02.21
魚に放射能マーク…画像販売サイト、「Fukushima」検索で表示。記者の指摘にサイト側は
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インターネット上で画像の売買ができる「オンライン画像マーケットサイト」に、福島県への差別や偏見を助長するイメージ画像が出回っていることがわかった。
一部の画像はハフポスト日本版の指摘後に表示されなくなったが、サイトで「Fukushima」や「Fukushima sea」と検索すると、福島の海や魚が放射能汚染されているかのような画像が複数ヒットする。
「福島」と検索した場合も、県沿岸から東方向に放射能汚染が広がっているような画像などが表示される。ハフポスト日本版はサイト側を取材した。
画像が出回っているのは
画像が出回っているのは、米ストックフォト大手「getty images」の「iStock by getty images」と、米ソフトウェア大手「Adobe Inc.」の「Adobe Stock」など。
オンライン画像マーケットサイトでは、個人のクリエイターらが撮影・作成した画像などを購入することができる。iStockのウェブサイトによると、クリエイターは写真家やイラストレーター、映像作家などのプロのほか、主婦や学生もいるという。
画像などの大半は、Webサイトやブログ、記事、ソーシャルメディア広告、街頭広告、プレゼンテーションなどで使用できるため、世界中の個人や企業が利用している。
サイトの検索欄にキーワードを入力すると、それに関連する画像などが表示される仕組みで、例えば「Tokyo」と検索すると、高層ビルや大勢の人々が行き交う様子を写した画像が一覧で出てくる。
「Fukushima」と検索 → 魚に原子力マーク
しかし、これらのサイトの検索欄で「Fukushima」や「Fukushima sea」などと入力すると、福島への差別や偏見を助長するような画像が次々に表示される。
記者が2月上旬にiStockで見つけたのは、氷の上に出された魚に放射能標識のようなものが重ねられた画像。アップロード日は2022年2月5日で、カテゴリーは「写真素材 | 福島市」と記載されている。
説明欄には、「各放射線に関する警告を伴うシーフードと遠くの海魚のバスケット.核の脅威に対する放射性土壌.比喩。核漏れ、環境被害.白い背景」とあり、クリエイターは自身の所在地を「xiamen, China(厦門、中国)」としていた。
このクリエイターは、同年2月15日にも「写真素材 | 福島市」のカテゴリーで同じ趣旨の画像をアップロードしていた。ダイバーや生物が泳ぐ海に放射能標識のようなものを重ねた水を流し込み、白い手袋をした手で水が入ったボトルを持っているような画像だ。
説明欄には、「白い手袋をした手は、核放射線警告シンボルとガラス瓶を保持し、海に水を注ぎます。核排水、汚染物質排出。生物核的損傷、化学物質汚染。環境」と記載していた。
このほかにも、「寿司や海の写真に放射能標識のようなものをつける」「市場に並べられた魚(エビ)に放射能標識のようなものをつける(説明欄は『放射能汚染された魚(エビ)』」といった画像が表示された。
海や寿司が汚染されているかのような画像
同じような画像がアップロードされているのは、iStockだけではない。
2月21日午後2時、米Adobe Inc.の「Adobe Stock」で「Fukushima」と検索すると、魚や海、寿司に放射能標識のようなものを重ねたような画像が表示された。
Adobe Stockも、一般のクリエイターが写真やイラストなどを投稿できる仕組みで、現在は3億7500万以上の素材を提供しているという(広報担当者)。
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これらの画像は、福島の海や魚、寿司が大きく汚染されているかのようなイメージを喚起させ、風評被害や差別、偏見を起こす恐れがある。
消費者庁「食品と放射能Q&A」(2023年12月)によると、魚介類の放射性物質検査は事故から2023年3月末までの間に全国で計18万件以上行われているが、検出された放射性セシウム濃度は大きく低下している。
福島県の魚介類は2017年度以降、検体の99%以上が検出限界地未満となっており、基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超過する海水魚は22年度、0件だった。そもそも同県内で水揚げされた魚は、放射性物質の検査を通過したものだけが出荷されており、基準値を超えたものは市場に出回らない。
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出についても、国際原子力機関(IAEA)が「国際安全基準に合致し、人や環境に対する放射線影響は無視できるほどである」と評価している。また、これまでのモニタリング調査で人や環境への影響は確認されていない。
「遺憾に感じている」サイト側は取材に
このような画像について、サイト側はどう捉えているのか。まず、Adobe広報が2月19日、ハフポストの質問に回答した。
担当者によると、Adobe Stockには、福島を表現する画像が1万2000枚、動画が2700本ほどあり、大半は福島の美しさを描いているという。しかし、「不適切な画像も意図せず掲載されていた」と認め、「遺憾に感じている」と答えた。
画像の選別は、クリエイターから提出された後に行われ、その際に訓練されたモデレーションチームが技術やコンプライアンスなどの観点からレビューする。その際、「憎悪に満ちた」コンテンツを削除したり、投稿したアカウントを閉鎖したりすることもある。
今回、ハフポストが指摘した画像についても、「担当チームが福島に関連するコンテンツを審査しており、規則に違反するコンテンツは削除される場合がある。重大度に応じて投稿者のアカウントを閉鎖することもある」とした。
また、担当者は「IAEAの分析結果を評価している」とし、「Adobe Stockのコレクションを継続的に監査し、評価し、改善していく」と言及した。
iStock側は、広報代理を通じて20日に回答。
ハフポストが指摘した画像を確認した結果、「不適切なキャプションやタイトル、検索キーワードについては更新したほか、福島や日本に関する記述を削除した」という。
つまり、「Fukushima」といったキーワードで画像が検索されないようにした、ということだ。
iStockにアップロードされている画像の選別については、「品質基準を高く保つため、法律に準拠しているかどうかを踏まえた徹底した厳しい審査を定期的に行っている」とし、「今後も審査を徹底していく」と答えた。
一方、処理水に関する見解や「厳しい審査」の具体的な内容などについては回答しなかった。
iStock上では21日午後2時現在、「Fukushima sea」と入力すると、エビやカニ、ウミガメに放射能標識のようなのものを重ねたような画像などがヒットする。
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オンライン画像マーケットサイトに福島県への差別や偏見を助長するイメージ画像が出回っている問題。
これらの画像の中には、「福島の海や魚は危ない」といった現実と乖離したイメージを広げる恐れのあるものも存在する。
ニューズウィーク日本版やジャパントゥデイなど、実際にこのような画像をサイトからダウンロードし、処理水の海洋放出に関連する記事で使用しているメディアもあった。現在、上記の2メディアには取材を申請している。
Source: HuffPost