジャッジしない”というのがあります。とくに当事者は失敗や迷惑をかける頻度がどうしても多くなりがちで、そんな時、自分のことを好きか嫌いか自問すると、やっぱり「嫌い」になってしまいます…自分でわざわざジャッジするのは不安をあおる行為なので、やらない。ということを心がけています。
━━発達障害の二次障害から「何でもない言葉で傷ついてしまう」とのことですが、具体的にはどのような状態になるのでしょう。また、周りはどんなふうに接すれば助けにつながるのでしょう。

状況や、その時の精神状態、環境によっても変わってくるので一概に言えませんが、マンガに登場した当時の自分であれば、立ち直るまでに1、2日はかかっていました。といっても解決できた上で回復しているわけではないので、似た場面で、同じようなことを繰り返すような不安定な状態でした。

そして、周りにいる人の関わり方というと難しいのですが… 相手との関係性によると思いますし、正直、正解はないと思います。ただ、寄り添ってあげたいと思う相手であれば、それ以上興奮させないように、なるべくゆっくり、具体的に話してみたり、興奮が収まるのを待ってから、攻撃するつもりはないことを話してあげたりすると、スムーズに話を聞き入れてくれるかもしれません。けれど私は、当事者と関係を割り切ったり、関係を断ち切ってしまうのも悪いことではないと思っています。当事者側はきついかもしれませんが、そんな当事者に我慢して、誰かが傷ついていいだなんて思わないからです。
━━具体的にどのような言葉で伝えるのがよいのでしょう。
そもそも、当事者は特性の影響でネガティブな体験を重ねやすく、それによって物事をネガティブに捉えやすくなっているという背景があります。さらに、相手の言葉の真意がわからず独自の解釈をしてしまう、などのいくつもの特性が絡み合って結果的にちょっとした言葉に過剰に反応してしまう状態になりやすい、ということになります。当事者になにかを指摘する際には、言わなくてもわかるだろう、という部分を省かない、なるべく否定的な言葉を使わないというのが、誤解をさせないポイントになるのかなと思います。といっても、これも難しい問題です…相手は当事者のネガティブ体験をすべて知っているわけでもないし、先手先手にまわるのもかなりの労力が必要です。なので、表面的な工夫も大切と思いますが、お互いが普段からしっかりコミュニケーションをとって、信頼関係を築いておくことも、大切なのだと思います。これは、私の今後の課題でもあります。
━━こちらのマンガには1万以上の「いいね」が寄せられていますが、どのように感じていますか?
「いいね」の数ほど、同じ悩みで苦しんできた、進行形で苦しんでいる方がいるのではと思うと心配になりましたが、いいねは共感でもあるので、素直に嬉しかったです。ただ「いいね」以外にもいろんな反応があって、その中にはもちろん厳しい意見をだしている方もいました。それでも、発達障害について立ち止まって考えてくれたということが嬉しかったです。マンガを読んでくださったたくさんの方々、ありがとうございました。

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Source: HuffPost