2021
08.17

タリバン批判報道をしてきた現地ジャーナリストが窮地に

国際ニュースまとめ

<米主要3紙がバイデン政権に現地ジャーナリストの国外退避支援を要請。「勇敢な仲間たち」が命の危険にさらされていると訴えた> アフガニスタンの反政府勢力タリバンが8月15日、首都カブールを制圧して全土掌握を宣言したことを受けて、アメリカの新聞社は一斉に、現地にいるジャーナリストや現地スタッフの救援をジョー・バイデン米大統領に求めた。 ワシントン・ポストの発行人は、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官に宛てて、「ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、およびワシントン・ポストを代表して緊急要請」のメールを送り、バイデン政権に対して「計204人のジャーナリスト、支援スタッフおよびその家族」の国外退避を支援して欲しいと求めた。 カブールにある国際空港には16日早朝、国外脱出を求める大勢のアフガニスタン人が殺到。現地大使館スタッフらを撤収させるための米軍機に群がり、滑走路で機体によじ登ったり、しがみついたりする人が出るなど、大混乱となった。 ワシントン・ポストの発行人であるフレッド・ライアンはサリバンに対して、「危険にさらされている」ジャーナリストたちを、同空港で米軍の管理下に置き、「国外退避用の航空機を待つ間、安全に過ごせるように」して欲しいと要請した。「現在、彼らは危険にさらされており、避難するために米政府の支援を必要としている」と訴えた。 自由な報道を守る姿勢を ライアンと、ニューヨーク・タイムズの発行人アーサー・サルツバーガー、およびウォール・ストリート・ジャーナルの発行人アルマー・ラトゥールは、その後さらにバイデン政権宛てに手紙を送り、「政府が自由な報道を支持するという明確なメッセージ」を発信するよう、バイデンに呼びかけた。 「アフガニスタンの勇敢な仲間たちは過去20年にわたって、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストとウォール・ストリート・ジャーナルのために尽力し、アフガニスタンのニュースや情報を世界中の人々と共有する手助けをしてきた」と3人は手紙の中で述べた。「今、彼らやその家族たちはカブールで身動きの取れない状態にあり、命の危険にさらされている」 3人の発行人はバイデン政権に対して、これらのジャーナリストが米軍の管理下にあるカブールの空港にスムーズかつ安全にアクセスできるよう支援し、航空機で迅速にアフガニスタン国外に退避できるよう手助けして欲しいと求めた。 アフガニスタンでは、アシュラフ・ガニ大統領が国外に脱出した後に、タリバンが大統領府を掌握。ガニ政権の事実上の崩壊を受けて、カブールは混乱状態にあり、海外の報道機関のジャーナリストやスタッフは、さまざまなリスクに直面している。 地元のジャーナリストたちが取材を続けることは、さらに難しい。現在カブールにいるCNNのクラリッサ・ワード記者は、アフガニスタンのジャーナリスト、特に女性ジャーナリストは「大きな衝撃を受けて」おり、「カブールが大混乱に陥りかねないという深刻な懸念」を抱いていると述べた。 ===== ワードは15日、「彼らは何年も、勇敢な、素晴らしい報道を行ってきた。だが今は、それを理由にタリバンから報復を受けるかもしれない。もう仕事を続けることはできないだろうという大きな不安に直面している」と指摘。現時点でタリバンは欧米のジャーナリストを標的にはしていないように見えるとも述べたが、ライアンがバイデン政権に送ったメールは、現地の記者たちを取り巻く状況が、急激に変わる可能性があることを示唆している。 国境なき記者団(RSF)によれば、アフガニスタンでは2021年に入ってから、これまでに少なくとも3人の現地女性ジャーナリストが殺害されている。RSFのクリストフ・デロワール事務局長は7月に、米軍の撤退は「情報の空白状態、およびジャーナリズムが縮小または完全に消滅する事態」を引き起こすことになると警告していた。 カブールの混乱に対処するよう、バイデン政権に対する圧力が高まっていることを受けて、バイデンはアフガニスタン情勢について演説。「予想以上のスピードで事態が推移した」と見通しが甘かったことを認める一方で、米軍の撤退は「正しい判断だった」として、アメリカの方針に変わりはないと強調した。 ニューズウィークはアフガニスタン情勢についてホワイトハウスにコメントを求めたが、本記事の執筆時点で返答は得られていない。 *記事のコメント上位には、以下のように否定的な意見が目立つ。「アメリカ人は助けるが、外国人は助ける必要はない。彼らは自分で武器を取って国を守るべきだった」「ジャーナリストはだめだ。彼らはバイデンのために嘘をついてきた」「彼らを救出するのは政府ではなくメディア会社の仕事だ」

Source:Newsweek
タリバン批判報道をしてきた現地ジャーナリストが窮地に